第54話 誘拐犯の心境
お姉ちゃんに仕返しされてぐったりしている美桜と、やってやったとばかりに下卑た笑みを浮かべている朱美以外の三人は顔を見合わせていた。
「朱美ってば、意外とSだったのね」
「……ドSの素質ありすぎてキモいレベル」
「沙橙さんなかなか言いますわね。まあ、お気持ちはわかりますわ」
「みんな言い過ぎだよ!」
朱美は憤慨した様子で言い返すが、三人は取り合わない。逆に面白がってからかわれてしまう始末だ。特に沙橙からは辛辣なコメントを受けてしまい、精神的なダメージを受けた朱美は落ち込んでしまう。
気を利かせてくれたのか、紫音が慰めるように肩をぽんと叩いてきた。
「ほら、そんなに凹まないの。あなたは魅力的よ?」
「……ありがとうございます」
「それに……今のあなたの姿を見る限り、全然Sじゃないもの」
優しく微笑みかけてくれる紫音のおかげで朱美は多少立ち直れた。しかし最後の一言はどういう意味なのか問い返したいところではあるのだが……気のせいということにしておこう。
「さて……私たちもするわよ」
「しましょう!」
「……おっけー」
紫音がそう宣言すると、それに続くように蒼衣と沙橙も同意する。何をするというのだろうと朱美が口に出すよりも先に、三人が朱美の前にやってくる。
そして三人がタイミングを合わせて一斉に朱美に向かって飛びかかってきたのだ。
「え、ちょ、ちょっと待って!?」
「待たないわ」
問答無用といった感じで押し倒されてしまう朱美。そんな朱美の上に覆い被さるようにして三人は密着してきた。朱美の上には蒼衣が跨っていて、その左右にそれぞれ紫音と沙橙が陣取る形になっていた。
「な、何をするつもり!?」
「もちろん……イタズラですわ!」
そう答えると同時に蒼衣が朱美の脇腹をくすぐってくる。さらには紫音と沙橙が左右から首筋を舐めてくる。
「ひゃうっ! あはっ! やめっ! あはは、くすぐったいよ!」
「こちょこちょこちょこちょ〜」
あまりのくすぐったさに悶える朱美だったが、三人は容赦なく攻撃を続ける。蒼衣は脇の下などを重点的に責めつつ時折腋の下を撫でてくるし、紫音と沙橙に至っては耳の中まで舌を入れてくる始末。
その度にぞわりとした感覚が背筋を駆け巡った。
「あはははは! お願い、許してぇっ!!」
「ダーメ。まだまだこれからよ?」
涙を流し笑い続ける朱美とは対照的に、三人は楽しそうな笑顔を浮かべている。結局その後も三十分以上も続き、最終的には全身汗まみれになりながら息も絶え絶えの状態で解放されたのだった……
☆ ☆ ☆
「……思ったようにえっちな方向に進んでくれない」
暗い部屋の中で大きなモニター画面を眺めていた謎の存在――この部屋を作った張本人はそう呟いた。。そう、この部屋を作り出したのは他でもない。彼女〝達〟なのである。
「くっ……全裸になった時はうひょーってなったのに!」
「キスもなかなかえっちではあるけどセッ〇スしなさいよ!」
「わーお、直球」
各々が好き勝手に喋っているせいで収拾がつかなくなっているが、それも無理はないだろう。何故なら彼女たちは『百合えっち』を求めて朱美達を攫ったのだ。
百合妄想をして、百合えっちを傍から見るのが好きなだけの普通の……うん、まあ、普通の女性達。おまけに最近は仕事でストレスが溜まっていたこともあってなおさら滾っていた。
……どこからどうみても犯罪者の集団である。
「まさか全裸になった上で健全にイチャイチャするだけなんて……」
「いやー、胸揉みはなかなかえっちだったけどそれ以上も欲しいよねー」
「全裸の時点でワンチャンあると思ったんだけどなぁ」
「もっと踏み込んでくれないと困るんだけど」
などと言いながらも、彼女たちの目は爛々と輝いている。それもそうだ。だってあんな可愛い女の子たちが全裸になって一緒にいるのだ。興奮するなというのが無理な話である。
しかもそれが自分の手によって起こったと考えると尚更だった。中には鼻血を垂らしている者までいる始末。
「で、どうする? あいつらが百合えっちするまで部屋から出られないよ」
「まあ焦る必要はないんじゃない? 焦ってもいいことないよ?」
「そりゃあそうかもだけどさー」
彼女たちにとって重要なのは一つだけ。それは〝百合えっち〟だ。それを成し遂げるためならばどんな手段も厭わないほど本気である。
それこそ、自分達が犯罪者と言われようと構わない。それほどまでに百合えっちに飢えていたのだ。
「だとしても時間かかりすぎじゃない? 私たちも寝ないとだし」
「百合えっち鑑賞会とか言うから協力したのに……」
「ま、いいじゃん。彼女たちがどうするか楽しみにしようよ」
「それもそうだね」
彼女たちは気楽な調子で話し続ける。百合えっちが大好物な彼女たちにとって、これはあくまで遊びなのだ。犯罪の自覚があるとはいえ、好きなものに一直線なだけなのだ。
そしていつか来るであろう展開に、期待を膨らませ続けるのであった……
――これは、全ルート回収し終えたあとのちょっとしたおふざけ要素。




