7、白銀の刃、深淵の教え
投稿遅れてごめんなさい。
今回めっちゃ短いんで、 ミャオ ネフィ が桜雪と会うところをの視点でそれぞれ描こうかなぁなんて思っています。
ガオはまた今度描きます。
集落から少し離れた、切り立った崖に囲まれた薄暗い岩場。
夕日が周囲の赤い岩肌をさらに血のような色に染める中、私はネフィから手渡された、ずっしりと重い練習用の木刀を両手で握りしめていた。
「まず、構えがまるくなってない。足の幅が狭すぎる。九尾の身体能力を活かすなら、常に地を這うような低い重心を意識しろ」
私の後ろに回ったネフィが、冷たい声と共に私の腰の位置をトントンと足で叩いて落とさせる。
「(……厳しい。同い年なのに、戦いのことになると完全に鬼教官だわ)」
心の中で冷や汗をかきながらも、私は言われた通りに重心を深く落とした。
すると不思議なことに、自分の体の中を流れる冷たい【闇】と温かい【光】の魔力が、より安定して足の裏から大地へと根を張るような感覚があった。
「いい構えだ。……じゃあ、ガオ。まずはあんたがサユキの相手をして」
ネフィの合図に応じ、人間の少年の姿をしたガオが、無言で木刀を構えて私の前に立った。
ツンツンとした黒髪の間から突き出た狼耳がピシッと前に向き、彼の青い瞳が、戦闘モードの鋭い光を放ち始める。
「ガオ、手加減はなしにゃよ! ボスをボコボコにするにゃ!」
近くの岩の上で、ミャオがリンゴを齧りながら暢気に足をブラブラさせて叫んでいる。
「ガオ……いくよ」
私の声が冷たく沈む。
その瞬間、私の頭の芯が戦闘モードへと切り替わった。
視界が極限までクリアになり、夕日の光に舞う埃の動きすら、スローモーションのように見える。九尾としての、本気の身体能力の覚醒。
ドンッ!!地面が爆発したような音を立て、ガオの姿が一瞬で消えた。
いや、消えていない。風の魔力を纏ったガオが、目にも留らぬ速度で私の右側面へと回り込み、木刀を容赦なく振り下ろしてきたのだ。
(速い……! でも、見える!)
私は本能のまま、その場から一歩も動かずに上半身だけを鋭く後ろへ反らし、ガオの刃を紙一重でかわした。
ゴウッ、という風圧で私の白銀の髪が激しく舞う。
そのまま、カウンターでガオのガラ空きになった胴体に向けて木刀を鋭く突き出そうとした――。
「ダメだサユキ! 動きが大きすぎる!」
ネフィの鋭い声が響く。
「なっ……!?」
私の突きが空を切った瞬間、かわしたはずのガオが、まるで最初から私がそこを突くと知っていたかのように私の木刀の側面を叩き、私の体勢を強引に崩してきた。
「……ッ!」
体勢が崩れ、地面に倒れそうになる。普通の人間ならここで終わりだ。
しかし、私は九尾。私は強引に空中で体を一回転させ、猫のようにしなやかに着地してみせた。
衣服のドレスがひらりと翻る。
「サユキ、あんたは身体能力が高すぎるせいで、『力ずくで避けて、力ずくで殴る』大雑把な動きになってる。ガオみたいな実戦に慣れた狼の魔物は、あんたのその大振りの予備動作を読んで動いてるんだ」
ネフィが歩み寄り、私の木刀の先端を優しく持ち上げた。
「いい、よく聞きな。魔法をそのまま放つのは、体内の魔力――つまりあんたの『命の残高』をそのまま削ってぶちまける自殺行為だ。だけど、この刀の技術は違う。刀を振る時は、腕の力じゃない。体幹と、お尻の尻尾のバランスを使え。九本の尻尾を同時に動かすイメージで、重心の移動を刃の先端に『一点集中』させるんだ」
ネフィの縦に割れた蛇の目が、真剣そのものの光を宿している。
「そうすれば、予備動作なしで、魔力もほぼ使わずに、音を超える一撃が出せる。その一瞬だけ、刃の先にほんの少しの魔力を乗せるのさ」
「……尻尾の、バランス……」
私は後ろの、今は一本に擬態している白銀の尻尾に意識を向けた。
普段は邪魔にならないように抑えているけれど、これ、実は物凄い質量の塊なんだ。これを、コンパスの針のように使って、体の回転軸を制御する……。
「もう一度だ。ガオ、いけ」
ネフィの冷酷な合図。
ガオが再び、疾風のごとき速度で突進してくる。今度は正面からの猛烈な縦斬り。私は、ガオの動きをじっと見つめた。迫る木刀。その軌道が、私の黄金の瞳にクッキリと映る。
(今――!)
