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信心するなら強いのがいいから、最強の神を探し求めるおれの話をちょっと読んでけ  作者: naro_naro
第三章 アウストローリエン領――性別のある神。それと、ディーミディとの再会

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 マギソテラリス領の東と北東の隣の領地はボーニタス様が支配的な神だった。教会組織はマギソテラリス領のものとは別だが、おれにとって行く値打ちのある土地じゃない。

 となると、南東のアウストローリエン領しかない。おれは保存用に焼きしめた石のようにかたい麦饅頭と、水気のまったく感じられない干し肉を仕入れて旅を再開した。

 これも報告されてるんだろう。昨夜の試合の結果はもう街中に広まっており、おれはどこに行っても居心地悪い思いをした。昨日勝ったあの闘士はここらへんじゃ有名人だった。嫌がらせをされたわけじゃないが、言葉や態度の端々ににじむものがあった。


 マギソテラリス領は南東方向に細長い。公用街道をたどるとアウストローリエン領に入るのは明日の昼頃だろう。今度は旅程の計算をしっかりやった。今夜は野宿か、とため息をつく。馬だろうとなんだろうと騎乗する術は知らないし、路銀は節約したいので乗り物はなしだ。この二本の足で歩いて行くしかない。

 山道に入り、人の気配がなくなった頃、ぽつぽつと降り出した。おれは背負い袋から出したマントを頭からかぶった。ゆるゆると登る。足下が泥になってきたので道の端の草を踏みしめながら歩いたが、泥水は容赦なく靴の中に入り、一歩ごとにぐちゅぐちゅと不快な感触と音を立てた。

 これでは野宿は難しいが、道を歩くおれ一人ごときがどんなに困ろうとも日は天を進み、背後に沈もうとしていた。本来なら日のあるうちに峠を越え、下り坂になったところで休もうというつもりだったのだがやむを得ない。手元が見えるうちに、だ。


 道を外れ、脇の林に入って少しでも乾いた地面を探した。幸い、露出してる岩があった。濡れているが、泥の地面に寝転がるよりはいい。それに、木々が覆いかぶさって屋根になってるのでちょっとはましだ。おれは岩の前の地面に浅く穴を掘り、拾ってきた枝を細く裂いて置いた。濡れててもこうすると火が着きやすい。熱い湯だけでも飲めれば助かるし、わずかでも体を温めたい。何度が失敗したが、着火に成功し、そう簡単に消えないほどの勢いにできた。

 火の準備をしてる間に小鍋にためた雨水を沸かして湯を飲み、ふやかした麦饅頭と干し肉を食べると落ち着いた。雨も弱くなってきた。今夜中にやみそうだ。


 こんな状態で寝られるものか、目を閉じて体を休められればいい、と思っていたのだが、結局眠ってしまった。目を開けると雨はやみ、明るくなっていた。木々の間から見える空は曇っていたが、晴れに向かいそうな感じだった。

 道具を片付けた。火は消えてたが、ディーミディを思い出しながら入念に始末した。


 街道に出ると、雲間から日が差してきた。道は泥々なので昨日のように脇の草を踏んでいく。道標があり、峠を越え、下り坂になった。

 まだ人の気配はない。おれは口寂しくなってきたので、干し肉を小さく切り、しゃぶりながら歩いた。行儀悪いかなと思うが、神様以外だれも見てないし、おれには神はいない。

 はっとした。神がいないと行儀悪い行為をしてしまう。なら、道徳は神を拠り所としてるのか? そう、神が背後にない規範などあり得るのか? あったとしてもそれに従わせる力など存在しないじゃないか。

 無信仰は無法か。それに、道徳も規範もない帝国人は人間とは言えないんじゃないか。

 そうじゃない、と思いたい。だが、おれの道徳はグレシャ教会由来だ。いまは神がなくても、育った環境の影響はある。

 仮に、生まれたときからどの神の影響下にもない人間がいたとして、その者に道徳を持たせるにはどうしたらいいだろう? そもそもそいつに道徳は意味を持つのか? 力で形の上だけ従わせるのは容易だが、得心させるのは無理だろう。なんでそんな面倒な規則に添わなきゃならない、と聞かれたらなんと答えるべきか。


 おれは帝国人でいたい。なのに無信仰でいていいんだろうか。神をもたないのに人間のつもりでいていいんだろうか。

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