第57話 もう一つの名
※9/2の内にこの話を読んだ方へ
抜けていた箇所があったので修正しました
今更ですがコロナにかかったので、数日間このくらいの短い更新で行きたいと思います。
調子が悪ければ更新休むかもしれません。ご承知おきください。
「さて」
そう言った唯人は脱線した話を戻すべくパンっと手を打つ。
「さっきの目的の話があったがあまり目立った行動をしていると噂ならまだしも王城に招かれる、なんてことになりかねない」
「そんな物語みたいなことがあるのか?」
「あ、それわたしも似たようなこと聞きました。でもあったみたいなんですよね~。他の世界の話ですけど」
訝し気な視線を唯人に向けるシクロエルにリュートは同調しつつも補足を入れる。
「この国では女王であるオルトリーゼが協力者だからよほどのことがなければ大丈夫だろうが使えそうなやつを取り込むのは有力者の常だからな。それに国外で活動をすることになれば推して知るべし、と言ったところだ」
「そうは言うが私みたいのを連れて行ったら目立つのでは?それとリュートは人化とは別にリュウトという人物に化けているとか…。私はそんなことできないぞ?」
「エルフ自体はいないわけじゃないしフードをかぶっている人たちも多い。フードをとらなきゃならない場面もあるだろうがちょっと目を引くくらい…いや、あの髪色は目立つか…」
今は濡れ羽色に染まっているシクロエルの髪を見つつ先程の透き通るような純白の髪を思い出す。
あれは見る者を惹きつけ、場合によっては手に入れたいと思う者もいることだろう。
「ではこの色のままにしておくというのはどうだ?」
シクロエルはそう言いながら自身の髪をひとふさ掴み唯人の前に掲げるとその髪は何の抵抗もないようにさらさらと滑り落ちた。
「それはそれで良からぬものを引き寄せそうだが黒髪は俺を含めて多くいたし白よりは目立たないか…だが良いのか?ようやく元の髪色に戻ったんだろう?」
「それなら問題ない。さっき言ったようにどちらも私の色、だからな。で、だな」
そうしてシクロエルはにやりと笑うと
「普段は唯人はタダヒト、リュートはリュウトとして活動しているんだろう?じゃあ私にももう一つの名が必要じゃないかな?」
唯人に再びの名付けを要求した。
その要求にあからさまに嫌な顔をした唯人は
「いや、リュートと違って別人になるわけじゃないんだから無理に名前を変える必要ないだろ?リュートなんて最初は嫌がってたし、なぁ?」
そう言ってリュートを見やる。
「そうでしたけどご主人様と同じように名前を変えてるって思ったらそれもいいかなって」
リュートはやや気まずそうにそう言うが、「でも…」と唯人に迫ると
「せっかくですしシクロエルも同じようにしましょう?ご主人様も区別は大事みたいなこと言ってたじゃないですか。リュートと呼ぶときはリュートの、リュウトと呼ぶときはリュウトの振る舞いをしろ~みたいな」
そう言ってシクロエルのもう一つの名付けについて賛成の意を示した。
「そうか、そうだな…。じゃあリュートと同じように名前と髪色を使い分けて活動する、ということでいいか」
「ああ、そうしよう。それで?次はどんな名をつけてくれるのかな?」
そう言ってシクロエルはニコニコと、若干ニヤニヤとも見えるような顔で唯人に迫る。
が、
「じゃあ『ロエル』で」
しかし今回は非常にあっさりと2つ目の名が決められたのであった。
「えっ!?」
「早っ!?」
先程の名付けと打って変わってあっさりと名前を決めた唯人に驚くシクロエルとリュート。
「そりゃあもう名前が決まってるんだから変に悩んだりしない」
「あ~、そういえば私の時も流れでそんな感じになってたような…」
「それにしてもあっさり決めたんだな。…ああ、不満があるってわけじゃないんだ」
「リュートと一緒で名前に込められた意味は変わらないからな。シロとクロのエルフでロエル、だ」
「なるほどな。ロエル、か。いいね、こっちも気に入った」
その解説を聞き『なるほど、さっきとおんなじだ』と笑うシクロエル。
「まあほとんど愛称のようなものだけどな」
シクロエルの笑みを受けて誤魔化すように目をそらしそう言う唯人。
だがシクロエルは唯人を逃がさず唯人の目を見つめて
「それがいいんだ。今まで名前がなかったから当然愛称なんてものもなかったからな。素直にうれしいよ」
と再び微笑んだ。




