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「異」世界「常」連の「日常」奪還奮闘記  作者: ちょい悪代官
第三章 迷いの森と呪われしエルフ

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第48話 内緒話

~?~


『彼女』に引きずられるように『彼』が木々の向こうに去って行って一人になった私は所在なく椅子に座って彼らを待つしかなかった。


『彼』が「大丈夫だから心配しないでくれ」と軽い調子で小突き、『彼女』が「大丈夫なのは本当」と言うテーブルに恐る恐る手を伸ばして触れてみる。


これが魔力だといわれて信じる者がどれだけいるだろうか。

私自身先程の光景を見ていなければどこぞの巨大な宝石を切り出して作ったと言われた方がまだ信じられるという代物だ。


何せ魔力から作られたというのに一切魔力が感じられない――まあ感じられたところでどこぞの巨大な『魔石』を切り出して作ったのかと思うだけだが――。

それほど強固に魔力を物質化しているのだろう。


そう納得すると何時爆ぜるともわからない、という恐怖は和らぎ興味が勝ってくる。


自分で言うのもなんだが今まで会った人物の中で自分より魔力が多いと思えたのは『彼』以外に存在しなかった。

父も母も、…私を呪い子と蔑んだ里の人たちも、族長たちも、そしてハイエルフのあの方も…。その誰よりも多い、と比較することさえ馬鹿らしいほどに隔絶とした差があったのは確かだ。


まぁ、私は今日の今日までエルフにしか合ったことがなかったからもしかしたらもっと魔力の多い種族が居たりするのかもしれないが、彼ら(エルフたち)が言うように『エルフが最も魔力の多い種族』というのが正しいのであれば私は『異常』と言える程の存在であろう。


それ以前にあの『呪い』がそもそも『異常』でありこの膨大な魔力もその影響だろう――




――そう思っていたのだが…。




改めて思い返しても先ほどまでの私でも既に『異常』と言える程の魔力を持っていた。

その私でもこのイスやテーブルはおろか爪の先ほどの大きさのものを作れたかどうか、そして数秒持てばいい方だと確信できる。


だが今はどうだろう。


流石にイスやテーブルは無理だろうがもっと小さいもの、例えば――


そう考え私は魔力を練り始める。


『彼』の様に一瞬であれほどの魔力を迸らせることはできないが…ん?できるか?…一旦止めておこう…。そう、無理せずじっくりと、それでもかつてより早く正確に魔力を放出していく。


そうしていくうちに気付く。

先ほどの魔法の暴走は『呪い』のせいだったのでは、と。


これほど正確に操作できるものが突然の来客(・・・・・)で動揺したとしても制御を離れるとは思えない。

しかもそれは今よりもずっと少ない魔力量だったのに、だ。


そう確信して魔力を操作していると先程との違いが分かってくる。

あれは私の魔力を使って呪いの効力を発揮していたのだ、と。


まだ確定ではないが『彼』によって『呪い』は解かれたと思っていいだろう。

少なくとも軽減はされているはずだ。


そして私に起きた変化。


外見的なものはいったん置いておいて魔力の量、コントロールの精度いずれも以前とは比較にならない程に向上していると実感できる。


…いや、正確には向上ではなく元に戻ったのだろうが。


実際そんなことを考えながらの操作でも私の魔力は少しずつ実体化していき霧状から液状へ、そして粘土の様に程よい硬度を持ち私の思い描く形へと変貌していく。


(『呪い』を解いてくれたこともそうだがこの発想をくれたことにも感謝しなくては…)


完成したものを見つめながらそう心の中で思う私の耳に『彼女』と『彼』の声が聞こえてくる。


(もう!いきなりあんなの見せてどーするんですか!絶対ご主人様が言われたくない『アレ』な存在だと思われましたよ!)


(いやいやいやいや、彼女ならできるって。だから俺は『異常』ではない。普通だ)


…うん、できた。できてしまった。それはそれとして『彼』が『異常』であることは間違いない。


(わざわざ言わなかったのに自分で言っちゃうんですね…じゃなくて、彼女にできたところで普通じゃないです。少なくともわたしには無理ですよっ!)


やはり無理か。龍族も魔力は高い方だと聞くが…。


(大丈夫だ、お前もできる様にしてやるから問題ない)


…できる様にできるのか…。まぁ私もできる様にされてしまったと言えるが…。


(あ~~っ!知ってますよ!それご主人様の世界での『大丈夫じゃないフラグ』ってやつでしょ!?)


