第53話 幼なじみとクラスメイトからのキス、それから……
ともかくこれで一旦収まったかと思いきや、沙橙はまだ諦めていないようだった。正面から朱美へ抱きついて離れようとしない。というよりも、全身を使って思いっきり密着してくる始末である。
「さ、沙橙? 苦しいんだけど……」
「……美桜ちゃんとのキス見てたらボクもしたくなっちゃった」
「え?」
そのまま沙橙の顔が近づいてくる。このままでは本当にキスされてしまうと思った次の瞬間。
「朱美さんとのキスはわたくしが先にさせてもらいますわ!」
蒼衣が横から乱入してきたのだ。しかもその勢いに任せて強引に唇を奪っていく。それは先ほどの美桜とのキスと同じで強引かつ一方的なものだった。
最初は抵抗しようとした朱美だったが、途中であまりにも必死に求めてくる蒼衣を見て抵抗する気力が失せていく。
(まぁ、これはこれで幸せだし……)
そう思い込んでそのまま受け入れることにしたのだった。
「んっ……ちゅ……ふぅっ……」
二人の唾液が混ざり合い、水音を奏でる。互いの呼吸さえ飲み込むような熱烈な行為に夢中になり、何も考えられなくなってしまいそうになる。
しばらくして満足したのか、朱美から名残惜しそうに唇を離す。二人の間に銀色の橋がかかり、途切れて消えていった。
「……次はボクの番だから」
今度は沙橙が抱きついてきた。すでに朱美は抵抗する気など全くなく、受け入れるつもりでいた。沙橙の顔が接近してきて目を閉じる。直後に柔らかい感触があり、ぬるりとしたものが口内に入ってきた。絡み合う舌先から快感が広がっていく。
「んっ……ぢゅるっ……れりゅ……ちゅぱっ……」
激しい接吻の音が部屋中に響き渡り、脳髄まで溶けてしまいそうな感覚に陥っていく。同時に身体の奥底から湧き上がってくる欲情の炎に焼かれてしまうかと思うほどに火照っているのがわかる。
「ぷぁっ……はぁ……はぁ……沙橙……激しいよ……」
「……だって朱美ちゃんとキスできて嬉しいんだもん」
蕩けたような表情をしている沙橙を見て、興奮せずにはいられなかった。自然と頬が緩んでしまう自分を感じながらも、朱美は平静を装ってみせる。
「そ、そんなに嬉しいの? だったら私からもしようか」
「……えへへ……朱美ちゃん優しいね……」
「うっ……可愛すぎる……!」
普段の大人しい姿からは想像できないほどデレデレな顔を見せる沙橙に対し、我慢の限界を迎えそうになるが必死で堪えた。ここで暴走したら取り返しのつかないことになるという危機感が働きかけているおかげでギリギリセーフといったところだろうか。
その後も朱美と沙橙は深く結びつき、何度も角度を変えて濃厚なキスを楽しんでいた。朱美はキス魔というわけではないが、美少女とキスする機会があるならキスしたい方なのだ。
とはいえ、あまり慣れていないから次々にみんなから責められるのは困ってしまうのだけど。
「……それにしても……」
「みーちゃん、どうかしましたの?」
美桜が何かを言いかけて、蒼衣が気にして続きをうながす。
すると美桜はちょうど沙橙とキスを終えたばかりの朱美の方をチラッと見ると、いきなり胸を揉んできたのだ。突然のことだったので対処することができずされるがままになってしまう。
「やっぱり朱美おねーちゃんの胸ぺたんこだね! 全然ボリュームないし!」
そんなことを言いながら楽しそうに揉んでいるのだが、その手つきには妙なテクニックが光っているように見える。
実際どうかは知らないが少なくともそう思わせるほど上手く感じる。
「美桜……それ以上言うと殴るよ?」
それはそれとしてノンデリ発言に腹を立てた朱美はを握りしめながら警告を出す。しかしそれで反省する美桜ではなく逆に調子に乗ってしまう。
「え〜? でも朱美おねーちゃんのおっぱいが小さくてかわいいのも事実じゃん!」
余計な一言を付け加えて更に煽る美桜に対して、ついに朱美の怒りゲージが溜まりきってしまったようで。
「言ったな……? もう許さないからね……!」
そう宣言すると同時に朱美は美桜を押し倒す。そしてそのまま覆い被さるようにして馬乗りになると、両手で胸を鷲掴みにする。突然のことに驚いている美桜は目を丸くしていたが、すぐに状況を理解したようで抵抗し始める。
「ちょっ、朱美おねーちゃんストップ! まって、やめっ……!」
「待ちません」
美桜は必死に抵抗しているが、朱美も負けじと力を込めて押し続ける。一歳差しかないとはいえ、子どもの一歳差は大きい。
美桜は朱美に力比べで勝ったためしがなく、しかも馬乗りになられているので逃げることもできない。
「わかった、わかったからぁ! ごめんなさい! 謝るから! 許してよぉ!」
弱い部分を攻められて悲鳴のような声を上げる美桜に、朱美は容赦なく責め続ける。普段の生意気な態度が嘘のように泣き喚く姿を見るのは新鮮だった。
そうは言ってもやりすぎるとトラウマになってしまう恐れもある。朱美は慎重に加減をしながら責め続けた。しばらくして美桜がぐったりしてきたところで朱美は手を止めた。
「はい、これでおしまい」
「はぁ……はぁ……うぅ……もう、朱美おねーちゃん酷いよ……」
涙目になりながら抗議してくるものの、朱美はどこ吹く風といった様子だ。むしろ充足感を感じていた。美桜は呆れた表情を見せると諦めたようにため息をつく。
「まったく……これだから朱美おねーちゃんは油断ならないんだよね……」
そう言い残すと美桜は立ち上がって離れていく。懲りたらしく、しばらくは朱美の近くに寄ってこないだろう。朱美は一矢報いたことと美桜の泣き顔に興奮したことで魔王のようなどす黒い笑みを浮かべているのだった。




