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嫌われ厄神と嫌われ神子  作者: ぽこ
2章
13/15

神頼み※

死に関する残虐なシーンがありますのでご注意ください。

『豊穣の神よ   そちらに    …を送ります。どうか皆が飢えぬように  …作物を… たまへ…』



突然、川の上流にあるアガシャ集落の方角から、太鼓の音とともに祈りが聞こえてきた。


声のする方へと耳を澄ますが、やはり人間達の祈りの声が聞こえる。



「チッ」



朱殷は嫌な胸騒ぎがおさまらず、森の中をただひたすら一直線に飛び、アガシャ集落を目指し始めた。



木々を抜けるたびに枝にぶつかる鈍い音と枝が折れる音が続くが、そんなことどうでもよかった。

四肢から血が流れ、ポタポタと大地に零れ落ちる。

神の血は厄神とて神の血。血の落ちた場所からは淡い光が放たれる。それは道導べのようにアガシャ集落へと続いていった。



(疾く、疾くーーーー)






◆◆◆





朱殷が東のアガシャ集落につくと、石作りの簡易な祭壇を20人ほどの老若男女が囲んでいた。

誰もがやつれており、災厄が続いた苦難が容易に見て取れた。

だが村人達のその表情はどこか明るく、嬉しそうに祈りを捧げている。



祭壇に供物はない。

小さな盛り土の上に、魔除けのシイの枝が一本植えられてだけ。




(なんだこれは)


(神頼みにしては祭壇に供えがない)


(一体何をしている)





村人たちは各々手を合わせて祈り続ける。



『豊穣の神よ、()()()()()()()()()()()

 どうか皆が飢えぬよう豊穣をもたらし給え』



朱殷は我が耳を疑った。

 


「なにを送った」

「「「ひっっ!?」」」



突然現れた赤神の厄神の登場に、その場にいた全員が悲鳴をあげて固まった。


その人外の美貌と赤髪は、厄神の証し。

なりふり構わず飛んだせいで木々にぶつかった四肢から血が流れ、髪や瞳以外も赤黒く染まっていた。


その眼は瞬きひとつせず村民達を凝視し、その答えを待っている。



「「「厄神様だ…!!」」」



若き厄神の異様な風貌を見た人々は狼狽えた。

朱殷は慣れていたはずの人々のその忌避ぶりに、何故か胸糞悪くなる。



「なにを送ったかと聞いている」

「か、か、神子です!」

「…神子?」

「先程神の国へ送らせていただきましたのでなにとぞ我が村をお救」



ドスッ



そう言い切らぬ前に、朱殷は右耳の黒曜石の矢尻を引きちぎり、男へ向かって一投する。

その矢は首長の右眼を突くと、そのまま頭蓋骨を抜けて地面に突き刺さった。

 


「「「ひぃぃぃ!!」」」



その男が死んだとわかると、村民が我先にと逃げ惑い始める。


朱殷は左の矢尻も同じようにちぎると、近くにいた男に標準を合わせ、再び尋ねた。

両の耳朶からはボダボタと血が流れるが、そんなことは構やしない。



「神子とは誰のことだ」

「い、い、忌地(いみち)の娘です!」

「忌地?」

「祭壇のある森です!」



腰が抜けて立てなくなった痩せた男はシイの枝が刺さっている小さな盛り土を指差すと、顔面蒼白になりながらもへりくだった笑いを浮かべながら答えた。



「見目の良い神子なので神様も喜ん」



ドスッ


 

朱殷は男の喉仏を黒曜石の矢尻で貫いた。



「ヒッッッ!!!」



視界の隅に、四つ這いになりながら逃惑う男がいた。その首に黒曜石と翡翠で出来た首飾りが飾られていたのを朱殷は見逃さなかった。



「待て」



男の腱を踏み抜くと、その痛みに大仰な叫び声をあげるが、朱殷は構わず髪を掴み上げる。



「お前がなぜそれを着けている」



男の首に見慣れたあるそれは()()()()()()()()に違いなかった。



「こ、これは…」

「返せ」

「ひぃぃぃ!!!」



ブチブチッ



朱殷は力任せに首飾りを引きちぎると、それは音を立てて弾け飛んだ。

黒曜石や翡翠の珠は四方八方に飛び散り、もう首飾りの体を成していない。朱殷の手に残ったのは頂にあった黒曜石の矢尻のみと切れた革紐のみ。



グチャッ



それでも這いずり逃げようとする男の頭を、朱殷は力の限りに踏み抜いた。

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