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オリバーくんの牢屋生活とバカ親たちについて

 「ほい、まいど」

牢番は収納拡張魔法が掛かった下着の中に、受け取った宝石を入れた。


牢番には袋やカバンの持ち込みは禁止されており、制服を改造してもボディチェックでバレる可能性がある。


よって犯罪者の身内から賄賂を受け取る際は、飲み込んだり、ボディチェックの及ばない下着を加工した中に格納するようになっていた。


 ブラウン公爵は牢番の履き古した下着を目にして眉根を寄せ、嫌悪を隠さなかった。

牢番はその表情を見て何故かニヤッと笑った。

お前が嫌悪するような人間に頼らなければ、お前イコールブラウン公爵は目的を果たせないのだぞと言っているような愉悦感がだらしない口元から溢れていた。


 「父上!」

オリバーが貴族用の牢の中で、演劇の悲嘆にくれる主人公のように四つん這いになったまま顔を上げた。


今オリバーがいるのは牢屋と言われて想像する石の壁や床ではなく、庶民の少々上等な個室といった作りだ。ドアに鉄格子の嵌った窓と、スツールのような顔でオマルがある以外は。


 「父上!もうこんな暮らしは耐えられません!」

牢番はボロボロ涙を流すオリバーを見て、公爵にバレないように吹き出した。


この国では裁判前の牢番は固定だ。数人で朝昼夜の三交代制は取るものの、誰がどの罪人を担当して、どの情報を知っているのかを絞っている。


例えば、罪人の貴族が身内を呼んで、証拠の隠滅を指示するなどした場合、その内容は記録及び報告されるので、裁判で不利になる。


 だが、この牢番のように賄賂をもらって隠匿する者が出る可能性は考えられていたので、隠匿が判明した場合、どの牢番が罪人に加担したのか分かるようにしている。


 とはいえ、隠匿が判明しなければ良いと考える良からぬ輩は多いのだ。このブラウン公爵と牢番のように。


 「良い加減にしろ、元の牢屋からお前を貴族用の牢に移すのがどれだけ大変だったと思っているんだ。

お前が隣国との取り引きで迷惑を掛けた貴族が複数でお前を通報したのだぞ。

良い処遇を受けているなど、裁判の時に心象が悪いだろうが。

通報した方々にお詫びをして回って……」

公爵は大きく溜め息を吐いた。


「元々魔獣被害で財務が疲弊していたのに、もう火の車どころではない。早急に金が必要だ。良いか、裁判では余計なことはするな。裁判官は買収してある。リンドバーグ侯爵は遠縁に当たる。おまけに賭けごとにのめり込んでいるからな。お前は弁護士に任せて何も言うな、良いな。

そしてアリシア嬢に詫びの手紙を書け。うちの事業をすぐに立て直せる人材が必要だ。女を引っ掛けることだけは得意だろう」


「俺が何であんな女に詫びなど!あいつのせいで俺はこんな目に遭っているのに!」

「まだ言うかこの馬鹿は!!」


 「……へぇ、買収……」

牢番はニヤァと歯の抜けた口元を歪めた。

◇◇◇


 「情報屋によるとブラウン公爵は裁判官のリンドバーグを買収しているようです」

クリニックの院長室にメンバーが集まった中でエリスが言うと、アリシアは顔を覆った。


「公爵……、本当にどうしようもない親バカだったのね。あの財務状況でどうやって買収のお金なんか……」


 以前の裁判から、正攻法では勝てないと悟ったエリスは情報屋なども探していたのだそうだ。フレイヤがパチパチ拍手すると、エリスはやめてよと頬を赤くした。


 「それなんですけど、貸したのはうちの父親かもしれません。

父親から私に『アリシア様をご実家に帰してオリバーカとくっつけるように』という指示の手紙が届いたんです。

アリシア様のご実家からお金をもらって依頼され、それをそのままブラウン家に貸して、両方に貸しを作ったんじゃないでしょうか」


「商魂逞しいわね、あなたの父親」

ミアの発言に驚きながら、その証拠の手紙を受け取ったレイナルドはあらあらまーと口に手を当てた。


「これ、ミアが公表したらって考えないのかしら。既にインタビューで父親にされたことを話しているって言うのに、『ブラウン家に貸しを作っておくチャンスだ。金を渡してあるから投資分回収できるように、これ以上余計なことを言うな』ねえ……。ストレートねえ、金を渡してあるって、完全に賄賂じゃないの」


「アリシア様のお家からもクソブラウン家からも、お前の娘のせいでって言われる可能性がある中で、ビジネス的には上手く立ち回った方だと思うんですが……、本当に金を稼ぐ以外の画策は苦手な人なんですよね」

ミアがやれやれと顔を横に振る。


「お金を私の家がミアの家にって言うのは……、これ多分怒りながら書いたのね、文章がとっ散らかって……、ああ、『グレイ家から娘を探して戻す様ように依頼料をもらっている。金で依頼を受けたからには役目を果たすように』って書いてあるわね。いや引き受けたのスミス男爵でしょうが」


「うちのバカ親がすみません」

「ああいえいえ、うちのバカ親こそすみません」

ミアとアリシアはそれぞれ親の愚行で頭を下げた。

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