私は、腕の力を完全に抜いた。代わりに、後ろの白銀の尻尾を、ガオの突進とは真逆の方向へと鋭く一閃させる。その凄まじい反動を利用し、私の体は予備動作を完全にゼロにしたまま、コマのように高速で反転した。
キィィィンッ!!
鋭い金属音のような音が岩場に響き渡る。
私の放った木刀の一撃が、ガオの木刀を根元から綺麗に巻き込み、彼の武器を遥か上空へと弾き飛ばしていた。
「……え?」
武器を失い、呆然と立ち尽くすガオ。私の木刀の先端は、寸分の狂いもなく、ガオの喉元の一ミリ手前でピタリと止まっていた。
「……(ぽかん)」
ガオは両手を上げ、完全に降参のポーズをとった。
彼の狼耳が、驚きと敗北感でペタンと寝ている。
「にゃ、にゃんだ今の動き……!? 早すぎて何も見えにゃかったにゃ!」
岩の上のミャオが、持っていたリンゴを落として驚愕している。ネフィは、パチパチと小さく拍手をしながら、満足そうに笑った。
「合格。一を教えて十を覚えるか。さすがは伝説の九尾だね。今の重心移動を本物の刀で行えば、どんな装甲を持った人間も一刀両断できる。……さぁ、お喋りはここまでだ。本物の『獲物』が近づいてきているよ」
ネフィが縦に割れた瞳を、森の外の街道へと向けた。
私も鼻を動かす。……漂ってきたのは、鉄の錆びた臭いと、傲慢な人間の魔力の気配。
「人間の『天災討伐隊』の偵察部隊、にゃね?」
ミャオが鋭い爪を剥き出しにしながら不敵に笑う。
「……行こう。特訓の成果を、試す時だわ」
私は木刀を捨て、ネフィから手渡された本物の漆黒の刀を腰に差し、戦闘モードの冷徹な目を光らせて、夕闇の街道へと躍り出た。
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《番外編》
黒猫ミャオの視点:神獣様はツッコミ体質?
「美味しい人間のご飯が食べたーいにゃーー!」
あたしこと、闇魔法の天才黒猫ミャオは、極上のリンゴを前にして、人生最大(猫生最大)の冷や汗を流していた。
目の前にいるのは、どう見ても伝説の『九尾の狐』。
おまけに、闇と光の魔力が交互にスパークしてて、近づくだけで毛並みが静電気で爆発しそうににゃる。
「ひぃっ、あたい、別に怒ってないからね!? リンゴ、全部食べていいからね!?」
あたしはプライドも何もかも投げ捨てて、木から飛び降りて平伏した。だって死にたくにゃいもん! このバケモノがちょっとくしゃみしただけで、あたしなんか一瞬で消滅してあの世行きにゃ!だけど、その九尾の神獣様――サユキは、めちゃくちゃオドオドしながら
「そんなに怖がらせるつもりは……」
なんて言ってきた。
(……あれ? もしかして、この九尾様、めちゃくちゃチョロいにゃ?)
あたしはすかさず、調子を取り戻して胸を張った。強い奴には媚びへつらい、優しそうな奴には強気に出る。これがあたしたち野良猫の生存戦略にゃ!
「な、なんだ、話せる子なんだ。びっくりしたぁ……。あたいの名前はミャオで、闇魔法が得意なんだよ」
あたしがそう名乗った瞬間。サユキは狐の顔のまま、じーーーっとあたしを見て、何か言いたげに遠い目をした。(……!? いま、心の中でめちゃくちゃ失礼なこと思わにゃかった!?」)
あたしは猫の直感で、サユキが心の中で盛大にツッコミを入れたのを察知した。なによ、ミャオって可愛くて最高の名前にゃのに!
