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090●兄上
見事に沈んでいく。・・・冷たくないんだな。冬の大河なのに。暗くなってきた。あそこで滑り落ちるとは。馬のせいではない。わたしが未熟だったからだ。
兄上のお姿が見える。ああっ、会いたかった・・・。
ーどうした、ウィルフレッダ?こんなところで。
兄上、やっと・・・。
ーかわいい妹よ。何をしに来たのだ?
もう一度、兄上に会って・・・。そう、そうなの。そんなふうに、かわいいって言ってほしかったの。勇敢だとか、芯が強いとか、そんなのばっかり。わたしを小さい時のように、抱きしめて・・・
「抱きしめて・・・。かわいい、愛してるって、言って欲しかったの・・・。」
兄上!
ぎゅっと抱きしめてくれる。ああ、嬉しい。満たされる。幸せだ。
ー何度でも言うよ。お前は・・・
「君はかわいい!愛してる、ウィルフレッダ!君を愛してる!!お願いだ!目を開けてくれ!」
兄上!・・・兄上?・・・ロイ?・・・ロイ?!
「目を開かれたぞ!」
「顔に赤味がさしてきた!」
「子爵様が、意識を取り戻されたぞ!」
「伯爵、感謝します!」
心臓マッサージ!と人工呼吸!って!よくわからないけど!破廉恥だったけど!でも、生き返られた!ローレンス様のご加護があったに違いない!ああ!ああ!!
ケイト、そんなに泣かないで。ありがとう、ロイ。・・ありがとう、兄上・・・。




