↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生した剣聖は魔法を極めたい  作者: 空想物語


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/10

第6話 試験一

受験生たちは、体育館に集められていた。


体育館はとても広い。


それなのに、座る場所がほとんど残っていないほど、大勢の受験生で埋め尽くされていた。


(こんなにも受験生が多いのか……)


僕は体育館全体を見渡し、思わずため息をついた。


「人が多いね」


隣に座っていたルーナが、小声で話しかけてくる。


「そうだね。合格するか不安になるよ」


「私は不安じゃないけどね。だって合格を確信してるから」


「自信満々だな……」


さすがルーナ。


こういうところは昔から変わらない。


そんな会話をしていると、舞台の上にある教壇の前へ、一人の女性が歩いてきた。


長く真っ直ぐな髪。


すらっとした体型。


そして、赤と青のオッドアイ。


優しそうな雰囲気をまとっているのに、なぜかその場にいるだけで圧倒される。


「ルーナ、あの人って誰か分かる?」


「はぁ……兄さん、呆れた。あの人が誰か分からないの?」


「え、有名人なの?」


「有名人もなにも、あれは現賢者のミネルヴァ=スピカよ」


「えっ……」


思わず声が漏れた。


「てことは、この国で一番魔法が強い人?」


「はぁ、そう言ってるでしょ。兄さんは世間知らずがすぎるよ」


ルーナは呆れたような、それでいて少し怒っているような口調で言った。


その女性――ミネルヴァ=スピカは、舞台から受験生全員を見渡した。


「みなさん、こんにちは。私は現賢者であり、今回の試験官、ミネルヴァ=スピカです」


体育館が静まり返る。


「早速ですが、あなたたちには試験を受けてもらいます」


その瞬間だった。


――パァァァァッ!


まばゆい白い光が、体育館を一瞬で包み込んだ。


「なっ――」


何が起きたのか理解する暇もなかった。


次の瞬間。


僕は森の中に立っていた。


「……すごい」


思わず呟く。


一瞬で、これだけの人数を別の場所へ転移させた。


さすが現賢者。


感心するのも束の間――。


「……あれ?」


隣にいたはずのルーナがいない。


「ルーナ?」


周囲を見回す。


返事はない。


「ルーナ、どこにいる!」


そのとき――。


ガサッ。


近くの茂みが揺れた。


僕は反射的に腰の刀へ手を伸ばす。


そして、茂みの奥から一人の男が姿を現した。


「おいおい……」


男は僕を見るなり、ニヤリと笑った。


「魔法が使えない『無能王子』じゃないか」


「……」


「ラッキー。こんな簡単な獲物が最初に見つかるなんてな」


男は魔法を発動する。


僕は無言で手を前に出した。


――魔弾。


一発。


二発。


三発。


無属性の魔弾が、連続して男へ飛んでいく。


「そんなもんが効くかよ!」


男の前に結界が展開される。


バンッ!


魔弾が結界にぶつかり、次々と弾かれていく。


「やっぱり弱ぇーな!」


男は笑った。


「俺様のファイヤーボールを喰らえ!」


男の手のひらに炎が集まっていく。


ゴォォォッ!


炎はみるみるうちに膨れ上がり、ボウリング玉ほどの大きさになった。


「これでも喰らえ!」


炎の塊が、凄まじい勢いで飛んでくる。


僕は横へ飛んだ。


ドォン!


背後の木に炎がぶつかり、木の幹が大きく揺れる。


「へぇ、避けたか!」


続けて二発。


三発。


四発。


炎の弾丸が次々と飛んでくる。


僕は地面を蹴り、木々の間を駆け抜ける。


右。


左。


上から飛んできた炎を身を屈めてかわす。


「チッ!」


男が舌打ちする。


「『無能王子』のくせに、俺様のファイヤーボールを避けやがって!」


(やっぱり……)


僕は走りながら考える。


(僕の魔法じゃ、こいつを倒すのは難しい)


魔弾の威力では、相手の結界を破れない。


なら――。


僕は腰の刀に手を添えた。


その瞬間。


「逃げてばっかりじゃ勝てねぇぞ!」


男が両手を広げる。


今までとは明らかに違う量の魔力が集まっていく。


ゴォォォォォッ!!


巨大な炎が生まれた。


さっきまでのファイヤーボールとは比べ物にならない。


「これが俺様の本気だ!」


巨大な炎が森を照らす。


「びびったか!」


僕は迫ってくる炎を見つめた。


逃げ道はない。


左右には木々。


後ろにも炎の余波が迫っている。


(……避けられない)


なら――。


魔法を使うのを諦める。


僕は静かに刀を抜いた。


「なっ……刀だと?」


男が驚く。


「そんな時代遅れのものが、この炎に通用するわけ――」


僕は一歩踏み込んだ。


そして――。


刀を振る。


一閃。


巨大な炎が、まるで最初からそこに線が引かれていたかのように左右へ分かれた。


轟音とともに炎が僕の左右を通り過ぎる。


森が静かになった。


「…………は?」


男は呆然としていた。


自分が放った魔法を理解できない。


「な、何が起きた……?」


僕は刀を軽く振り、炎の残りを払う。


そして、男を見る。


「斬っただけだよ」


「……斬っただけ?」


男の声が震える。


「ふ、ふざけるな!」


男が後ずさる。


「『無能王子』のくせに……!」


僕はゆっくりと男へ歩いていく。


一歩。


また一歩。


男は魔法を発動しようとする。


しかし――。


僕が一瞬で距離を詰める。


「――っ!」


刀を振る。


男の手元にあった杖が弾き飛ばされ、地面に転がった。


男はその場に尻もちをつく。


「な……なんなんだ、お前……」


僕は刀を男へ向けた。


「僕?」


少し考えてから答える。


「ただの無能王子だよ」


男はその言葉を聞いた瞬間、完全に動けなくなった。


そして、そのまま意識を失った。


「……寝ちゃった?」


僕は首を傾げる。


「まあ、いいか」


刀を鞘へ戻す


その一部始終を――。


少し離れた木陰から、一人の少女が見ていた。


ルーナだ。


ルーナは、兄の戦いをじっと見つめていた。


誕生日の一件から、ずっと気になっていた。


兄さんは、本当に無能なのだろうか。


魔法力診断では「無属性・星一つ」。


魔法を使うことが当たり前のこの世界では、確かに弱い結果なのかもしれない。


だけど――。


あの日、兄さんは姉さんの岩を簡単に斬った。


しかも、本気を出したようには見えなかった。


だからルーナは思った。


兄さんは、自分の本当の才能に気づいている。


そして、それを何か理由があって隠しているのではないか、と。


無理に聞き出すつもりはなかった。


兄さんが自分から話してくれるまで、待とう。


そう決めていた。


けれど――。


「やっぱり……」


ルーナは嬉しそうに呟いた。


「兄さんは、自分の才能に気づいてる。ただ、隠してるだけ」


やっぱり間違っていなかった。


兄さんは無能なんかじゃない。


むしろ――。


自分たち家族がまだ知らないほどの力を持っている。


ルーナは、少しだけ笑った。


「でも……兄さんが何を隠してるのか、もっと知りたいな」


兄さんが自分から話してくれるまで待つ。


その気持ちは変わらない。


だからこそ――。


「どうやって兄さんの本気が見られるか、考えないと」


ルーナはそう呟き、再び兄の背中を見つめた。


その目には、兄を心配する気持ちと、どこか嬉しそうな好奇心が宿っていた。


――学園の試験は、まだ始まったばかりだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。