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引継ぎ

 その後は、まぁ何とかお互いに蟠りや疑問を心の片隅に、取り敢えずは放置する事が出来た、クレーム姫……生駒ちゃんから、ハーフパンツ履いたビーサンのお兄さんとおじさんの境い目辺りを彷徨う、料理人との間で"ありがとう美味しかったよ""あっそうですか何時でも言ってください、あんなの……いやいや、心を込めてまた作らせていただきますから"


 と形式通りのやり取りの後、生駒ちゃんは、お店のロゴの入る封筒を俺に差し出し。


 「お礼。」


 (あ~チップね、あざまーす! 吉乃ちゃん)


 「あっこれはこれは、ありがとうございます」


 そして生駒ちゃんは、まぁ言って見りゃ身も蓋もないんだが、油と汚れにまみれた"本来は見せない"

店の裏から出ていった。


 そして、厨房に残った。


 俺。山本さん(はよ帰りぃ鈴ちゃん待っとんで……いや、そんな名前の娘居そうな気して)


 店長(第六天魔王)。マネージャー(太閤殿下)。織田家の当主と、サルが広くもない空間でガヤガヤと話していた。


 俺は(うるせぇなぁ……どっか外行ってやれよ)と思いながら、カルピスミルクを飲んでいると。


 マネージャーの中村さんが俺に向き直り。


 「いくらだった? いくら入ってた?」


 とさっき可愛らしい女の子から渡された白い封筒を指さす。俺は挟み持つ封筒の感触で(うーん1万ぐらいじゃね?)と見当を付け封筒の口を開き"フッ"と息を吹きかけると、封筒の中には。


 "渋沢栄一が複数枚重ねられていた"


 (え? 今複数枚あったよな? 間違いなく……ちょっ……ちょい待ち)


 俺は慌てて封筒の中身を確認すると、数えて5枚もの日本郵船の会長様のご尊顔があった。


 流石の俺も"ただの"たまご焼きで5万ものチップを渡された事は無い。ヒルトン名古屋で主催された。


 "アラブの石油王"歓迎式典パーティーの時に初めてその"王子様"とやらから、全てのスタッフにと、1万円のチップが渡され、みんなではしゃぎ回ったと言うのに……高々たまご焼きフライパンで焼いただけでこの値段……


 (恐るべし生駒家の財力! 馬借って儲かんのか?……)


 「あー姫からいくら貰ったの? 5万? まぁあの美味しさならそのぐらいかな?」


 割とあっさりと"妥当"と言った店長に。


 (マジですか?)


 の顔で凝視した後に、マネージャーの顔色を見ると。


 "まぁちと少ないがあの姫ならそのぐらい"


 顔にそう書いてあった。


 そして最後に前任者でもある山本さんに顔を向けると何故か山本さんだけが、憤怒の表情で顔を真っ赤にしていた。


 「どしたんすか? 山本さん、腰痛くなってきました?」


 そう声を掛けると、憤怒の巨人(よこの方向に)は突き出た腹の脂肪をブルンブルンと震わせながら、手を目の前で真横に"シャッ"と振ると。


 「ち……違う! そんな事じゃない! 私がこの店で働き出して5年……チップなんて1度も貰った事が無い!」


 (いや……おっさんそこかよ……怒ってんの。不味いからじゃね? おっさんのツマミ)


 そして俺は、そっとみんなから距離を取ると、ポケットにこちらも入れて置いた、愛用のスマホを取り出すと、有名なAIさんを呼び出し、マイクに向かい小声で。


 「ホストクラブ Arcadia Group The Aegean 口コミ 料理」


 とAIさんに頼むと数秒で。


 "あそこは料理以外は100店"

 "あの料理人私ら風俗嬢と見下してる"

 "内勤とホストは良いだけに残念"

 "あそこでフード頼むのは義理"

 "フルーツ盛り? 頼んだことあるけど食べた事ない"


 などなど山本さんが見たら倒れんちゃうかな? と思われる事がズラズラと並んでいた。


 (うわぁー流石、ホストクラブの客、遠慮の欠片も無いな)


 等と思っていると、背後から急に。


 「氷室くん? でいいかな? 氷室くんそれもう辞める山本さんに見せる必要ないし、店長にも見せなくていいからね。」


 と所謂釘を刺された。 


 俺は背後からヌッと顔を出している、マネージャーの中村さんに苦笑いを浮かべ何度かうなずいて応えた。


 (知ってたんか……さすが知恵ものサル……いやサルは失礼だな、太閤。だからあの容赦ない詰め方だったんだな。)


 先程のガン詰めシーンを思い出しながら、そんな事を考えていると。


 「まっ! 明日からは少しは姫たちも喜んで食べてくれる物も出てきそうだけどね。」


 そう言って俺に微笑みかける。


 (いやー……どうかな?あの大うつけ……じゃねぇや……第六……落ち着け俺! 信長店長は、こんな感じでと山本さんの作った"不味そう"なツマミの画像嬉々として見せてたし、普通に作ったらあまりの違いに桶狭間とかに1人で走っていきそう)


 (もうそうなったら俺に出来るのはただ1つ! "途中で熱田神宮寄るの忘れんなよ"のアドバイスのみ!)


 そしてその後は、内勤ホストクラブの内向きの事を取り仕切る人達のリーダーの秀吉さんから、店の裏に出るという裏口のカギ。後は、買い出しするお店の場所。そして。


 「はい、コレ大丈夫だとは思うけど、貰って明日来ないとかはやめてね」


 と怖い目をしてマネージャーに言われた。


 「ははっ……は……いい大人なんですから、そんな事する訳ないでしょ? ちゃんと領収書貰って来ますよ」


 (流石……本能寺の変の黒幕……迫力あんな……)


 仕入れ費用現金5万円を預かり、自分の財布の中に入れた。

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― 新着の感想 ―
帰ってきた氷室くん! 待ってました! 続きも楽しみにしております!
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