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第三十一話 『記憶喪失の少年と新米冒険者』

皆さんお久しぶりです。あ、はじめましての方もいらっしゃるかもしれませんね。はじめましての方ははじめまして。私はソフィーと申します。お見知りおきください。

ここに来るのもずいぶん久しぶりになってしまいましたが以前と変わらず美しい森ですね。きっと皆さんの努力の賜物なのでしょう。

私たちは冒険者をしてましてランクが高くなってからは遠出するような依頼を受ける事が多くなりなかなかこの辺りに来る事も少なくなってしまっていたんです。この辺りでの依頼も受けられるのですがマキシさんが「こういう近場の依頼は新米どもに譲ってやらねぇとな!」と仰るので…、あ、マキシさんというのは私たちのパーティー『駆け抜ける暴風(ワイルド・ストーム)』のリーダーで…あちらで兎人族の女の子と話をしている逞しい男性です。他の二人のメンバーからは『旦那』なんてよばれてますが私は恥ずかしくてとても『旦那様』なんて呼ぶことはできません///。ああっでもいつかそんな風に呼べる日が来たらいいな、なんて思ったり…いや、でも…――


――はっ!皆さんの前で失礼しました。

んんっ。きょ、今日はそのマキシさんと話をしている私たちの新しい仲間である兎人族の女の子、ラヴィちゃんの依頼のお手伝いに来たのです。あの様子だと無事に目的を果たせたようですね。少しこの森の恵みを頂いてしまいますがお許しくださいね。



「おーい、ソフィー姉。こっちは終わったよ」


私が彼らに話しかけていると私を呼ぶ声が聞こえてきました。


「あら、ミリアにキース。思ったより早かったですね」


マキシさんと一緒にラヴィちゃんのサポートと採取をしていたをしていたミリアとキースが私を呼びにきたようです。


「ああ。最初は全然見つからなかったからどうしたもんかと思ってたが…まさか十匹まとまっているとはな」


本来ならホーンラットはこんなに奥地に来なくてもすぐに見つかるはずなのですが今日は何故だか全く見つからずにこんなに奥地に来る事になってしまったんです。


「ソフィー姉はまた精霊に話をしてたの?」


「ええ、と言っても今回も精霊たちの声を聞くことはできませんでしたけれど」


今までも先程のように何度も精霊たちに話しかけてきましたがなかなかその声を聞くとはできません。エルフやドワーフと言った亜人の方たちは生まれながらに声はおろか姿さえ見える人たちもいるのだとか。


「まあ、こればっかりは向こうしだいだからな。根気よく続けていくしかねぇだろうさ」


「だよねぇ。純人族では精霊と話できる奴らなんてほんの一握りだし…、けどソフィー姉ならきっと話せるようになるさ」


二人の励ましが心に響きます。こういうのって本当に嬉しいですね。

精霊と話ができれば情報を集めたりその場での魔力の譲渡や契約によって精霊魔法が使えるようになります。私は皆さんのサポートがメインで情報収集や直接の戦闘力が劣るため精霊と話すことでそれらを補おうと精霊との会話を目指しているのです。


「そうね。これからもこうして努力は続けていくわ。私ももっと皆の役に立ちたいもの」


そんな二人をはじめ私をあらゆる意味で救ってくださった仲間のために私は決意を新たにするのでした。


「おーい!おめぇら!ちょっと集まってくれ」


そんな私たちにリーダーであるマキシさんから声がかかります。

私たちは顔見合わせ頷くとマキシさんの元へ向かい歩き出しました。




「と、言うわけでラヴィの初依頼はこれにて完了、まあ正確に言えば戻って報告するまでが依頼だが目的自体は達成したと言っていいだろう」


「今日は本当にありがとうございました。パーティーにも入れていただいてその上こんな風に手伝いまでしていただけるなんて…」


ラヴィちゃんの隣に立ったマキシさんが目的の達成を報告するとラヴィちゃんが頭を下げてお礼を言います。

下げた頭と同じように長い耳もぴこぴことお辞儀をしているようでとっても可愛らしいです。


「ま、そんなに気にすんなって。あたし達はもう仲間なんだから。」


「つっても最初はそうもいかねぇだろ。徐々に慣れていきゃあいいさ。けどいずれ仲間に対する遠慮が危機を招くって事も起こりえるってことは覚えておいてくれや」


「がはは!キースは心配性だな!」


「誰のせいだと思ってんだよ、旦那ぁ」


皆さんが次々とラヴィちゃんに温かい言葉をかけていきます。

私はこの暖かい雰囲気が大好きです。

では皆さんに倣って僭越ながら私も。


「ミリアの言うとおり私たちはもう仲間なんです。私はこのパーティーに入ってまだ日も浅いですがこうして打ち解けさせてもらっています。最初はなかなか難しいかもしれませんが私たちを家族みたいなものと思ってもらえれば嬉しいです。」


「はい。ありがとうございます」


少しでもこの気持ちがラヴィちゃんに伝わると嬉しいのですが…。


「そろそろソフィー姉はもう少し、なんていうかこう砕けた感じになってもいいと思うんだけどなぁ」


うっ、ミリアに痛いところを突かれてしまいました。


「確かにそうだが俺達とは育ちが違うからなぁ。その辺りは無理しなくてもいいんじゃないか?俺達だって最初は『聖女様』相手にどんな口きいたらいいか…っとこりゃ失言だったか?」


