二
味気ない食事を終え、湯をすすってると、食前食後のお祈りをしたのはアウローラだけだったのに気付いた。
「いいのか? 半分だけでも信心しなくて」
そう言えば、ディーミディが祈ってるのを見たことがない。宿なんかで一人の時に手を合わせてると思ってたから聞きもしなかったが、アウローラがきちんとした祈りを捧げてるのを見ると疑問に思えてきた。
「毎日じゃなくてもいい。あたしは気が向いたらやる」
組んだ手をほどいたアウローラは不満げだったがなにも言わなかった。
「気が向いたら、か。神様って無力だな」
アウローラははっきりとおれをにらんだ。
「ルシエス。言葉が過ぎます。それに、ほんとに無力だって思ってるなら神様探しなんかやめたらどうですか」
ディーミディが笑った。
「そりゃそうだ。ルシエス、いまさらだが、そもそもおまえはなんで信心すること自体をやめちまわないんだ?」
「そりゃ〝恩恵〟とまじないがあるから……」
「おまえのはそういう実利狙いじゃないだろ?」
「全知全能と書いてない教義、かつ、疑いを抱いてない信者。ルシエス、あなたほんとはそんなの無いってわかってて、この探索してない?」
アウローラが口をはさんだ。
「なにが言いたい?」
「旅のための旅じゃないの、これは」
ディーミディは火をいじりながら小さくなった。おれに味方するつもりはなく、様子見に徹するらしい。それにしてはにやりとした口元が気になるが。
「変な勘ぐりは止せ。それなら体を壊すほどの強行軍にゃしなかった。もっとのんびりやってたさ」
「じゃあ、信仰が見つかるまでの仮でもいいからグレシャ様を信心したら? ディーミディみたいに」
「いいのか、そんなこと言って。〝仮の信仰〟なんて君の考えじゃありえないんじゃないか」
「無信仰よりましです。幸いわたしは神官です。準がつきますが、ルシエスが信心するつもりなら教団に受け入れる資格があります。さあ、どうですか」
「どうですかって、アウローラ……」
ディーミディが吹き出した。我慢しきれなかったようだ。
「おい、許してやれ。一晩でなにもかも進めようったってそうはいかない。もう寝よう」
たき火は熾火になり、夕焼け色がアウローラとディーミディの顔を照らしている。その色の均質さを見、ディーミディは火の世話がうまいな、と関係ないことを考えた。




