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国王陛下への謁見

 国王陛下の側近は何故側近になれたのか疑問なほどのエロ差別ジジイだったが、陛下は至ってまともな方だった。


 驚いたのは王妃様もご同席だったことだ。

複数の女性からの訴えということに加え、今世間で騒がれている事柄であり、一つは王城での事件にも発展していることから、お忙しい中ご同席いただけたそうだ。


 国王陛下はその立場から側妃も迎えておられるので、ご発言が難しい部分もあるかもしれないという懸念があったが、王妃様がその部分を補ってくれるのであればとても有難かった。

このような配慮が既にかなり検討していただけた結果だと思うと、アリシアはそれだけで胸に込み上げるものがあった。


 ずっと誰にも理解されずに、家庭では両親に放置され顔を合わせることも稀で、兄たちには疎まれ、学校でも男女問わず出る杭は打たれた。その後も浮気三昧の婚約者の仕事を全て肩代わりして朝から晩まで使い倒される日々だった。きっとこれからもそうだった。


 それがたった一日で一変した。今では理解者に囲まれて自分に意見を両陛下に伝えられるまでになった。


奇跡だ。

◇◇◇


 基本的にはエドガーが事前に申請して、概要も内容の両陛下に伝わっているので、この場で行うことは、ミアやフレイヤやエリスたちの声を届けることだった。

 文面では伝わらない「乱暴された」という一文の内容が、どのような影響があるのか分かりやすくすることが目的だ。


 決して大声で叫んで涙を流して熱量を伝えるのではない。大袈裟になりすぎればむしろ、事実の記載すら信用が失われる。


 三人は非常に冷静に自分たちの仕事をやり切った。フレイヤの元同僚たちは、決して注意されるほどではないが、ざわざわとした雰囲気を醸し出した。


 王妃様は涙を流していた。身体的な苦痛も心理的な屈辱も、女性だからこそ想像出来たのだろう。

男性の比率が多い中で、王妃様に涙を流させた事実は大きく影響した。


 想像力に乏しい男性たちも「王妃様が泣いたなら動かざるを得ない!」と思った。こちらはフレイヤの根回しでないざわつきが起こった。


 真に心に響かずとも

「え!?浮気程度じゃないの!?そんなに泣くほどなの!?側妃を認めている王妃様から見ても、今の我が国の貴族男性の女遊びってそんなに非道いのか!?」という危機感にはなったようだ。


 その中で先ほどの失礼差別ジジイが、また微妙な顔をしていた。

アリシアはそれを見て思った。

(ははあ、金で買われていたのね。でも反論しないということは、想像より王妃様の涙という大きな展開になってしまったから?

いえ、控え室でエリスさんにデレデレして出て行った辺り、そこまで強く念押しされてはいないのでしょうね。

王の側近を買収しようというのに、肝心なところでお金をケチる辺り……、家計が火の車のブラウン家かしら?それともそういう奸計に慣れていないミアの実家かしら……。

ミアが父親は面倒な画策はしないと言っていたけれどそのもしかしてミアのお母様……?娘が売られるというのに庇う様子もなかったと言っていたけれど)


 そう。ミアは子供の頃から、父親に子供の無垢さを利用して競合店の悪評を流させられたり、競合企業の社員に懐いたふりをさせられて、つい口を滑らせるのを狙ったりといった、姑息なことに使われてきたと言った。

そしてどんなに嫌がっても母親が庇ってくれることはなく、「家を守るためだから」と宥めすかしてきたと。


 「本っ当に気持ち悪いんですよ、子供懐かせ作戦。杜撰すぎるのに一定の確率でうまく行くんです。変態限定で!あのニチャニチャしたヌガーみたいな目と、こう身体の撫で方が全然可愛がっているのと違って……ううう!今思い出しても吐き気がする!」


悪評については「ねえ知ってるー?〇〇って会社の××ってケンコーヒガイがあるらしいよー」といったもので、もしミアの発言の方が嘘と見做されたら、ミアが勝手に事実無根の嘘を広めた目立ちたがりだと、指示役の父親から、大勢の前で叩かれて終幕にするのだそうだ。


何にしてもクソである。

「……とかをやらされました」というミアの「とか」には、抱えきれないほどの涙が詰まっている。


 (ブラウン家にしても、ミアの実家にしても、目論見が外れて残念だったわね!)

腹を抱えて笑ってやりたいところだが、アリシアは今までの経験で鍛えた腹筋と表情筋で押さえ込んだ。


 そして自身も世間では話題になっているオリバー・ブラウンの数々の行いによって、辛酸を舐めたこと。


オリバーによってミアのように酷い目に遭わされた方が大勢おり、そのフォローをする中で、貴族男性たちの意識を変えてもらわねば、今後もオリバーに限らず、その「遊び」を教えた周囲の男性貴族によって被害が増え続けると危機感を覚えたことを強く訴えた。


 国王陛下の最終的な意見の前に、王妃様が

「国を支える子を産んでくれる女性は、身分によらず大事にされなければなりません!それなのになんて酷い……。この国の男性たちの模範となるべき貴族がこんなことでは、女性は害され、男性たちは仕事もせず、この国は繁栄など出来ませんわ!」と仰られたので、流れは完全に決まった。


 勢いで飛び出した結果、上手くいきすぎて躓いた経験を元に、アリシアたちは心強い仲間を得て、入念に対策していた。


心からの報われたと思った。やっとだ。

長い長いトンネルを抜けた気持ちだった。

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