第58話 配役
※9/2中に前話をご覧になった方へ
最後の部分が抜けてしまっていたのでこの話との繋がりがおかしくなっていました。
大変申し訳ありませんが再度お目通しいただければ幸いです。
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そうして2つ目の名前が決まったシクロエルを交えて今後の活動について討議していく。
まず、タダヒトやリュウトの現在の立ち位置、評価、人脈などを共有しそこに不自然がないようにロエルを迎え入れなくてはいけない。
それがタダヒトを悩ませていた。
「どうしたらいいかな…」
「わt、オレの時みたいに冒険者奴隷にしちゃえば?」
「リュウトは冒険者奴隷だったな。なら私もそうすればいいのでは?」
今後のことを考えロエルに慣れてもらうため、唯人はタダヒトとして話し、リュートはリュウトに変化して話していた。
リュートはわざわざ茂みに隠れて服を脱ぎリュウトの姿になったにもかかわらず服を着ずに戻ってきてそれを見たロエルが赤面するなどといったハプニングもあったが、それはともかくとしてリュウトの姿もその事情もロエルは受け入れてくれたようだった。
タダヒトとリュウトのお互いに対する口調だが、当初のタダヒトとリュウトは、多少は裕福な家から出てきたと思われているタダヒトは慇懃に、冒険者奴隷であることからリュウトは遠慮した物言いで話していたものの、いつまでもそれもおかしいということでタダヒトは徐々に口調を崩していって、リュウトは本来のリュウトの口調に寄せていって今の形に収まっていた――が、タダヒトの口調は他の人たちに対しては相変わらずである――。
そしてロエルは今のところシクロエルと変わらない口調で話している。
「それはリュウトのギルドカードの再発行をごまかすための副産物だったからね…」
「そっか、そうだったな」
あの時はリュウトの姿の持ち主がマキシたちやヴァイオラに知られていたため、記憶喪失→普通にカードを再発行されると齟齬が出るので小細工をしてカード再発行を妨害→なし崩し的に冒険者奴隷に、という流れをとったため少々ややこしいことになっていたのだ。
「それなら普通にギルドに登録してパーティーを組んだらいいのでは?」
ロエルが当然の意見を口にするがタダヒトは難色を示す。
「そうするとマキシさんが、それにラヴィさんもなにか言ってきそうな気がして…」
「それ言ったらミリアさんやキースさんもだろ。ミリアさんはタダヒトが女連れて帰ってきたらキーキー騒ぐだろうし、キースさんもこんな美人ほっとくはずねーだろ」
ミリアのことについては若干とげのある言い方をしながらもリュウトが補足する。
「それもそうだね。まあキースさんは大丈夫としてミリアさんは機嫌を直すの大変そうだ。ソフィーさんに宥めてもらうしかないかな」
日ごろからタダヒトたちを気にかけ声をかけてくれるパーティーの面々を思い出しタダヒトとリュウトは苦笑する。
「例の面倒見のいい冒険者か…聞いた話だけだが経緯を聞くと不義理すぎて逃げ出したくなるが…」
もちろん彼らのこともロエルに共有しているのでロエルも共感する。
「ええ、1人でできるところまでやりたい、みたいなことを言ってラヴィさんを押し付けてパーティー入りを断ったにもかかわらず、すぐにリュウトを連れて帰って冒険者奴隷にして2人で活動し始めてしまっているからね…。仮にワイルド・ストームの人たちに納得してもらえたとしても、また記憶喪失の人物を連れてきて冒険者奴隷にして~なんてことになったらギルドにも痛くもない…こともない腹を探られることになりかねないしね」
改めて口にするとなかなかの不義理だ。
それでも目的達成のためなら飲み込むつもりのタダヒトだが今はその時ではないのは間違いない。
「では私がタダヒトの古くからの知り合い、というのはどうだ?私はエルフだしそれを絶対隠すわけではないんだから…そうだな、例えばタダヒトの家に3代とか4代使えているメイドとか侍女で家を出た唯人が心配で追ってきたとかは?」
ロエルがそんなとんでもないことを言い出す。
エルフのメイドや侍女が家を出た子息に付いて行って冒険者をする?
