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レイナルドのファッションショー

 ロザリンドは確かな証拠があるわけではないからと言って、それ以上ウッド男爵の話はしなかった。

路上という場所の都合もあったのかもしれない。


 今日は本当にただ一言礼を述べたかったと言っており、更に

「後日、正式にお礼をしたいので、どこかでお茶の時間をいただけませんか?」

となんと小間使いではなく、ロザリンド本人がわざわざ茶会の開催許可と日程や場所を聞きに来ていたことがわかった。


 「あらぁ、じゃあウチにしない?この寮はエドガーに訊かなきゃいけないじゃない?

私のお店の打ち合わせスペースなら広さも丁度良いと思うの、良いお茶も手に入れたのよ〜。

あと今度やるショーの服への意見も聞きたいわ、皆様なら率直な意見が聞けると思うの。ね、ウチにしましょう?」

レイナルドはそう言って自身の打ち合わせスペースを提供してくれた。


本当に、アリシアはレイナルドに足を向けて寝られない。


「グレイ嬢、何で拝んでるの!?え、私が女神にでも見えた!?」

レイナルドがそう言いながら両腕をパタパタさせた。


「それだと天使ですね!」

と言いながら横でミアの手を合わせていると、ロザリンドの後ろの女性たちと、護衛の方々まで拝み出した。


「やだ、それだと女神感が薄れる気がする!筋肉をイメージに入れないで!悪ノリ禁止よ!」

レイナルドがビシバシ護衛の方々にツッコミを入れると女性たちも笑っていた。


アリシアはそれが凄く良い景色だなと思った。


◇◇◇


 しばらくして。

ロゼットブランドの新作発表会は、王都で大きな話題になっていた。


「人が多すぎる……」

娼館から服飾品のお店が並ぶ商店街の少し奥まったところにある、踊り子さんのダンスショーや夜のジャズショーなどが行われる、貴族や裕福な商人の接待場として普段使われているステージ会場。


その裏で、ミアとアリシアは揃って口を開けて仰天していた。


 今日はレイナルドのブランドの発表会だ。

本来なら、もっと小規模な予定だった。だが 

今の王都は完全に女性の活躍へ注目が集まっている。


 その流れに乗る形で、貴族から商人まで大量の人間が押し寄せていた。


 実は事前にロザリンドたちと服を見た際に、これは規模を大きくした方が良いと結論付けた。

ロザリンドは商店街の偉いおじさま方に顔が利くので、一時的な歩行者天国の許可を取ってくれた。


 時の人となっているアリシアとミアは、毎日うず高く積まれている郵便物の中から、最適な茶会をピックアップして、レイナルドのショーが楽しみだとアピールしていた。


 レイナルドは日頃からの顧客様宛てのVIP席の招待、そして広告やパーティーで事前予約制を伝えていた。

早手紙の先着順で、事務所が手紙で埋もれないようにアリシアが空間拡張魔法をかけた箱に収まるようにしておいた。


先着順に漏れた人々も、ロザリンドのおかげでとれた歩行者天国を歩くモデルたちを見ることができることを当落結果の早手紙で伝え、そこには商店街の店名や写真も載せている。


つまりショーまではそこで時間を潰してね、というわけだ。そして店に入ったら購入意欲が湧く可能性は高い。

これがロザリンドが商店街側に歩行者天国を納得させた理由だった。


 とは言え、予想よりも会場とその周辺は熱気に包まれている。


「だから言ったでしょう? 絶対に知名度を追い風にしてやるって」

レイナルドはご機嫌だった。


 今日は珍しく黒いスーツ姿で、白いスカーフを綺麗に波打たせた胸元に、銀のブローチを付けている。

クラシカルでシックに見えるが、大きなジャケットと細いパンツは脚を長く見せ、上半身にボリュームがあって、女性的なイメージに見えた。


 もしかしたら今後は女性がこのようなスーツで仕事をする世界が当たり前になるかもしれないとアリシアは思った。


 コルセットやバッスルもない、胸を盛り上げて下品な視線に晒されない、それでいて女性的なラインで綺麗な服。


「……それ買います」

「アリシア様早い!」

「嬉しいわー!色やサイズは後で詰めましょうね。でもここまでとは思わなかったわぁ」


 「記者もたくさんいますね……」

ミアは少し驚いたように会場を見る。


 新聞社に貴族に富裕層の商人や、今回の件で活躍する女性の服に興味を持った一般市民層の女性、さすがに一般の男性客は少なく見えるが、それにしても多種多様な人々が集まっていた。


 そして集まっている女性たちの服は、レイナルドの服が多く、従来の貴族女性服とは全く違っていた。


 コルセットを極端に締めない、或いはない。裾は動きやすい長さでハイヒールでなくても裾が汚れない。

ポケットが付いていて機能的……などなど。


 女性を飾る服ではなく、女性が生きるための服。

それが一目で分かる。


「本当に変わるのかもしれないわねぇ」

レイナルドがぽつりと言った。

アリシアは静かに頷いた。レイナルドが省いた主語が分かる気がした。


 その時だった。

「ロゼット様!!」

今日のショーのために警備会社から派遣してもらった警備員が慌てて駆け込んでくる。


「どうしたの?」

「前の入口で、男性貴族たちが騒いでいて……!平民の言うことを聞かないんです!下手に手を出すと……」

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