第45話 呪われし存在 2
~?~
「コ こ カ ら タ ち サ れ」
望外に無様な声を上げてしまった私であったがその意図は相手にも伝わったようで、その2人、とりわけ龍人と思しき一方は私に対して警戒の色をその顔に浮かべていた。
だがもう一方、純人族と思しき男は無警戒に私へと向かい歩みを進めていた。
それに対し龍族と思しき少女は
「危険です!お下がりください!!」
などと警告を発していたが男のほうはどこ吹く風。全く気にせず私へと向かい進み続ける。
私に触れればこの身に宿る呪いが相手へと降りかかる。エルフ族の族長から聞いたその話を反芻しながら私へと進み続ける男へと視線をやる。
この男がどのようなものかは知らないが連れ添う龍族の女性が身を案じることから彼女にとって大切な存在なのだろう。そんな者にこの身を蝕む呪いを移すわけにはいかない。
そんな思いを込め私は彼へと警告を発する。
「ワたシに触レれバ、そノ身ハ呪イに蝕マれルでアろウ。感じルでアろウ?こノ禍々シい力ヲ…。こノ力はあナたノ身体ヲ犯シ、人トは呼ベぬモのニ変エ、死シてナおソの身ヲ捕ラえ放サず、苦痛ヲ与エ続ケるダろウ」
それは以前エルフの族長に聞いた私にかけられた呪いの断片であった。
実際私に触れたものなどいないので呪いが移るなどの話はどこまで本当かはわからないが、私が放っている禍々しい気配はそれを事実だと信じさせる説得力があり、実際に他の者はそれを信じ、そういう対応をしてきた。
だがその男は歩むのをやめない。
私は困った。
どんなに脅しの言葉を口にしても男は構わず近寄ってくる。
呪いを移すなど論外だがそれを防ぐために攻撃して殺してしまっては本末転倒だ。
自分で言うのもなんだが私は強い。
里のエルフの族長たち全員と戦っても問題なく、いや、――族長レベルの者を見るも無残な肉片に変えてしまうという点で――問題はあるが勝てるだろう。
だが望んでそんなことはしないし、だからこそこんなところで自然消滅を待つかのような暮らし――と言って良いのかは甚だ疑問だが――をしているのだ。
そんなことを考えている間にも男は一歩また一歩と近付いてきている。
――仕方ない。
少し脅かしてお引き取り願うことにしよう。
私は体に宿る魔力を風に変換し男に向かって放つ。
…いや、放とうとしたというのが正確だろう。
何年かもわからぬ間蓄えられた私の魔力は常に出口を求めて蠢いており、とうとう現れた出口に向け殺到したのだった。
そうして私の制御を離れた魔力は吐き出されるままに私の望む以上の威力をもって男に向かって吐き出された。
「アっ」
詠唱も何もなく私の口可出たのは望外の事態への戸惑いの声のみ。
そんな情けない声とともに放たれたのにもかかわらず、人1人殺害するには過剰な暴力が無防備に歩み寄る男に襲い掛かる。
―――逃げろ!
その叫びは弱り切った声帯から放たれることはなかった。
男は私の魔法を受けたにもかかわらず、それを意に介さないまま私の目の前にまで近寄っていた。
――否
近寄ったなどというには生ぬるい程の唐突さでありながら元からそこにいたかのような自然さで男はそこに――存在していた――
先ほどは男に対し『逃げろ』と願ったが今では私が逃げ出したいと思うほどになっていた。
男は混乱した頭で次の行動が起こせずにフリーズしている私の手を取る。
―――触ってはダメだ!!
あまりにも無造作に私に触れた男にすでに手遅れではあるが制止の言葉を口にしようとする。
――が、その代わりに私の口から放たれたのは
「エっ!?キぇアぇエぁアぇエぁアーーー!!!!」
というバンシーの慟哭のような叫びであった。
とうとう1年以上空いてしまいました…。
待ってくださっている方がいるかわかりませんが投稿は続けていきます。
もし、待っている方がいらっしゃいましたら「ここにいるぞ!」「おせーよホセ」「毎秒投稿しろ」等仰っていただきましたら投稿間隔は短くなると思いますので何卒宜しくお願い致します。




