オリバーくんの裁判開始
「オリバー・ブラウン公子、そなたには人身売買の嫌疑が掛けられている。王国民の貴族として誠実に裁判に臨むと誓いますか?」
「俺は人身売買なんてしてい……!」
「ブラウン様!まだ宣誓の時間です!責められているわけではありません!誓ってください!」
オリバーがカッとなって宣誓の言葉すら言えずに裁判長に食ってかかるのを、ブラウン家の弁護士が止めていた。
「毎回のことながら、あの弁護士先生は苦労なさっているわね……」
「ああ、あのクソバーの浮気の度に、相手の家との和解や示談でアリシア様もご一緒に伺われたと言っていた方ですね」
アリシアの言葉に隣席に座るミアが頷く。
今回の裁判は、違法な風俗店でウッド男爵と会話していた、ミアを購入したという人身売買の罪によるものだ。
ミアは雑誌社に被害を告白していたが、ミアがオリバーに対して起こした裁判ではない。
「〜っ誓います!でも俺は……!」
「ブラウン公子、今はあなたに発言は許可していません」
「でも俺は何も悪くないのに牢屋に入れられたんだぞ!そもそもあのスミス男爵の娘が悪いんだろうが!あいつに陥れられたんだ!あの……」
「ブラウン様!この後ブラウン様の意見を聞く時間が来ますので!」
「でもあの女がウッド男爵を騙して公爵家に売り込んで来たんだろ……!」
「ブラウン様!」
王弟殿下に歯向かい、弁護士の静止も聞かず、オリバーは自分の主張を三十分も言い続けた。
「あの馬鹿……」
「今回の裁判が何の裁判か最初に案内もありましたし、事前共有も十分にされていたと思うんですけどね……」
アリシアもミアも怒りを通り越して呆れていた。アリシアはあんな馬鹿の婚約者であった事実が恥ずかしく、早速ミアに貰った扇子で顔を覆っていた。
オリバーは、ミアが言い寄ってきただの、ウッド男爵に唆されただのと言っているが、もうそれは「ウッド男爵を通してミアを違法に買った」という自白に他ならなかった。
おまけに今までオリバーは、浮気の際に相手の女性から裁判をちらつかせられたことが数度あり、そのせいで妙に裁判の知識を付けてしまっていた。
その時にオリバーの視点では、被害者が有利すぎると、裁判システムや手続きについての鬱憤も溜めていたらしい。
「まずあの、この起訴状ですね、犯行場所とされる我が家の住所のスペルが間違っています!
こっちが提出した書類はサインの抜け漏れ一つで手続きが進まないんだから、だからえ〜っと、正しくない書面では正当な手続きを進められないはずです!今日の裁判自体本来は中止すべきです!」
「犯行日時を、検察官は証拠から可能な範囲で特定するとしていますが……証拠というのが物的なものではなく、金で一代限りの男爵位を買った家の知性がなく、のし上がることばかり考えている男の娘の証言だけで
、証拠と言うには信憑性に乏しすぎます!」
「ウッド男爵と店で話していた内容が犯罪の暴露だと書いてありますが、店が盗聴器を用意していたこと自体が犯罪で、犯罪を証拠として利用するのは……」
この無駄に長く、常識的に考えると難解な演説を、ブラウン家の弁護士は
「違法捜査に基づく、権力の濫用だ」と要約した上で、憲兵や検察による手続きに違法な点があるため、オリバーは無罪である」と主張した。
「おお!あの無茶苦茶な主張を正当性があるかのようにまとめましたよ!さすが公爵家の弁護士ですね!」
最早被害者のミアが誉めてあげるほど、場の空気はオリバーに対して冷え冷えしたものになっていた。




