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裁判官たちの小休憩

 「えー……それでは被害者の証言を始めるに当たり、休憩が必要と判断したため、五分間休廷とする。尚、ブラウン公子は裁判長の再三の指示に従わなかったため、退廷を命じます」


裁判長が疲れた様子で休廷を指示した。

あからさまに傍聴席も裁判官も、裁判員である貴族も皆、「やっとか」という雰囲気で、身体を伸ばしたり、お手洗いに立ったりした。


 オリバーだけが理由が分からず喚き散らしていた。

「何でだ!?こんなの不当だ!」


王弟殿下の命令を散々無視して首と胴体が繋がっているのは、王弟殿下が寛容な方だったからだと全く理解出来ていないらしい。


 「弁護人、何か異議はありますか?」

両脇を抱えられて引きずられながら、オリバーが弁護士に助けを求める声をあげたため、念のために裁判長が弁護士に確認する。


「ございません」

弁護士はあっさりとそう言った。

そりゃあそうだろう。もうこれ以上庇う方が心象が悪いし、オリバーがいない方が本来の仕事がしやすい筈だと誰もが弁護士に同情した。


◇◇◇


 「やれやれ全く……、あの馬鹿は貴族の恥晒しだ」

裁判官の控室で、ガイル子爵裁判官が頭を押さえていた。


「まああの店で押収した映像から、ウッド男爵がこの貴族を客とした性犯罪の巨悪と判明していますので、そちらに注力いたしましょう。

ブラウン公子の方はメディアで目立ってはいますが所詮小物ですからね」

トリッド伯爵裁判員が甘い苺のジャムが乗ったクッキーを食べながら同調する。


 トリッド伯爵が言う通り、ウッド男爵の性犯罪ビジネスの証拠映像があの店から大量に押収出来ていた。これから顧客である貴族や、ミアの父親のようにあえて性犯罪ビジネスに乗っかった関係者について大掛かりな捜査及び裁判が行われるだろうと予想された。


 「しかしブラウン公子はポンコツだが、あのグレイ侯爵令嬢は流石だな、両陛下まで味方に付けるとは。あれが妻になっていれば公爵家も安泰だったかもしれない」

エンリケ伯爵裁判員も同調しながら、アリシアに言及した。

その横でリンドバーグ裁判官がギクリと身を震わせた。


 「おや、リンドバーグ侯爵、空調が寒いですかな?」

震えに気付いた同じ長椅子のエンリケ伯爵が声を掛けると、青い顔のリンドバーグは歪に笑みの形を保ちながら、自分はブラウン家の遠縁に当たるので少々耳が痛いのですと言った。


「ああ、そうでしたなあ。とは言え、かなりの遠縁でしょう。リンドバーグ侯爵はこの通り「公正な」裁判に臨まれているのですし、そのように萎縮されなくても良いのでは?」

エンリケ伯爵が心からそのように心配して言い、その様子を刺すような視線でガイル子爵裁判官が眺めていた。


 「まさかグレイ侯爵令嬢が教会で婚約解消手続きを済ませてしまうとは。特例措置についてよく知っていましたね」


「もし結婚前に相手の重大な瑕疵が判明した場合、『それは夫婦として乗り越える試練ではなく、神が不幸な結婚を防ぐためにお教えになったことだ』と、相手の同意なく解消が出来るものですよね」


「重大な瑕疵の定義が曖昧だが、これだけ大事になって両陛下まで味方になっているとなれば、それは重大な瑕疵と言えるだろうな」


「何でも今まで領内の孤児院の修繕や従業員の労働環境の整備や、里親事業を積極的に行っていたそうで、教会はグレイ嬢に恩を感じていたそうだ」

ガイル子爵裁判官の発言に、またリンドバーグがギクリと小さく震えた。


「おや、それはオリバー公子の手柄だったという記事を読みましたが……、まああの様子では手柄の横取りでしょうねえ。責任者のサインだけ彼の名前にしたんでしょう」

リンドバーグを除く三人がうんうんと頷く。


 (クソ!グレイ侯爵令嬢に脅されなくてもこんなの無理だろう!オリバーが馬鹿すぎる!!)

リンドバーグだけが心の中で、なんとかオリバーの刑を軽くする方法と、金を積まれたブラウン公爵への言い訳を考えていた。

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