五
「だめだ、取り次ぎはできない」 番人はなだめてもすかしても首を縦に振らない。「紹介状もなしに何しに来たんだ?」
「紹介状? ここはボーニタス教会だろ? 商工会とかじゃないよな。じゃ、ここでもいい。ちょっとだけでも神官と話がしたい」 おれはいらだちを言葉に乗せないようにしたが、自分でも成功してるとは思えなかった。
「いい加減にしろ。おまえたちのような風まかせの放浪者と口をきく神官などいない」
「そういうんじゃない。信者になるために来た」 ディーミディはおれより感情を抑えるのが上手だった。
番人は文字通りディーミディを見下した。
「嘘をつくな。エルフめ。デウセルフ様だろ? おまえらの神は」
「帝国人との半エルフだ。人間としての信心はできる」
「半分だけ? からかってるのか、おまえら。もういい、帰れ」 剣の柄頭を叩き、がちゃがちゃと脅しの音を立てた。
野次馬の何人かがこっちを見ている。おれはディーミディの肩を叩き、首を振った。
「どうする?」
いったんそこを離れ、店や宿が集まってる区画の広場に行くと、真ん中に生えてる木の根元に腰を下ろした。ここは混雑はしてないが、人通りが途絶えてしまうほど寂しくはない場所だった。目立たないように話をするにはもってこいだ。
「どうするって、あたしゃあきらめるよ。ここ以外にもボーニタス教会はあるし、別にボーニタス様だけが神様じゃない。どっちにせよ粘るだけ時間の無駄だ。とっとと移動するつもりだけど、あんたは?」
「よそへ行くってのは賛成だけど、あんな風に断られた理由は知っときたい。でないとほかの土地でもおなじ目に会いかねない。それと、訳を知れば対処法わかるかも」
「あたしの経験じゃ、あんな応対する奴らを調べたって時間を捨てるだけだよ」
「わかった。なら、ここでお別れだ。ちょっとの間だったけど話し相手ができて楽しかった。じゃ」
手を上げて、うしろを向いた。広場を出るとき振り返ると、もうディーミディはいなかった。




