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信心するなら強いのがいいから、最強の神を探し求めるおれの話をちょっと読んでけ  作者: naro_naro
第七章 アスペレーティス領――敗北。人と帝国人、および命の価値について

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 訓練場は壁だけで、天井はなかった。床も細かい砂が柔らかく敷き詰められていた。おれと相手にはおなじ服がわたされた。普通の布地だった。

「頭と首を意図的に攻撃してはいけません。急所もだめです。勝敗は簡単。一瞬でも気を失ったら負けです。判断はこちらの神官長が行いますが、そちらからも一名出してください」

 ディーミディが手を上げ、立派な装束の神官長の横に並んだ。

 おれは心配げなアウローラを横目で見ながら聞いた。

「闘いの範囲は?」

「この訓練場すべてです。では、よろしいですか」


 闘いの始まりに合図や礼はなかった。おれと相手が中央に出ると、すぐに蹴りをはなってきた。

 すねに当たったが、卑怯だとは思わなかった。闘いとはそういうものだ。

 おれはひじで返し、胸に当たったが効いてはいなかった。合わせて体を引かれたようだ。それが感覚強化の〝恩恵〟なのだろう。おれよりずっと良く見えてるんだ。

 相手の目は落ち着いていた。昨日説明してくれたときとおなじだった。孤児院にいたときに闘いを教えてくれた師範を思い出させた。

 さらに拳で腹を狙ったが、その腕を捕まれて投げ飛ばされてしまった。すぐに転がって立ち上がり、押さえ込みに来たのは避けられたが、こっちの息は荒いのに、向こうの目に変化はなかった。ただ、重ねて攻撃せず、一瞬待った。余裕を見せるつもりか。

 また蹴ってきた。防御した左上腕ごと胸に衝撃が伝わる。重い。

 そこから防御一方になってしまった。相手は蹴り中心で、回転の力を存分にぶつけてくる。腕の動きが遅れるようになってきた。


 目だ。目を見るんだ。


 わかった。おれは次に飛んできた足をつかむとひねった。背を向け、砂にまみれた相手にのしかかり、肺のあたりを掌底で叩いた後、息できないように肩の骨の間を強く押さえ込んだ。

 顔が赤くなっていく。その目が落ち着きを失った。

 そして、その向こうの、神に対する疑いが見えた。


 おれに一瞬の隙ができたのか、力不足だったのかはわからない。

 後でディーミディが教えてくれたのだが、おれは白目をむいたらしい。


 ひっくり返され形勢逆転し、押さえ込まれる立場になった。馬乗りになった相手は胸の、首元ぎりぎり下を狙い連打してきた。ふっと気が遠くなり、神官長とディーミディは同時に相手の勝ちを宣言した。


 なにがなんだかわからないうちに、おれは砂にまみれてのびていた。アウローラが泣きそうになりながらまじないを唱えてくれたので、その日の夕食時には回復していたが、いつもの食欲はでなかった。


 そうか。おれは負けたんだ。

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