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信心するなら強いのがいいから、最強の神を探し求めるおれの話をちょっと読んでけ  作者: naro_naro
第二章 マギソテラリス領――半エルフのディーミディと連れになる

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 要は、ここのボーニタス教会は金持ち向けになったらしい。おれは教会の方に歩きながら考えた。

 変ではないし、悪でもない。教会にも経営はある。経済力を強化したり、権力との結びつきを深めたりして地盤を固めようという判断は不自然じゃない。ここの教会はそっちへ舵を切ったと言うだけだ。

 だけど、最後にもう一度だけ試合を頼んでみよう。それでだめならよそへ行けばいい。


 教会の前にはまた人だかりができていた。だれか貴顕が来るのだろう。貴族か豪商かはわからないが。

 おれは人混みをかいくぐり、脇の方から門番に近づいた。

「なんだ? またお前か」 あの門番だった。いらだったのか、かなり大きい声で、周りの者がみな注目するほどだった。

「ええ、お話だけでもお願いします」

「だめだ、帰……」 口を閉じ、あわてて一礼した。

「どうした? この騒ぎは。ああ、そいつが今朝お前の言っていた旅人だな。なんだ、一人じゃないか」

「連れとは別れました。お願いです。話を聞いてください」 おれはなにか言おうとした門番を遮り、言葉をかぶせた。

 神官はおれを頭からつま先まで見ると、手振りで招き入れた。門番は不満げに扉脇に下がった。


「さて、話とは? 手短に頼むよ。間もなく忙しくなるので」

 通されたのは家来用の待機室で、椅子すらなかった。貴族に仕えると立ったまま待たされるか、床に腰を下ろすのだろう。


 おれは旅の経緯を短くまとめて話した。こういう報告に類することは孤児院での教育が役に立った。要点を時系列順にまとめるのは得意だ。ただ、話がややこしくなるのは嫌なので、信仰についての研究調査兼腕試しの旅ということにし、神をもたず、最強神を探しているのはぼかした。嘘は気がとがめるが、ここの様子からして正直も程々にしたほうがいいと考えたからだった。


 聞きながら、神官は何度も首をひねった。

「つまり、信仰について調べつつ、ついでに腕試しの試合を行いたい、と」 神官は顎に手をやった。「はっきり言って、門番が正しかったようだな。いますぐここから出て行けと言いたいところだが……」 顎の手を腰にやった。「……そうか、オリエン様の信者に勝ったのか。ちょうどいい。実はこれからマギソ・テラリス様ご本人がいらっしゃるのだ。その晩餐会の退屈しのぎに試合もいいかも知れん。おまえ――ルシエスと言ったな――、試合を行ってもいいが、そのように貴顕たちの見物があってもかまわないか?」

 否やはなかった。おれはうなずいた。

「よし、ではそれまで部屋を用意しよう。これからお迎えでごちゃごちゃするから、呼び出すまで出るな。食事は届ける」

 さっきの待機室にくらべたらましな部屋に通された。少人数で話ができるくらいの家具が備え付けられている。おれは窓の鎧戸をあけ、固い椅子に座った。この都市の造りとおなじく、本で読んだ騒乱時代を思わせる鎧戸だった。分厚い木で、蝶番も頑丈そうだ。斧で二、三回殴ったくらいでは壊れないだろう。


 日が傾き始めたころ、騒ぎが聞こえてきた。ではいらっしゃったのか。それが落ち着くと、飲み物と軽食が運ばれてきた。なんと、持ってきたのはあの神官だった。


「食べながら聞いてくれ。段取りができた。すぐ呼び出しがかかる。で、おまえの得物は?」

 おれは腰の短剣を叩いた。

「そうか。なら模擬刀を用意する。こっちも短剣遣いだが、まじないもよくやる。おまえ、ほんとうに神がないのか? 徒手空拳で闘うつもりか」

「そうです。おれ自身の最強神を見つけるまで、どんな信仰も持ちません」 この神官はうかつだが、おれはそれに気付かなかった風を装って話を続けた。〝最強神〟や、〝信仰を持たない〟という言葉にも特に反応はなく、すでに聞いたことのような反応だった。

「そうか、ならちょっと聞くが、この教会をどう思う?」

「どう思う、とは?」

「今朝からの様子で察しがついてるだろ? ここは教会なのに世俗の力を求めてる。それがボーニタス様の御心にかなうのかな」

「そんなこと、おれに話していいんですか」

 神官は苦笑した。

「おまえだからだ。信仰を持たぬ風まかせだと聞いたから言えるんだ」

 おれは食べ終わった皿を重ね、神官の顔を見た。そろそろこっちは気付いてるぞとはっきりさせよう。

「じゃあ、門に出てきてくれたのは偶然じゃないんですね」

 神官は一瞬驚いたが、自分が言ってしまったことを悟り、うなずいた。

「おまえらみたいな旅人の動きは逐一耳に入る。騒乱時代、ここは諜報と裏切りの街だった。まだその時の習慣が抜けないんだ。だれもがだれもの話を聞いて、記録して、報告する。そういう忠誠の表し方をしてきたからな」

「おれと半エルフの会話も、別れた経緯も知ってるんだ」

 肩をすくめた。否定はしなかった。

「じゃあ、さっきの問いの答えですが、御心にかなうもなにも、神は信仰の心を食べるだけでしょ? 神官や信者がなにをしようとも、どっちに舵を切ろうとも、たくさん食べさせてくれる分には文句ないんじゃないですか。そもそも、あなたの言う〝ボーニタス様の御心〟ってなんですか? 勝手にこしらえた御心じゃないんですか」

 眉間にしわが寄り、口がぎゅっと結ばれた。

「なかなか厳しいことを言う。おまえ、ただの風まかせじゃないな」

「ただの帝国人ですよ」


 扉の外から呼び出す声がした。

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