088●不可能な任務
「それは、無理じゃないか?」
急な招集だ。話も困難極まる。気色ばむ俺に、局長は例によって表情を変えない。
「あの戦車のコマンドは、中枢部分の破壊とともに完全に消滅しました。跡形もありません。わたしも不可能だと思います。」
ほら、ジンだって俺と同じ意見だぞ。
「暗号化されたデータドライブにも、隔離されたシステムメモリにも存在していないんでしょう?捕まえた連中も、コマンドを流し込んだ後、そのデバイスを物理的に処分しちゃったんだから。」
エイミーの説明はよく判らんが、まあ、モノは無い、ってことだよな。
「統合本部は関与を否定している。証拠も見つからない。そのうえ、コマンド入力を指示した上司ってのが、前日に休暇申請を出して、’山に登ってくる’って言ったまま、行方不明だ。国外に出た形跡もない。富士山より高い山に登っちまったんじゃないのか?」
「オオガミさん、富士山より高い山は国内にありませ・・・。あっ、そういうことですか。もっと遠い世界に行ってしまった、ってことですね。」
ココア、察しがいいじゃないか。
「それを探すのが、君たちの任務だ。統合本部であろうと、技術戦略統括部であろうと、構わん、こじ開けて見つけろ。何をやっても構わん、任せる。無理でも不可能でも、なんとかしろ。」
ゴリ押しって、初めてだな。しかし、不可能を可能にしろって、そいつは、いくらなんでもなあ。
「君たちの密談による憶測については、コメントしない。だが、事は急を要する。」
まあ、局長にすりゃあ、そうだよな。シビリアン・コントロールが効かない、しかも複数の国にまたがる軍部ってのが、戦略兵器や薬物を勝手に作ろうとしてんだから。コマンドを分析して、どこの誰が関わっていたか、手がかりが必要だよな。分析結果から都合よく、何かわかるってことが、保証されてるわけじゃないけどな。
「ともかく、コマンドの出どころが、何処の誰だか、わかればいいんですよね。どれぐらい時間はいただけるのですか?」
ジン、前向きだな。
「5日間、正確には、あと110時間だ。」
せめて、もうちょっと早く指示してくれよ。戦車戦から3日もたってからって、決断が遅いぞ。本当に、ミッション:インポッシブルじゃねえか!