(おっ、そうだったな!余計な文言を挟んでしまうとは失敗だったな。まあ大丈夫じゃないのは言った側だから心配するな)


ん…この辺りはよくわからないが…ことわざや慣用句のようなものか。それにしても『ご主人様の世界』とは?


(…絶対大丈夫じゃないのはわたし側な気がするんですけど…。じゃなくて!あんなイスとかテーブル作るくらいなら『匠』から出したらいいじゃないですか!イスとテーブルくらい入ってるんでしょ!?)


(あ~、探すのがめんd…じゃなくていきなり『アレ』をしたら驚かれるだろ?)


(空間を割って物を取り出すのも大概ですが魔力を物質化する方が驚かせますよ!希少ですけどアイテムボックスくらいこの世界にもあるんですからそういう態で出すとか方法あったでしょ!しかも彼女エルフでしょ?魔力に長けた種族にあれは劇薬過ぎですよ!)


(あ~、劇薬くらいならたいしたことないだろ。たぶん毒にもなってないし大丈夫大丈夫)


今度は『この世界』、か…。いろいろと事情がありそうだがそれは置いておいて、魔力の物質化など里の者たちが見たら卒倒するだろう。劇薬どころか毒薬を通り越して見ただけで発狂する邪神のようなものだ。


それと『匠』とはアイテムボックスのようなものなのか。実際に見たことはないがアイテムボックスも品質がいろいろとあると聞くが『空間を割る』?


(あ~もう!わかりました!出しちゃったものはしょうがないんで次から気を付けましょう!)


(そうそう、あんまり彼女を待たせるのも悪いしさっさと戻ろう)


(あと、落ち着いたら『匠』の中を整理整頓しておきましょうね!)


(あ~、うん、そのうちな)


(あ、なあなあにしてごまかす気ですね!?む~、何なら今すぐやりたいところですがぁ、せっかくぅ?ご主人様がぁ?彼女を驚かせないためにぃ?気を遣ってぇ?『匠』を使わなかったんでぇ?彼女に知られない方が良いかもですしぃ?後でじっくりやりましょうかぁ?)


(お前、だんだん遠慮がなくなってきてるな…)


(その方がお好きでしょう?)


(まぁ、否定はしないが…、俺の記憶から学習するのは良いが風香ばっかり参考にするのは止めておけよ)


(大丈夫です。まんべんなく学習してますんで!では、彼女に心配をかける前に戻りましょう!)


(そうだな、だがそんなお前に残念なお知らせがある)


(?何かありましたか?)


(今の俺たちの会話。彼女に筒抜けだぞ)


(!!!)


「!!!」


盗み聞きするつもりはなかったがもともと感度の良いエルフの聴力に加え、数百年に及び外の状況を視覚以外で知覚していた恩恵で私の耳は彼らの内緒話を鮮明に拾ってしまっていた。

正直自分に非はないと思うが指摘されると罪悪感があるものである。


(ちょっと!なんで言ってくれないんですか?)


(いや、内緒話を聞いてるって指摘されたら嫌だろ…)


実際その通りである。


(だからって、…あ~っ!だから「あ~…」とか妙に歯切れが悪い返答だったんですね!)


(その気配りをもう少し早く発揮して欲しかったな)


(そんなのわかりませんよ!どーするんですか?ご主人様が異世界から来たこととか『匠』のこととかいろいろ喋っちゃいましたよ!)


…異世界から、来た?


(全部お前が、な)


(…えっ?)


(ついでに異世界から来たことは予想はできてもまだセーフな範囲だったのに今お前がぶっちゃけたことで確定した)


(………あ~~~~~~っ!!!…あっでもでも、ご主人様も『俺の記憶から学習する』とか言ってました~!)


(もうここまで言ったら隠すより打ち明けて協力してもらった方が良いだろ。長命種に会うっていう目的にも合致するし)


(…それもそうですね!では気を取り直して彼女に話を聞きましょう!)


(…というわけだ。先程言った通り質問には答えるからそのあとでこちらの話も聞いてもらえないか?)


姿が見えない状態で会話をするとは奇妙な感覚だが、彼の真摯な気持ちは伝わってくるのが不思議なものだ。


「もちろん、構わない」


いまだ姿の見えない『彼』に返事をすると先程試しに作った『魔力でできたティーセット』をもう2組作りながら彼らが戻るのを待つのであった。

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