「で、こっちの無口なのがガオ」
あたしが隣のスカした狼男を紹介すると、ガオの奴は無言で「……(コクッ)」とか格好つけて会釈しやがった。するとサユキは、またしても狐の顔のまま、さらに遠い目をにゃした。
(やっぱり失礼なこと考えてるにゃーーー!)
でも、不思議と嫌じゃなかった。サユキの周りに流れる空気は、怖いくらい強いのに、どこかお気楽でハチャメチャなノリが混ざっていて、一緒にいると退屈しにゃさそうだったから。
蛇の少女ネフィの視点:氷の刃と、白銀の主
アルテミス王国の人間の兵士どもが、地上で何かコソコソとやっているのは知っていた。
あいつらは、何か奇妙な鉄の箱を運び込み、魔物の感覚を狂わせる不気味な隠蔽技術でそれを隠していった。
「くだらないまやかしを……」
あたしは、深淵の毒蛇の魔物だ。人間どものやることも、それに気づかず広場で右往左往している地上の頭の悪い魔物どもにも、反吐が出そうだった。
だから、遺跡の十字路の影で、だるそうに寝転がって静観していたのだ。
だが、その静寂を破って、地下階段を降りてくる足音がした。
「……行くよ」凛とした、低く冷たい少女の声。その声が響いた瞬間、あたしの全身の青い鱗が、一斉に恐怖で粟立った。
(なんだ、このプレッシャーは……!?)
暗闇の向こうから現れたのは、衣服のドレスをひらりと翻す、白銀の髪を持った同い年くらいの少女。だが、彼女の体からは、空間そのものを爆発させかねないほどの【極大の闇】と【極大の光】が、禍々しいオーラとなって噴き出していた。あたしは不機嫌さを装いながら、影から姿を現した。
「おい、そこ。あたしの昼寝の邪魔をするな」
威嚇のつもりだった。だが、九尾の主――桜雪の黄金の瞳が、夜闇の中でギラリと光った、次の瞬間。視界が、歪んだ。
「っ……!? 速っ……!」
声すら置き去りにする、圧倒的な速度。あたしが反応するよりも早く、サユキの体が地を滑るように肉薄し、あたしの首筋には、いつでも命を刈り取れる完璧な間合いで、闇の魔力を纏った彼女の手が突き出されていた。
(バカな……! 動きが見えなかった……。一瞬でもこの手を動かせば、あたしの魔核は一撃で消滅させられる……!)
サユキの黄金の瞳の奥には、一切の躊躇がない、冷徹な神獣の戦意が宿っていた。そのあまりの美しさと恐ろしさに、あたしは魔物としてのプライドを完全に叩き折られ、ただ息を呑むことしかできなかった。「あたしたちは、ここへ消えた人間の馬車を探してる。……何か知ってる?」
低く、冷たい尋問。
あたしは冷や汗を流しながら、観念して両手を上げた。嘘をついても一瞬で殺されると分かったからだ。
「……知らない。ここには誰も入ってきていない」
あたしが本当のことを告げると、サユキはジッとあたしの目の奥を見つめ、それから……。スッと、張り詰めていた恐ろしい威圧感を消し去り、いつもの綺麗な少女の姿に戻って、がっくりと肩を落とした。
「本当に、何もないんだ……」その瞬間、あたしは彼女に完全に心を奪われた。戦う時は冷徹で無敵の神獣。だけど、ひとたび戦いが終われば、同い年の普通の女の子としての脆さを見せる。
(この人は、本物だ。ただ力を振り回すだけのバケモノじゃない)
「あたしの爪と毒、そして幻術。あんたの眷属として、旅に同行させて。……よろしくな、ボス」
あたしが手を差し伸べると、サユキは少しだけはにかんで、あたしの鱗の残る手を握り返してくれた。(あんたのその圧倒的な力を、あたしの知恵で完璧な『刃』に仕上げてやる。覚悟しなよ、ボス。あたしたちの反撃の始まりだ)
みなさん7話どうでしたか! 私結構1話から見ると上手くなってませんか!(自己評価 やっぱりそうですよね私てんさ(((殴り 失礼しました。ところでみんなは4人のなかだったら誰推しですか?ぜひ教えてください!




