第41話 元クラスメイトが結婚するルート?
「……んじゃ、朱美ちゃんも参加ってこと向こうにも伝えておくね。式は○月×日だから、予定開けといて」
「わかった。楽しみにしてるね」
朱美はできるだけ平静を装って、愉快そうな沙橙の同棲相手に返事を返す。
「よろしくねー」
そして同棲相手はそれだけを告げて部屋から出て行った。
用事でもあるのだろうか。
……しかし、どうしたものか。
沙橙が結婚してしまうのは正直嫌だし、結婚式なんて行きたくない。
でも朱美は沙橙のことが本気で好きなのだ。
ここで自分のワガママを通してしまうと、朱美は一生沙橙に顔向けできないだろうこともわかっていた。
「……ん? どうしたの、朱美ちゃん?」
「いや……なんでもないよ」
こんなときまで朱美を気遣うように微笑む沙橙。
そんな優しい顔をされたら、意地を張ることなんてできなくなってしまう。
「……あの人とはいつからの付き合いなの?」
「……ん? うーん、確かちょうど四年前くらいかな? あの子と過ごすのは色々都合がよくてね。ボク、一人だとやっていけなくてさ」
「そうなんだ……」
四年……それなら、まだ朱美がいない期間と重なっている。
朱美が彼女を知らないのは当然のことだった。
でも何故かはわからないけど、なんとなく彼女からは油断ならない雰囲気が漂っているように見えた。
「ねぇ、沙橙」
「うん? なに?」
朱美は沙橙の手を握り、真っ直ぐにその瞳を見つめる。
朱美の手は悲しさと緊張で震えたままだけど、それでもできるだけかっこよく見えるように。
彼女の瞳に、できるだけ自分を映せるように。
「私は必ず、沙橙を幸せにするからね」
――だから、自分だけを見ていてほしい。
「……うん、ありがとう。でもいきなりどうしたの?」
沙橙は朱美の手を握り返しながら不思議そうに首をかしげる。
こういうところも大好きで、いつも朱美を狂わせる。
こんなに可愛い人だから、きっと他のライバルたちにも目をつけられてしまうだろう。
だけど、もう大丈夫と。朱美がいるからには誰にも手出しはさせないと決意を固める。
「ううん、なんとなく伝えたかっただけ」
「……そっか。へへ、嬉しいな」
沙橙が微笑むと、朱美の胸はそれだけで温かくなる。
自分は、この人の笑顔が好きだ。大好きだ。
だから……沙橙にはどうかずっと笑っていてほしい。
「結婚式、楽しみだね」
「……うん。ボクもすごく楽しみ」
朱美が心にもないことを言うと、沙橙は心から嬉しそうに同意する。
歯がゆさすら覚えるも、それでも朱美は沙橙のことが好きだから、この選択を後悔することはないだろう。




