第3話 特訓と無能
魔法がすべてを決める世界。
そんな世界に転生した元・剣聖のシエル。
「今度こそ魔法を極める!」
そう意気込んでいた彼だったが、魔法力診断で与えられたのは――「無属性・星一つ」。
周囲からは「無能王子」と呼ばれるようになってしまう。
それでもシエルは諦めなかった。
前世で剣を振り続けた経験をもとに、魔力量を増やし、無属性に別の属性を付けるという普通では考えられない特訓を始める。
そして四年後。
ある日、シエルの前に一人の暗殺者が現れる。
そこで明かされる、彼の前世で培った「技術」。
これは、剣聖が剣で無双する物語ではない。
――剣聖が魔法で無双する物語である。
あれから、四年の月日が経った。
どんな結果であっても、僕の「魔法を極める」という夢は終わっていない。
だから僕は、四年間ずっと魔法の特訓を続けてきた。
まず取り組んだのは、魔力量を増やす練習だ。
この世界では、魔力量は生まれつき決まっているものだとされている。
けれど、僕には前世での経験がある。
前世では、剣ばかりを振っていた。
剣は振れば振るほど、強くなる。
ならば――魔力も同じなのではないか?
そう考えた僕は、無属性の魔法「魔弾」をひたすら撃ち続けた。
魔力切れで倒れてしまうこともあった。
それでも、来る日も来る日も魔弾を撃ち続けた。
正直、成果が出ているのかはあまり分からない。
それでも、僕は諦めなかった。
次に取り組んだのは、無属性の魔法に属性をつける練習だ。
本来なら、そんなことは不可能だ。
自分が持っている属性とは違う属性の魔法を使うことはできない。
けれど僕は、あることに気づいた。
『無属性』。
それは、どの属性にも当てはまらないということ。
ならば――。
「全ての属性を使えるんじゃないか?」
そう考え、僕は実験を繰り返した。
結果として、実験は成功した。
しかし――。
火属性は、マッチ程度。
水属性は、ビー玉程度。
雷属性も、風属性も、地属性も似たようなものだった。
使えることには使える。
だけど、とても実戦で役に立つようなものではない。
「どうしよ……」
そんな言葉を口にしながらも、僕は今日も魔弾を撃ち続ける。
そして、属性をつける練習も続けた。
そんな僕に、妹のルーナが声をかけてきた。
「兄さんまだやってるの?」
「ルーナはいいよね。魔法が使えて」
僕がそう言うと、ルーナは少し怒ったような顔をした。
「最近兄さんはなんて言われてるか知ってる? 無能王子だよ、む、の、う。」
声を荒げたせいか、ルーナは少し息を上げていた。
「悔しくないわけ?」
「うーん、別に。無能なのは事実だし」
「に、い、さ、ん」
「まあまあ、シエルがそう言ってるんだから気にしなくていいんじゃない?」
カナデ姉さんが、ルーナをなだめるように言った。
「それよりご飯ができたから食べよ」
「わかった」
僕とルーナは、同時に返事をした。
◆ ◆ ◆
その頃――。
屋敷の近くにある森に、黒いフードを被った怪しい男がいた。
男は周囲を警戒しながら、誰かを待っているようだった。
「依頼は無能王子の暗殺か。簡単だな」
そんな男の前に――。
僕はゆっくりと歩いていった。
一歩。
また一歩。
そして、男との距離を縮めていく。
「誰だ」
男が警戒したように尋ねる。
「僕だよ。ただの無能王子」
「これはこれは好都合だな。標的の方が勝手にやってきてくれるなんて」
男は余裕そうに笑った。
僕はそんな男を見ながら、ふと思ったことを口にする。
「ねぇ君はさ、剣を使ったことはある?」
「剣? そんな時代遅れなもの使うわけないだろ」
「時代遅れねぇ〜。剣の実力差は力と技術、どっちだと思う?」
「は? 知らねえーよ」
僕は足元に落ちていた枝を拾った。
そして、男に向かって構える。
「正解は技術だよ」
次の瞬間――。
僕は枝を振った。
木々が大きく揺れ、葉が舞い散る。
そして男は、その場に崩れ落ちた。
僕は枝を見つめながら、小さく呟く。
前世では、僕は剣聖だった。
剣を極め、剣だけで強さを手に入れた。
けれど、この世界では剣は時代遅れとされている。
だからこそ――。
僕は魔法を極める。
これは、剣聖が剣で無双する物語ではない。
――剣聖が魔法で無双する物語である。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
今回は、魔法力診断から四年後のお話でした。
「無属性・星一つ」という結果になったシエルですが、それでも魔法を極めることを諦めていません。
魔力量を増やす特訓や、無属性に別の属性を付ける実験など、前世の剣聖としての経験を活かしながら試行錯誤しています。
そして今回は、ついに前世の「剣聖」としての実力が少しだけ登場しました。
無能王子と呼ばれているシエルですが、本当に無能なのか。
これからシエルがどのように成長していくのか、ぜひ見守っていただけると嬉しいです。
次回もよろしくお願いします!




