第15話 沙橙(メンヘラなクラスメイト)ルート④
「ボクは君を愛しているよ。だからね……ずっと一緒に居たいんだ」
「……っ!」
その言葉に朱美は顔を真っ赤に染める。
そして沙橙は朱美の手を取り、自分の頬に添えさせた。
その頬はとても熱かったが、それ以上に朱美の心臓の方が高鳴っていた。
まるで壊れてしまったかのようにバクバクと脈打っている。
そんな朱美を見て沙橙はクスリと笑った。
その笑みにすらドキリとするのだからもうどうしようもないだろう。
「……ねぇ朱美ちゃん。ボクのこと、嫌い?」
「そ、そんなこと……!」
慌てて首を横に振ると、沙橙は安心したように笑った。
そんな笑顔を見て胸が高鳴るのと同時に顔が熱くなるのを感じる。
もうわけがわからなかった。
どうしてこんなにも沙橙に惹かれてしまうのだろう。
朱美は自分の気持ちがよくわからず混乱していた。
そんな朱美を気にせず、沙橙は続ける。
「良かった……じゃあさ、ボクと付き合ってよ」
「……え?」
突然の発言に驚く朱美だったが、すぐに我に帰ると再び首を横に振った。
「無理だよ! 私なんかじゃ……」
「……そんなことないよ」
そう言って沙橙は再び強く抱きしめた。そして耳元で囁くように言う。
その声は少し震えていて緊張しているようだった。
「……ボクは本当に君に救われた。君がいなければ今のボクは居ないんだ」
「沙橙……」
「……だから、ボクを選んでくれないか? 君が誰かのものになるなんて耐えられないんだ」
沙橙の切羽詰まったような声音に朱美は何も言えなくなる。
そんな朱美を見て沙橙は悲しげに微笑むと、ゆっくりと身体を離した。
「……ごめん、いきなりこんなこと言われても困るよね……」
そう言って立ち上がる沙橙を見て、思わず引き止めようと手を伸ばすが届かなかった。
そんな様子を見た朱美は胸が締め付けられるような感覚に襲われると同時に泣きそうになったが、必死に堪えた。
「あれ……?」
そんな時、とある記憶が蘇り朱美は首を傾げた。
『そこでなにしてるの!?』
『……もうボクを楽にしてくれよ』
『あなたのこと何も知らないけど、見ちゃったら見て見ぬふりなんてできないよ!』
『……うるさいな』
『私の手を取って? 私はあなたの笑顔が見たい!』
『……どうして……』
『だって、そんな顔したまま死んでしまうなんてやだよ!』
『っ……!』
断片でしかない。
朱美は全部を思い出したわけではない。
けれど、その時の相手が目の前の沙橙だということだけはわかった。
「……もしかしてさ」
「うん?」
「あの時の人って……」
朱美の言葉に沙橙は目を見開いた後、ゆっくりと口を開いた。
「……そうだよ。あの時助けてくれたのは君だ」
その言葉に朱美はハッとした表情を浮かべると俯いたまま黙り込んでしまった。
そんな朱美を見て沙橙は悲しそうに微笑むと背を向けた。
「……ごめんね……迷惑だよねこんなボクなんて」
そう言って立ち去ろうとする沙橙の腕を思わず掴んだ。
すると沙橙は驚いた顔をして振り返る。
「……朱美ちゃん?」
「……私、ちょっと後悔してた。余計なお世話なんじゃないかって、今ならわかる。でもあの時はわからなかったの。沙橙を助けたいって思ったから行動したんだけど、それが本当に正しかったのかわからなくて」
「……」
朱美の言葉を聞いていた沙橙は黙って聞いていたが、やがて優しく微笑むと言った。
「……君は優しい子だね」
「そんなことは……!」
「……あるよ。だってボクのために泣いてくれたじゃないか」
そう言われて初めて自分が泣いていることに気づいた朱美は、慌てて涙を拭うと恥ずかしそうに俯いた。
そんな朱美を見て沙橙はククッと笑うと、再び抱きしめる。
今度は優しく包み込むように、それでいて離さないと言わんばかりに強く抱きしめた。
「……もう離さない。どこにも行かないで……」
沙橙の言葉は祈りのようで、朱美自身も沙橙と離れてしまうんじゃないかと思い、思わずぎゅっと抱きついた。
「大丈夫……私はここにいるから」




