第43話 未来を約束する二人
チャペルでの式が終わり、朱美と沙橙は家への帰り道を二人で歩いていた。
「……今日は来てくれてありがとう」
「いやいや……こちらこそお招きいただけて光栄だったよ」
朱美は沙橙に向けて明るい笑顔をつくる。
もう日は傾いており、夕焼けが朱美たちを赤く照らしていた。
「……一人で参加するの不安だったから助かったよ。同棲してる子は自由な感じだからずっとボクの傍にいてくれるわけじゃないし」
沙橙は苦笑しながらそう言う。
「……でも、朱美ちゃんがいてくれて本当によかった」
「……うん。私もそう言ってもらえて嬉しいよ」
沙橙の言葉に、朱美は思わず頬が緩むのを隠せなかった。
ああ……やっぱり好きだ。
このまま時が止まってしまえばいいのに。ずっとこの人の隣にいられたらいいのに。
朱美は叶いもしないことを願っていた。
「……ねぇ、朱美ちゃん」
「どうしたの?」
「……今日のドレス、本当によく似合ってるね」
「えー、そうかな? でも、褒めてくれてありがとう」
朱美はスカートの裾を掴んで軽く持ち上げながら礼を言う。
こうやって褒めてもらえるだけで本当に幸せだ。
沙橙に認められている姿をいつでも見てもらえるのなら、毎日でもドレスを着てしまいそうになっている。
そんなことを考えていたときだった。
ふいに朱美の左手が優しく握られる。
驚いてそちらを見ると、いつの間にか隣に立っていた沙橙が朱美の手を握っていた。
そしてそのまま手を引かれて歩き出す。
「さ、沙橙……?」
「……こんなに可愛い子連れ去りたくなっちゃった。――付き合ってくれる?」
そう言って微笑む沙橙。
朱美を試すように、でも本心から言っているとわかるおどけ具合で。
朱美の気持ちなんて知らずに、いつもこうやって惑わせる。
だけど、それがとてつもなく心地よいのも事実だった。
「うん……もちろん! どこまでもついていくよ!」
朱美は握られた手に力を込める。
この手を離したくない。離されたくない。
いつまでもこの人の隣にいたい。ただそれだけが朱美の望みだ。
「……朱美ちゃん」
「なに?」
「朱美ちゃんは結婚願望とかある?」
「いきなりだね……うーん」
朱美は少し考えて、口を開く。
「……今はまだないけど、いずれは」
「……そっか。そっか……じゃあ、ボクが朱美ちゃんを絶対幸せにする」
「期待してもいいの?」
「……期待以上に応えてみせるから覚悟しといて」
そう言って笑う沙橙の顔はとても素敵で、朱美は思わず見惚れてしまう。
沙橙は本当に朱美を狂わせるのが上手だ。
「じゃあ、楽しみにしておくよ」
「……うん、任せておいて」
朱美たちはお互いに笑い合い、そのまま歩を進めていく。
沙橙の言葉も嬉しいけど、朱美が今望むのはただ一つだけ。
沙橙……貴方の隣にいられるのなら私はそれだけで十分幸せなんだよ。
☆ ☆ ☆
「上手くいったかなぁ」
女性は夕焼けに染まる道を歩きつつ、ふとそんなことを呟く。
彼女たちには余計なことをしてしまったかもしれないと思い悩んでいた。
だけど、ずっと朱美がいかにすごくて大事に思っているか聞かされてきたから、どうしても背中を押してあげたくなってしまったのだ。
「朱美さんは妙なところで勘がいいって聞かされてたから……バレちゃってるかな」
朱美は明らかに彼女を警戒していた。
だけど、心の奥底ではきっと女性の魂胆なんてバレバレなのだろう。
沙橙と彼女の想い人をくっ付けたいという魂胆なんて。
「あーあ、私もあんなふうに想い合える人に出会えるのかなー」
それは気長に待つことにした。
今は彼女たちが幸せなのであればそれに越したことはないと、恋のキューピットは夕焼け空を見上げるのだった。




