第4話 実力
次の日。
「2人とも、お誕生日おめでとうー!」
家族みんなが、僕とルーナの誕生日を祝ってくれた。
食卓の上には、僕たち二人ではとても食べきれそうにないほど、たくさんの料理が並んでいる。
「多すぎ……」
ルーナは、料理の量を見て呆れたように呟いた。
「もう7歳か。7年はあっという間だね」
父さんが、しみじみとした様子で言った。
「2人とも、来年の春から学園に行くことになるから、会う頻度が少なくなるよー」
姉さんが少し寂しそうに言う。
学園。
7歳になった者は、身分に関係なく必ず通わなければならない。
学園では入学時に試験が行われ、その成績によってクラスが決まる。
下から順にC、B、A、そしてS。
試験の内容は、試験官によって毎年変わるらしい。
つまり、この学園は完全な実力主義ということだ。
「学園ねー、懐かしいわね」
母さんが、昔を思い出すように言った。
「そこで俺はテイラーと出会ったからな。それはそうと、誕生日プレゼント何がいい?」
父さんが僕たちに尋ねる。
「私は姉さんみたいな訓練場が欲しい」
ルーナが答えた。
姉さんの訓練場は、高い耐久性を持つ素材で作られている。
魔法の訓練をするには、とても便利な場所だ。
「だったら私と一緒に訓練場使う?」
「いいの?」
「いいよ。どうせ私、学園に行ったら使う頻度少ないからね」
「俺は刀が欲しいかな」
「刀?」
家族全員が同時に声を上げた。
「そう。東の国にあるっていうやつ。俺、魔法がからっきしだから護身用に」
「そうか。分かった。俺が用意しとくよ」
こうして、僕の誕生日は終わった。
そして一週間後――。
僕は父さんに呼ばれ、訓練場へ向かった。
そこには家族全員が集まっていた。
「シエル、刀ができたぞ。試し斬りするか?」
「やる」
父さんから刀を受け取る。
ずっと欲しかったものだった。
「カナデ、岩を出してあげて」
父さんが姉さんにお願いする。
「このくらいでいい?」
姉さんが魔法で大きな岩を生成した。
「大丈夫だ。シエル、これを斬ってみてくれ」
「分かった」
僕は刀を構える。
――僕は、自分の実力を家族にはまだ内緒にしている。
もし僕が剣の才能を持っていることがバレたら、また剣の道へ進まされる可能性がある。
僕は魔法を極めたい。
だから、剣の実力を知られるわけにはいかなかった。
そして――。
僕は軽く刀を振った。
岩は、簡単に斬れた。
……あれ?
周りの反応がおかしい。
家族全員が、まるで信じられないものを見たような顔をしている。
理由は分からなかった。
「この刀、斬れ味がいいね」
僕はそう言い残すと、逃げるように訓練場を後にした。
◆ ◆ ◆
シエルがいなくなった訓練場。
「父さん、見た? 信じられないことが起きた」
カナデが驚いた様子で言った。
「ああ。カナデ、あれはお前の最高強度の岩だよな?」
「そうだよ。父さん、手を抜いたつもりはない」
「てことは、あれがシエルの実力?」
母さんも、信じられないという顔をしている。
「私でもカナデの岩を傷つけることは困難よ」
「兄さんはすごい。私だけじゃなかったんだ。才能は兄さんにもちゃんとあったんだ」
ルーナは嬉しそうに呟いた。
「父さん、母さん。これって、500年前は剣と魔法が同列視されていたっていう証拠じゃない?」
「そうだな。あまり信じられないけど……」
「シエルは気づいてないのかな。それとも、隠してる?」
「母さん。それは分かんないけど、少なくともシエルは剣の才能がある。気づいてなかったら、気づかせてあげるべきじゃない?」
「みんなだけで話進めないでー。とにかく兄さんはすごい。そして、なに? 500年前の証拠って」
ルーナが尋ねると、カナデが説明を始めた。
「ルーナ、500年前の時代では、剣と魔法では同列視されていたことは知ってるよね?」
「うん」
「だけど今では、剣は時代遅れの技術。それが、なぜ500年前では同列視されていたかが分からなかった」
「確かに変だね。剣が衰退していったってこと?」
「そう。剣は魔法よりも攻撃力がなく、汎用性がない。そう評価を受けてきた。だけどシエルを見て確信した。昔の剣は、魔法よりも攻撃力が高かったってこと」
「でも兄さんにも私と同じくらい……ううん、私以上の才能があったんだよ」
ルーナは嬉しかった。
兄のことを何も知らない人たちに「無能王子」と馬鹿にされるのが、ずっと悔しかったからだ。
「じゃあ、みんな明日からシエルを観察しよう」
父さんがそう言った。
そして家族みんなで訓練場を後にした。
――シエル本人が知らないところで、家族による「観察」が始まろうとしていた。




