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第4話 伏犠くんと青いウサギ

「さすがじゃ。空狐退治人、誕生じゃな」

よくわからない闘いに勝った遊呼。

何度も、女媧さまに褒められた。

褒められて、悪い気がする人間はいない。

遊呼も笑顔になる。

空狐は、消えた。

気配が、無い。

具合の悪くなった女学生は、元気を取り戻して、すみやかに帰って行った。


「アニメみたい…」

興奮気味に、遊呼はつぶやいた

気分がスッキリしている。

ハリセンで何かを叩くのは、ストレス発散に有効なのだ。

ストレス?

何だったっけ?

少し、考えて、ケンジの顔がよぎった。

そうだ。

「私、失恋したんだった…」

すぐに、思い出した。

心が暗くなる。

何で、忘れられるんだろう。

ケンジのこと、好きだったのに…。

「遊呼よ。大丈夫か…?」

「無理…」

「すぐ、忘れても良いと思うのじゃ」

「無理…。無理なの…!」

遊呼は、何度も、首を横に振る。

「忘れられないか。では…」

うなづいた女媧さまは、人差し指を一本突き立てる。

「新しい恋をするのは、どうじゃ?」

「新しい…、恋…?」

「ワシには、弟が二人いるのじゃ」

ひとまず、弟を一人、紹介すると言う。

女媧さまの弟の一人は、“伏犠ふっき”という名前だそうだ。


第4話 伏犠くんと青いウサギ


三角神社。

無人の神社。

ソウルチャイナローブを着た遊呼と女媧さまは、霊力の無い人間には見えない。

そして、女媧さまの弟と守護獣のウサギも、普通の人間には見えない。


「…美少女の恋人ができると聞いて、天界から飛んできたぞ。…“伏犠くん”と呼んでほしいぞ…」

薄紫色のボサボサ髪の美青年が、息を乱しながらやって来た。

伏犠くん。

女媧さまの二人の弟の一人。

天界電話で、女媧さまから、可愛い美少女と新しい恋ができると聞いて、わずか数分でやって来た。

天界と人間界は、近いのだろうか?

息を整える伏犠くん。

常時、美少女の恋人を募集中の美青年だ。

雰囲気は、根暗そうにも見える。

しかし、手元には、守護獣の青いウサギを抱えている。

青いウサギは、愛くるしい。

第一印象を良くしたいのだろうか?

「…好きだぞ。付き合ってほしいぞ」

「え、ええー?」

遊呼は、慌てた。

ケンジに付き合おう、と言われたのを思い出す

うれしかった。

好きだった幼なじみだ。

…でも、出会ってすぐの、初対面の男の人に言われても、うれしくない。

何なのか、この伏犠くんとは?

抱えている青いウサギは、とても可愛い。

「…じゃあ、友達からお付き合いしようぞ」

「断るっ…」

目線をそらす遊呼。

「…じゃあ、キスしようぞ」

「イヤだってばっ!」

何だか、遊呼はイライラしてきた。

キスなんて、学校の屋上で目撃した。

好きだった幼なじみのケンジと親友のミホ。

二人がキスするところを、ばっちり見てしまったのだから。

ショックだった。

本当に傷ついたシチェーションだった。

もう、思い出したくない。

この伏犠くんってヤツ、何だか、遊呼の精神的外傷をのぞいてるかのように、言葉を繰り出す。

何故だろうか。

「…“付き合う”と“キス”が、キミの心を閉ざしているようだぞ。オレは、初対面の人間の心の奥が見えるんだぞ」

伏犠くんは言った。

心の奥が、遊呼の心の奥が見えているらしい。

初対面の女の娘には、とても失礼だ。

「…心の奥、見ないで…!」

遊呼は、伏犠くんが嫌いになった。

男の人に、プライベートなことを、とやかく言われたくなんかない。

特に、今は、失恋したばかり。

心の奥に触れられたくない。

「キミって、可愛い…」

反対に、伏犠くんは、遊呼を気に入ったようだ。

「仲良しになれそうじゃな」

黙って見ていた女媧さまは、考えをまとめる。

「遊呼よ。伏犠と仲良くするのじゃ」

「仲良く…?」

「空狐退治人の仲間と仲良くするのじゃ」

「…?」

まだ、遊呼は、空狐退治人のことが、ほとんどわかっていない。

さっきの空飛ぶキツネのことは、夢なんじゃないかと思っている。

空飛ぶキツネなんて、いるはずがない。

ハリセンで叩いたのは、スッキリしたけれど。

「ワシは、天界にいる時間が長いのじゃ」

女媧さまは、天界での地位が高く、何だかいそがしいらしい。

三角神社にいるのは、今日まで。

明日は、天界でお仕事がある。

つまり、女媧さまは、明日いないということ。

「仲間と、三角神社を守るのじゃ」

「三角神社を守るの…?」

遊呼は、首をかしげた。

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