第27話 先輩:完全攻略⑤
一人になった帰り道で色々と考えを巡らせていたものの結局答えが出ることはなかった。そしてようやく自宅に辿り着くと、扉を開けるなりベッドに倒れ込んだ。
「はぁ……」
大きな溜息を吐くと共に全身の力を抜いて脱力すると天井を見上げた。照明の光が眩しくて目を細めると、ぼんやりとした視界の中へ飛び込んできたのは彼女の顔だった。
『……朱美ちゃんのこと、ずっと好きだよ』
不意に脳裏を過ったのは沙橙の台詞である。それを聞いた途端胸の奥底から込み上げてくるものがあったのだが、何なのかわからないまま涙となって溢れ出ていくばかりなのでどうすればいいのかわからないままだった。
「紫音先輩……」
「うん、どうしたの?」
「え!?」
驚いて身体を起こすと、そこには確かに名前を呼んだ彼女の姿があった。
「ど、どどどどうしてここに!?」
「さっき一人で険しそうに顔をしかめる朱美を見かけてね。心配で親御さんに入れてもらったのよ」
家にいる理由はわかったが、それにしても足音やドアを開く音も聞こえなかった。
やはり紫音先輩は謎が多い。
それよりも問題なのは今まさに涙を流してしまっている状態であることだ。しかも鼻水まで出てきてしまっているために顔全体がグチャグチャになっていること間違いなしであるはず。そんな状態を見られるなんて、恥ずかしすぎて死にそうになるほどであり、一刻も早く隠さなければいけない。
「ちょ、ちょっとまっててください!」
慌てて布団を被って顔を隠すことに成功したと思ったそのとき、正面から腕が伸びてきて押し倒されてしまう。抵抗する暇もなく、仰向けに寝転ぶ格好になってしまった。
「し、紫音先ぱ……」
「ごめんなさい。きっと私が不安にさせてしまったのよね? 泣くほど追い詰めさせてしまって申し訳ないわ」
「ち、違います。これは、その……」
「……朱美」
名前を呼ばれて顔を上げると、至近距離から見下ろされていた。その瞳には心配の色がありありと浮かんでおり、とてもじゃないが見ていられなかった。
だからといって逃げ出すこともできずにいると、再び手を伸ばしてきて頬に触れられた。あたたかくて、優しくて、この人に全部委ねてしまいたいと直感的にそう思った。
「紫音先輩……私の全部、食べてください」




