五
犯罪者集団は初めてだが、第一印象として、一般の帝国人とそう変わるところはなかった。
会談場所として人里離れた山小屋が指定され、外を若いのが取り巻いていた。おれからすれば一人前の大人がこんな悪事に手を染めてるのが不審だった。
おれたちはひびのある粗末な机を挟んで座った。相手も三人だった。椅子が不満げに音を立てる。
「じゃあ、七面倒な挨拶は抜き。仕事の話だ。そっちの言い分に変わりねぇな?」
真ん中の、年上らしき男が口を開いた。額と目尻のしわほど歳を重ねていながら口調はなってない。あの純粋主義者の若者と違い、こいつはこの話し方で生きてきたんだろう。
「ありません。そちらは?」
おれとディーミディは両脇で黙っていた。これで連中からの圧をはね返せてるだろうか。
「ああ、ちょっとある。前金の割合を三割にしてくれ」
「一割の約束です。あとは引き渡しを確認してからでないと」
「信用できねぇのか? このおれを」
「ここは事前の取り決め通りにいきましょう。仲介してくださった親分衆の顔を潰すのはまずいのでは?」
そいつはにやっと笑い。横の者たちは腕に力を込めた。それぞれ正面のおれとディーミディから目をそらさない。なかなかできるようだ。そこまで鍛錬したのになんで詐欺集団なんかに居るんだろう。
「言うじゃねえか。二割五分」
「一割と三分」
「二割」
「一割と五分。ただし、前金支払日を在庫引き渡し五巡日前ではなく、二巡日前で」
「二巡日前は呑む。一割と七分」
「いいえ、一割五分、二巡日前」
黙った。じっと考えている。おれは身動きしないように気をつけた。この空気をかき乱してはいけない。しかし、なにかあってもすぐ反応できるように体のばねに力を蓄えた。この状況、どう転んでもおかしくない。
あちらもこっちの様子がわかったようで、ぐっとにらみつけてきた。筋肉の動きひとつ見逃すまいとしている。どこかの領の軍か警備隊くずれかもしれない。それならなおのこと犯罪なんかに手を染める境遇になったわけがわからなかった。
今日初めて会った相手の実力を評価したうえで、同情してる自分に気付いた。ここに、人の目を見、そらさずにいられる程なのに、道を外れてしまっている若者がいる。
ほんとうに、なんでなんだろう。
「よし、それでいい。ここに来て顔を合わせたんだ。認めてやる」
机越しに握手が行われた。