キースがそう言ってすまなそうにこちらを見てきます。


「いいえ。ただその『聖女』と言うのはちょっと…」


当たり前ですが自分でそう名乗っていたわけではありませんし自分がそんな風に呼ばれるほどの存在だとも思っていません。

確かにそんな風に呼ばれていたこともありましたが実際の私は人々を堕落させてしまうような卑しい穢れた存在なのです。


「そんな事どうだっていいじゃあねぇか!聖女だろうが冒険者だろうがソフィーはソフィーで俺達の仲間ってことには違いねぇ!」


…マキシさんのこういった何気ない言葉で私は本当に救われています。私が冒険者となったのもどうにかしてマキシさんにご恩をお返ししたかったからこそ。今のところ恩を返すどころかいろいろな物を頂いてばかりですがきっといつかお返ししたい。そう強く願わずにはいられません。


「ははっ、全くその通りだな。ホント旦那にゃかなわねぇな」


「たしかにねぇ。聖女様って言ってもトイレにも行けばXXXXだってする普通の女だもんな。」


「ミ、ミリアったら何で知って、じゃなくて人前でなんてことを!!」


「ふ~んだ、さっきいろいろ余計なことを言ってくれたお返しだよ」


「うっ、で、でもあれは本当のことですから…」


「こっちだって本当のことだと思うけど?」


「プッ、ふふっ、あはははは」


私がミリアに返す言葉もなくわたわたしているとラヴィちゃんが吹き出すように笑い出します。


「ふふっ、皆さん本当に仲がいいんですね」


その言葉にマキシさんが当然のように返します。


「おう!そうだろう?最高の仲間達だからな!」


「私もいつか…っ!!!」


そこまで言ったところで笑顔を浮かべていたラヴィちゃんの表情が突然険しくなり、ふにゃ~んとなっていた両耳をピンッと立たせ凄い勢いで後ろを振り向きました。


「な、何かが近づいてきます!気をつけてください!」


その声をきき冗談の類ではないと判断した私たちは反射的にとも言える速さでそれぞれの武器を構え戦闘体勢へと入ります。


「さすがだな。俺にはまだ何も感じられないが…」


今まで索敵を担当してきたキースがそう零します。

彼の索敵能力は高く今までこうした見通しの悪い森林地帯でも真っ先に敵や周囲の状況を把握し私たちの助けになっていました。そのキースが何も感じられないうちにその対象を発見するとはさすが兎人族といったところでしょうか。


「確かにこちらに向かってきています。さほど大きくはありませんが…。この感じは人?足音からして一人、いえ、呼吸音は二つ。恐らく一人がもう一人を背負って近づいてきているようです」


目を閉じ前方から迫る何かに意識を集中するラヴィちゃんから次々と情報がもたらされます。


「やれやれ、これからは少しは楽ができそうだな。おい旦那!確かに何かが近づいてきてるぞ。この辺りじゃ考えにくいとはいえ多頭巨人(カクス)の可能性もあるが…」


キースも何かが近づいてきているのを感じ取りマキシさんに報告します。


「よし!おめぇら!何がおきてもいいように気合入れとけ!だがいきなり仕掛けるなよ!まずは近づいてきているのが何か把握してからだ!」


「了~解」

「あいよ~」

「はいっ」


マキシさんの豪快ながらも冷静な判断にキース、ミリア、ラヴィちゃんがそれぞれ返事をします。

そして私も「はい」とだけ返事をし杖を構え補助魔法の詠唱に入ります。


「神よ、我が朋友(ほうゆう)にその力と慈悲を与えたまえ――小域肉体強化/ショートレンジフィジカルレインフォース!」


そうしている間に先頭にマキシさん、そしてその後ろにラヴィちゃん、続いて私、そして両サイドを固めるようにキースとミリアと言う陣形が形成されます。


「ソフィー!補助はとりあえずこれだけでいい!あんまガチガチに固めて出くわすと警戒させちまうからな!」


続いて補助魔法をかけようとしていた私にマキシさんから制止の声がかかります。


「それを言ったらいきなり目の前に旦那が現れれば誰だって警戒するんじゃないの?」


「ちがいない」


こんな状況にありながらもミリアとキースがマキシさんをからかって笑い合い、かく言う私も吹き出すように笑ってしまいます。


「えと、もう来ますけど大丈夫ですか?」


その様子を見てラヴィちゃんは戸惑い気味ですが私たちの中では割とよく見かける光景なのです。

そうこうする内に私の耳にも何者かが草を掻き分けるような音が聞こえて来ました。もはや彼我の距離は目と鼻の先と言ったところでしょう。


「くるぞ!」


ガサガサという音が徐々に大きくなり茂みの奥の方で背の高い草が大きく揺れ動くのが見え、次第にその何者かの姿が少しずつ見え始めます。

そして私たちの前に転がり出るように現れたその人物とは――


「っ!?タ、タダヒトさん!?」


ラヴィちゃんの言うように一人は先程会ったタダヒトさんでした。このような出会いに驚きを隠せない様子のラヴィちゃん。しかしラヴィちゃん以外の私を含む四人はもう一人の人物が目の前にいる事に驚いていたのです。



ま~た間が空いてしまいました。

冒頭のソフィーの挨拶は私の挨拶も兼ねていますw。


繁忙期で忙しいと言うのも勿論あるのですがモチベーションの問題もあったり…。

途中で投げ出す気はありませんが気長に待っていただくか早くしろと尻を叩いていただければ幸いです。

しかし描き始めて一年以上経つというのに物語りは丸一日程度しか進んでないと言う…。

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