第8話 青子
三角神社へ、女学生の三人組が向かっていた。
「この前、千恵子が三角神社で気持ち悪くなったって言ってたわね」
「ああ、言ってた〜」
「変な物食べたのよ。きっと。千恵子大食いだから」
口々に、話しながら進む。
女の娘たちは、おしゃべりだ。
話題は、多岐にわたる。
ネット、テレビ、学校、近所の行きたい場所のこと。
その中でも、近所の三角神社は、学校の女学生に人気のパワースポット。
無人の小さな神社だが、近所の女学生にとっては、恋愛成就をお祈りしたい時に使える場所。
恋を実らせるのは、女の娘の夢。
女学生三人組は、イケメンの彼氏がほしいとお願いしに行くつもりだった。
「…」
空色の長い髪の女の娘が、その様子を見ていた。
「…許せない」
恨みの言葉を口にする。
その姿は、透明で、霊力の低い人間には見えない。
女学生三人組は、見えない女の娘に気づかず、通り過ぎていく。
「…人間の女の娘は、あの人に見える。好きになってもらえる。許せない」
見えない女の娘は、女学生三人組の後ろについて、追跡をはじめる。
「…三角神社で、襲ってやる!」
第8話 青子
三角神社の遊呼は、ソウルハリセンを持って戸惑っていた。
ソウルチャイナローブを着ているので、透明人間だ。
「…あ、あのー」
一応、遊呼は聞く。
「あの空飛ぶキツネ、空狐だっけ?…私が叩くの?」
「もちろん、そうじゃ。空狐退治人の出番じゃ」
女媧さまは、大きくうなづく。
そもそも、空狐退治人って、何だっけ?
遊呼に自覚は、あまりない。
とにかく、ハリセンで、空飛ぶキツネの空狐を叩いて、消す。
何か、モグラ叩きのようなことだと思っている。
それを、遊呼が、やる。
それだけだ。
「ストレス発散になるんだよねー」
ハリセン一発。
ストレス発散が、できる。
よくわからないが、気分爽快。
遊呼は、そう思っている。
コオオオオ…ン
空狐が、降りてきた。
遊呼に向かってだ。
よし、やってやろうではないか。
「行くよー」
バシッ
遊呼は、軽快にハリセンを振るう。
空狐にクリティカルヒットだ。
空飛ぶキツネは、煙りになって消える。
「良し。やったね!」
「見事じゃ。遊呼。慣れてきたのう」
女媧さまが、感心している。
「うふふっ!」
右手にハリセン。
左手で、Vサインだ。
遊呼は、できる娘なのだ。
「良いぞ。いい調子だぞ。このまま、過去の恋は忘れて、オレと付き合おうぞ」
伏犠くんが抱きつこうとしてくる。
「ちょ、ちょっと!やめてよー!」
ハリセンを構えて、嫌がる遊呼。
可愛い女の娘の恋人募集中の伏犠くんは、いらない。
遊呼は、まだまだ、ケンジのことが好きだから。
そんなことをしていると、三角神社に誰かがやって来た。
「…だからさ〜」
「…あれ、面白かったね」
「…ウケるなあ」
女学生三人組だ。
会話に夢中になりながらも、しっかりとした足取りで、三角神社の鳥居をくぐる。
「あっ…」
慌てて隠れる遊呼。
しかし、女学生三人組には、遊呼の姿が見えていない。
ソウルチャイナローブを着ているからだ。
「…あなた。霊力、高い?…」
「え?」
遊呼に話しかけてきたのは、女学生三人組の後ろの空色の髪の女の娘。
美少女だ。
何か、遊呼には胸騒ぎがした。
普通の娘じゃない気がする。
雰囲気が暗い。
「私、青子…」
「青子…?」
「…私の声、聞こえるの?人間…」
“青子”と名乗った女の娘は、するどい目つきで、遊呼のことを、にらんでくる。
「え?…ごめんね。何か、怒らせること言った?」
“青子”に、にらまれて、遊呼は肩をすくめる。
「…」
「青子なのじゃ…!」
「青子だぞ」
「青子さん…」
女媧さまたちは、驚いた顔をしている。
「何?…何なの?」
遊呼は、ワケがわからなかった。




