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信心するなら強いのがいいから、最強の神を探し求めるおれの話をちょっと読んでけ  作者: naro_naro
第九章 帝国首都――おれと神、そして旅

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「煙。あまり大きくない」 神官の一人が窓から大きく身を乗り出して言った。すぐに三人飛び出していった。

「我々は待機。アウローラさん、済みませんがご協力お願いします」 別の一人が頭を下げた。

「はい。しかし何をしたら……?」

「ここにいてるだけで結構です。もし応援が必要になったら出動して、治療や防火帯造りにあたります。先行の報告を待ちます」

「治療はわかりますが、防火帯? あ、焼き払うんですね」

 おれも話がわかった。火のまじないはこういうことにも使えるんだ。じゃ、ここで役に立たないのはおれだけか。その時、はっと気がついた。

「あの、南のほうって、デウセルフ様の教会ありますか」

 今朝別れたディーミディが向かった方角を思い出したのだった。

「ありますが。あっ、確かに煙の上がってるあたりです」

「見てきます。相棒がいるんです。くわしい場所を教えてください」

「それは……、こういう状況ですからご案内はできませんが、地図を書きます」

「お願いします」

 すぐ書いてくれた。アウローラが心配そうにのぞき込んでくる。鐘はまだ鳴らし続けられていたが、調子が落ち着いてきた。

「良かった。大火事にはならないな。だが、待機は続けよう」


「じゃ、行ってきます」

「気をつけて」

 心配そうなアウローラを後に外に出た。遠くで立ち上っている煙は夕焼け空を背景に、汚い灰色だった。地図を見ると、そちらに直線で行ける道はなく、何度か曲がり、回り込むように行かなきゃならない。もどかしい思いで走った。

 教会に近づくにつれ、エルフが増えてきたが、すれ違う顔の中にディーミディはいない。進むにつれ煙の臭いが強くなってくる。最後の角を曲がると、窓から黒煙を吐き出している教会が見えた。なんとか持ち出したんだろう。祭具や書物、家具などが前の広場に並べられていた。神官や信者たちは、立ち上る煙を見上げながら作業にあたっていたが、そこにもいなかった。

 教会を指さす。「まだだれか残ってますか。けが人とかは?」

「いや、全部逃げたって聞いたけど。けが人は一カ所に集められたはず」 エルフたちは煤まみれだった。

「どこに?」 答えはなく、そばにいる人たちにも手当たり次第尋ねたが、手掛かりすらなかった。


 応援に来ている人々や神官たちはグレシャ教団だけではなかった。燃える木に砂が集まってきてかぶさるのはオリエン教団だ。また、時々火の粉が舞い上がるが、空中を漂うと同時にはたき落とされていた。空気を操ってるのはボーニタス教団だった。ほかにも神像や重くかさばる調度品を軽々と運び出してるのはレヌスポテント教団の信者と思われた。


 邪魔にならないように聞いて回っていると、やっとけが人が運ばれた場所がわかった。いつもは市が立つ広場だと言う。おれは礼を言い、走り出そうとした。

 足元でなにかが転がった。小石を蹴ったのか? けど、こういうときなので神像からはずれた貴石とかだといけない。薄暗くてよく見えないので拾い上げた。

 実? セミーピンギアだ。焦げている。おれは放った。

 そんなことよりディーミディだ。

 だが、聞いた広場にもいなかった。けが人たちが座り込んで治療を受けている。先行した三人もここにいたので、応援が必要なら伝令を務めると言ったが、いまのところ不要とのことだった。火がすぐに消し止められ、避難も早かったのが幸いした。

 なら、なおのことディーミディはどうしたんだろう。おれはいったん宿に戻ったが、ここにもいなかった。主人に火事について聞かれたので見たままを話し、ディーミディへの伝言を残した。


「どうだった?」

 グレシャ教会に戻ると、アウローラが飛びつくように聞いてきたのでざっと話した。神官たちは当番を残して待機状態を解いた。

「おれはまたデウセルフ教会に戻ってディーミディを探す」

「わたしも」

「いや、ここにいてくれ。ばらけるのはまずい」

 アウローラはうなずいた。おれは、もう日の沈んだ街をまた走り出した。


 教会前広場の碑にディーミディへの伝言を貼りつけた。宿かグレシャ教会にいると書いた。

 貼りつけてから見ると、その碑は騒乱時代の犠牲者を悼んでいたが、追悼文中でエルフとドワーフの一部に背信があったことを非難していた。

 デウセルフ教会の真ん前にこんな碑があるのにはそれなりの事情があるのだろう。でも、嫌な気にさせられた。ここも純粋主義と無縁じゃない。そうなるとさらに心配になってきた。おれが奴らならこの機に乗じてエルフの力を削ぐ方向に動く。火事の原因によっては殊更に煽りたて、出て行かせようとするだろう。

 頭を振った。いまはディーミディだ。相棒を探さなきゃ。

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