そんなこと――
「さすがにメイドや侍女を冒険者として連れまわすのは…別によくあるかな?」
――あったな。と唯人としての経験が告げる。
「ちょっと!しっかりしてください!じゃない、しっかりしろ!そんなのこの王都じゃ見たことねーぞ!」
「そうかな?他の世界では結構普通にあったし――」
もちろん資料にもあった。もはやテンプレと言っていいほどに。
「うん、それはいったん置いておこう」
せっかくの回顧をリュウトに中断されたタダヒトはリュウトに問う。
「でもちょっと冒険したいんであろう貴族の令息や令嬢がお忍びでメイドや執事と出かけていたのは見たことあるでしょう?」
「それだと貴族だと疑われたりして余計に面倒なことになるだろーが!」
「はい、正解。多少裕福な家の出っていうのは間違いないと思われてるけど、貴族となると話は別になるからね。なのでこの話は一旦保留で」
リュウトが気付くべきところに気付いてくれて満足するタダヒト。この世界の龍族にも階級制度があるらしいが強い≒偉いが基本の様で人族の貴族の面倒くささを伝えるのに苦労したものだ。
「う~ん、ダメか…」
「でも方向性は良いと思うんだよね。例えば…ロエルって何が得意?」
タダヒトからの思わぬ問いに頭をひねりつつ応えるロエル。
「得意、と言われても…数百年やってないものもあるから今できるかは…。とりあえず魔法、は得意だと思う。後はその延長だが身体強化しての膂力は強い方だ…エルフ基準だが。弓もまあ使えるな。後は剣とか格闘術みたいなのは力任せにやるだけでどうにかなっていたからまるでだめだ。他には…冒険者は薬草や鉱物を採ったりもするんだろう?そういう植物や鉱物の知識はある方だ、数百年前のだが…。後はまだ部屋に光が差していたころは刺繍とかもしていたが…そういうのは今は良いんだよな?」
「ええ、でもまたそういった趣味や芸事の話も聞かせてほしいな」
タダヒトは単純な興味もありつつも何か役に立つ技術があればいいな、などと打算的なことも考えながらロエルに応える。
「いいねぇ。オレはそういうちまちましたのはやったことねーけど見るのは好きだ」
「あ、ああ、人様に見せられるような腕かはわからないが、また今度、な」
女子2人(?)は仲良さげにキャッキャしているがそれをはたから見ると…。
見なかったことにしたタダヒトは気を取り直して提案する。
「それで今聞いた得意なことの話なんだけど、僕の、タダヒトの『師匠』ってことにしたらどうだろう?」
「「師匠!?」」
想像していない言葉が出てきて声をそろえる2人。
「そう、普段は人里離れた森の奥の小屋に一人で住んでいて、それをたまたま見つけた僕がロエルと出会って冒険者に必要な技能を教えてもらったってことにしたらどうかな?」
「はは~ん、人里離れた~ってところは事実だしいいかもな」
リュウトは納得の表情を見せ、
「それは構わないが教えられることなんてそんなにないと思うが…」
ロエルは肯定的だが自分が『師匠』という役割ができるか不安そうに答える。
「大丈夫。外から見たらそう見える様にして実際は僕がロエルにいろいろ教えることにすればいいよ。僕はギャザラー志望で実績もそっちに偏ってるから剣術とかの基礎をやっていても不自然っていうことはないからね。リュウトはそれに付き合って基礎を復習していることにすればいい。そうすれば『師匠』って言うことに説得力を持たせつつロエルのできることが増える。ここで出会った理由は修行途中で家を出た僕を――逃げたと思って――追いかけてきた、とかでいいんじゃないかな?」
タダヒトの補足を受け納得したロエル。
「なるほど、修行途中のタダヒトを――心配になって――追いかけてきた、か。うん、それはいいな。そうしよう」
「う~ん?今なんか認識にずれがあったような…でも2人がそれでいいならいいんじゃねーか?」
そして違和を感じつつも2人が納得したのでスルーするリュウト。
「じゃあこれで行こう。問題があれば都度修正してどうにもならなくなったらこの国はオルトリーゼや勇者に任せて他の国に逃げて最初から3人で再スタートって手もあるし、あんまり硬くならずに、ね」
「おう!」
「ああ」
こうしてロエルも交えた唯人たちの活動のプロットが出来上がったのであった。
一段落したところで空気が弛緩し和やかな雰囲気になろうとしていた。
が、
「さて、早速だが決めないといけないことがある」
タダヒト、いや、唯人はそう口にした。
「「?」」
2人はまたお茶でも飲もう、なんていう雰囲気を醸し出していたが唯人が纏う雰囲気は弛緩した空気を引き締めるものであった。
「今、こちらに向かってくる集団がいる。状況から察するに『呪いのようなもの』が解除されたのを感知したエルフが調査に向かって来てるんだろう」
ロエルがその言葉に目を見開き驚きの表情を浮かべる。
「と言ってもまだここに来るまでには2時間くらいかかりそうだけどな。『決めないといけないことがある』って言うのは――
――逃げるか、
それとも…これは話し合いをするって言うのも含めてだが――
――迎え撃つか、
どちらにするか、だ」




