ブラウン家の弁護士の徒労
元伯爵令嬢レベッカ・シュナイダーによる証言は、まさに女性を騙して商品にしたウッド男爵と、それを金銭で買ったオリバーの人身売買を裏付けるものだった。
オリバーの監視魔記録の確認が、傍聴席に見聞き出来ないよう限定して行われた。
オリバーがウッド男爵に挨拶し、ウッド男爵が去る。庭園のベンチで語らうつもりでいるだろうレベッカをオリバーが押し倒し、レベッカは抗議するも聞き入れられなかった。
その様子が裁判長〜検察官、弁護士まで公開されている。
これは傍聴席のアリシアには見えも聞こえもしないものだ。だが監視魔記録の公開という言葉から、レベッカに先日聞いた内容を思い出していた。
レベッカがどのような面持ちでいるのかも見ることは出来ない。レベッカの母の、フォーク程度の傷とレベッカの傷は比べ物にならないという言葉が頭に甦る。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
アリシアの目から水滴が落ちるが、ブラウン家の弁護士に悟られないよう扇子で隠した。
しかしブラウン家の弁護士は窮地も窮地だったので、アリシアのことなど気にはしていなかったかもしれない。魔記録を見て偏頭痛がするかのように頭に手を当てていた。
レベッカに質問するために証言台へ移動する際、弁護士がチラッと一瞬、傍聴席へ視線を向けた。
疲れ果てた顔に、傍聴席は皆無言だったが、同情の雰囲気が漏れていた。
そして弁護士はなんとかオリバーの非を軽くするために、レベッカとの行為は、オリバーが「合意があった」と勘違いしても仕方ないというストーリーを頑張って描いていた。
結婚相手を探す行為を「男漁り」と断じ、「本人もある程度予想して、他に人気のないベンチにいた筈」「未婚の女性が男性と二人きりになるなどはしたない、そういう目的だと分からない筈がない」等々、どうにか「貴族男性としてオリバーは普通の感覚であり、レベッカが軽い女だ」と印象つけようとしていたが、徒労に終わっていた。
レベッカがどう答えているかは、魔法によって変声されながらこちらに聞こえていた。レベッカは震える声で、端的に答えていた。多くを話さないそれが却って真実だという重みを持っていた。
裁判長から証人の尊厳を損なう質問を控えるようにと注意を受けて、弁護士は魂が頭から抜け出ているような、力のない様子で席に戻っていた。
ミアの前例のすぐ後だ。ミアはあの後気を失ったまな救護室に運ばれている。
女性をあれだけ追い詰める行為を二度も行っていることで、弁護士は傍聴席からブーイングまで喰らっていた。
今までオリバーの後始末で、共に女性に詫びに行ったりしたこともある。
ぐったりした様子で席に着席している弁護士を見て、最早可哀想になるアリシアだったが、だからと言ってここで同情して対応を変えることは出来なかった。
そんな、証言台に立ってくれたミアやレベッカ、他の多くの被害者に対して失礼なことは出来なかった。




