第3話 空狐退治人
世には、たくさんの恋人たちがいる。
初恋、片想い、両想い、失恋…。
色々な恋がある中で、遊呼は、失恋を経験した。
相手は、幼なじみのケンジ。
お付き合いしようと言われた。
うれしかった。
有頂天だった。
しかし、ケンジは、親友のミホと屋上でキスしていた。
ケンジは、ミホを選び、遊呼を捨てた。
フラれたのだ。
それは、初めての失恋だった。
「…失恋したあとは、ウサを晴らして、忘れるのが一番じゃ。忘れて良い」
三角神社で会った。自称・恋愛の神様、女媧さま。
恋愛の神様は、霊力の高い人間にしか見えないらしい。
遊呼は、霊力が高いため、女媧さまのことが見えるらしい。
「お主に、空狐退治人をしてほしいのじゃ」
そう言って、どこからともなく、大きめのローブを取り出す。
ソウルチャイナローブ。
霊力のある人間を強化する、不思議なローブ。
「これを着ておくれ」
「…ええ?」
大きめのローブを見せられ、戸惑う遊呼。
「空狐退治人は、わかりやすく言うとアジア版の“魔法少女”じゃよ」
「…ま、魔法少女?」
「ローブは、すっぽりかぶるだけだから、簡単に着れるのじゃ」
ガバッ…
ローブを、広げる女媧さま。
そのまま、思いっきり、上からローブを遊呼に着せる。
これを着ると、遊呼も、霊力の無い人間には、見えなくなるらしい。
「…な、な、何?」
「空狐は、三角神社へ、お参りに来る女の娘を襲う。それを、止めるのじゃ」
第3話 空狐退治人
三角市。三角神社。
無人の神社。
一人の女学生が、お参りをしに来た。
「…先輩と両想いになれますように」
お賽銭を入れて、女学生は、神様に祈った。
「こんにちはー」
遊呼は、大きいローブをしたまま、挨拶する。
制服から見ると、遊呼と同じ学校の生徒だとわかる。
今、目立つローブ姿だが、挨拶くらいはしておきたい。
「…」
しかし、女学生は、お祈りに集中しているのか。遊呼を見向きもしない。
「ソウルチャイナローブを着ている間は、霊力の無い人間には、気づかれないのじゃ」
女媧さまが、説明してくれる。
現在、遊呼は、いわゆる透明人間なのだ。
「そ、そうなの?」
何度も、女学生に挨拶をする遊呼。
女学生は、無反応。
女媧さまの言っていることは本当?
「…私、透明人間になっちゃった!」
コオオ…ン…
どこからともなく、動物の鳴き声が聞こえる。
キツネっぽい。
「…何?」
空に気配を感じて、遊呼は空を見上げる。
空の色と同化するスカイブルーのキツネが、ゆらゆらと降りてきた。
空狐だ。
「何?あれ?」
疑問をおぼえる遊呼。
高い空から降りてくるキツネである。
通常のキツネでは無い。
キツネ=空狐は、お祈り中の女学生の頭上に向かっていた。
そのまま、女学生の身体をすり抜ける。
「…何だろ、…頭が痛いわ」
女学生は、思わず、うずくまる。
どんどん、顔色が悪くなり、辛そうだ。
空狐はというと、飛びはねながら、女学生の身体をすり抜けるのを繰り返す。
「…何?あのキツネ」
「空狐じゃ。あれは、女の娘を苦しませるのを楽しんでいるのじゃ。早く止めなければいかん」
「空狐?」
「あの女学生を助けるのじゃ。遊呼」
「助ける?私が?」
「…そうじゃ」
女媧さまは、遊呼に言う。
“ソウルハリセン”
それを、使って、空狐を叩け。
「…ソウルハリセン?」
遊呼が言うと、手元に光るハリセンが現れる。
ハリセンとは、お笑い番組などで見る、芸人の小道具だ。
実物のハリセンを目にして、手にするのは初めてだ。
「急ぐのじゃ。女の娘が危ない」
「え、えーと…」
あの空狐は、迷惑っぽい。
女学生の女の娘が、苦しんでいる。
このハリセンを使って、追い払えばいいかもしれない。
「…私、やってみるっ」
ハリセンを持って、空狐の元に近づく。
「えーい!」
バシッ
大きく振りかぶったハリセンの一撃が、空狐に直撃する。
「あ、当たった…!」
遊呼の目の前で、空狐は、煙りになった。
勝利だ。
空狐退治人の初戦は、見事な一撃で勝ったのだ。




