089●人間は、見たいと欲するものしか見ない
「なんだと。ラボがそんな極秘計画を。」
「グリッチがここ24時間、ハッキングをかけて、やっとたどり着いた。」
「ラボは、我々と同じことを考えていたのか。」
「完成度が高い。完全自律運用に限りなく近い。」
「最終段階のテストに、間もなく入るのか。」
「詳細なデータは?」
「グリッチでも、まだ難しい。何しろ、相手が相手だからな。」
「たかが、小国家の王立機関ではないか。ヤツに報酬を弾むと言って急がせろ。」
「最初の情報の出どころは?確かなのか?ラボが軍事開発に関わっているのか?」
「行政府に潜り込ませた、うちの工作員からだ。間違いない。」
「今まで気づかなかったのか。十数年もの間、先行されていたとは。」
「我々の情報網を更に深化させなければならない、ということだな。」
「だから、わたしはいつも言っていただろう!」
「今、連絡が入った。明日のマルナナ・マルマル時から、軍の演習場をラボが借り切っている。そこだな。」
「ライブ中継よし。見つかるなよ。」
「うちの諜報班がやっている。これ以上の適任者はいない。」
「もっとズームアップがほしい。」
「画像が荒くなるぞ。」
「おっ、始まった!」
すご〜い。LJー09に似ているけど、カッコいいな。さすがね。
うわっ、車速もすごい!砲塔旋回。撃った!標的が吹き飛ぶ!
本当にすごい威力!
あっ、空からの攻撃がくる!突然よね!急に進路を変えた!
有利な迎撃ポイントへ移動する!
機関砲、撃った!命中!この距離で!いや、本当にすごい!
「エイミー、もうちょっと、静かにしてくれよ・・・。」
うるさいわね、アキラ!
「釣れましたね。」
ジン、嬉しそうだな。
「あれを全部、ココアがひとりでやっているのか。」
「そんなすぐに、自律人工知能戦車なんて、できるわけありません。だから、リモコンでココアが遠隔操縦して、砲撃は空砲、爆破は映画のセットと同じで、爆発を同期させただけ。対空戦も、一見するとそれらしく見えるでしょう?長期間、開発していたかのような、偽データをラボのコンピュータに入れ、それに外見を合わせて作った中身がカラッポの戦車モドキ。うまく引っかかってくれましたね!」
ハリボテの戦車って、笑わせるな。人間は、見たいと欲するものしか見ないからな。だれの言葉だったかな?
「エンジンなんかは、いいものを使いました。アキラさんの新車と同じぐらい、しっかり選びました。」
俺の車はハリボテ戦車なみか?
まあ、いい。あの動作性能なのに、出回っている技術と部品だけで、作ったってのはいいよな。
「ふ〜ん、これは騙されるね。でも、この短時間でよく完成したよね。アキラの車も、ちょこちょこっと、作ったんじゃないの?」
こらあ、俺の車にケチをつけるな!
「映像の受信者の特定、完了しました。情報をアウトプットします。有線で接続してください。」
いや、ホント、あんたってすごいな、ココア。




