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信心するなら強いのがいいから、最強の神を探し求めるおれの話をちょっと読んでけ  作者: naro_naro
第八章 脇街道――〝帝国人〟と〝神〟

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「なに言ってる? そんなの……」

 驚きのあまり声が裏返りかけたが、なんとかちゃんと発音した。しかし、ディーミディは笑っている。さっきから気に入らない。これは笑い事じゃない。

「……そんなの、あっという間に勝負がつく。おれの負けに決まってる」

「信仰を確かめるのは勝ち負けじゃないんだろ?」 ディーミディが笑った口の形のまま混ぜっ返した。

「ちょっとは闘えるなら確かめられるけど、火球や雷撃持ち相手じゃ文字通りの一瞬で決まる。確かめようがない」

 アウローラはディーミディを見た。

「なにかいい方法はありますか」

「ちょっと待て。考えてみる」


 それからしばらくの間、みんな黙って歩き続けた。ひどい道の両側から木々が覆いかぶさるように枝を伸ばし、鳥や、時には獣の声がした。汗や血を吸いに来る虻や蚊がうっとうしい。おれは虫除けの蔦をむしり、揉んで丸めて背負い袋につるした。アウローラとディーミディにもそうしてやった。


「ありがと。で、闘いの方法、思いついた。ちょっと止まってくれ」

 ディーミディは森を指さした。

「子供の遊びでいこう。『竜とお姫様』だ」


「おれが〝竜〟だな」 説明を聞き、短剣の柄を叩いた。

「三発当てればいいんですね? 最小の威力で」 アウローラが人差し指に小さな炎を出した。


 ディーミディが審判を務める。アウローラが森の中で目隠しをして立つ。ディーミディが百数える。その間におれは好きな場所に隠れ、アウローラが目隠しをはずしたら闘いが始まる。


 おれは、鞘をしたままの短剣をアウローラに触れさせたら勝ち。

 アウローラは、火球でも雷撃でも、おれに三発当てたら勝ち。


「これならおまえにも勝ち目あるし、一瞬じゃ決まらない。目だって見られるだろ?」

 おれは頷いた。アウローラも頷き、みんなで森に入った。

 森に深く入ると、周囲はすべて木や草、岩になった。木の間を透かしてみても、元の道は気配も感じられない。それと、周りから見られている感じがする。実際そうなんだろう。鼠や鳥や虫、無数の生き物の目がこっちをうかがってるんだ。

 少し開けたところでアウローラがかがみ、ディーミディが目隠しをした。

 まっすぐ、姿勢良く立ったのを機に、ディーミディは手を上げ、数を数え始めた。

 おれは背負い袋をその足元に投げ、二人を背にする。音で距離や方向を悟られないようにらせん状に走って距離を拡げ、ある程度離れたところで逆行もしてごまかしつつ、岩陰に隠れた。


「はじめ!」 大声は木々に響きを吸い取られ、いつもの声と違う妙な風に聞こえた。森は、鳥や虫の声があふれんばかりなのに、静かだった。


 腰をかがめ、間に木を置くようにしながら近づいていく。アウローラは右利きで、まじないを撃ち出すのも右手からなので、左斜め後ろから攻撃するつもりだった。そういうのは読まれてるかもしれないが、だからといってほかの方向からだと近寄ることすらできないだろう。速さに賭けるしかない。


 木の隙間から見えるアウローラは始めたときとおなじくきちんと立っている。まるでこれから礼拝に向かうかのようだ。

 いや、実際にそういうつもりなんだろう。アウローラは純粋に――嫌な言葉だ――グレシャ様を信じている。

 おれの目はどうなんだ? カプティンペリアーレを〝純粋に〟信じているのか。わずかでも疑いがあるのか。

 いずれにせよ、手は抜かない。そう、鞘がなかったらほんとうに殺すくらいのつもりで闘うんだ。あそこにいるのはアウローラ。最も頼りにした人だ。だから、おれの全力を出す。


 ディーミディは木に登り、あたりを見回せる枝の股に座って足をぶらぶらさせていた。よし、邪魔にはならない。


 じわりじわりと近づいていく。

 アウローラの頭がぴくりと動いた。まずい。まだ遠い。いや、虫か?


 しかし、闘いは計画通りには行かないものだ。

 森の静寂を破ったのはおれだった。耳元を虫がかすめたとき、心がはじけ、なにも考えずに飛び出していた。右手に短剣。獣のように吠える。なぜだ? ちょっとでも静かに近づかなきゃならないのに。

 なにもかもがゆっくり動いているように感じられ、距離にかかわらず振り向いたアウローラの顔が大きく見えた。


 その目。


 右肩に熱。あともうちょっとで手が届く。


 右太ももに灼熱。威力を絞るはずじゃ。


 短剣を力の限り突き出す。狙いは胸の真ん中のちょっと下。骨のないところ。


「やめろ!」


 腹に錐で突かれたような集中した熱を感じた。おれは短剣を左に持ち替え、倒れたアウローラの首に刺そうとしたが、ディーミディの声で我に返った。


「終わりだっつってんだろ!」

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