086●古の偉大な領主
「それで公爵軍は、あの城に立てこもっているのですね。」
「左様です。いかが致しましょう?一気に攻め落としましょうか。」
「いや、降伏を呼びかけてください。犠牲者は少ないほうがよい。」
「承知いたしました。」
ロイなら、きっと、こうするはずだ・・・。
降伏勧告だと!何を言っておる?
!何と!城外からの呼びかけに、すでに多数の投降者が出ているだと!
止めよ!止まらんのか!儂の命令が聞けんのか!
ええい、馬鹿者どもが!
「マルクヴァルト・デ・ヴラドルフ公爵に間違いございません。」
「そうか・・・。残念だ。」
「ゴライブは見つかりません。」
「ご遺体を丁重に、王都に運ぶように伝えてくれ。決して無礼なきように、な。」
「承知いたしました、子爵様。」
ふーむ、一戦もせず返って来た、というのか。
使えんやつだな。父親は毒をあおったというのか。
自らの野望の機会も活かせぬ一族か。
まあ、よい。あやつには一身に汚名を着てもらおう。
王の知らぬところで挙兵したと、辻褄を合わせよ。
戻ってきた兵士は全員、処罰だ。
余の知らぬところで加担したのだからな。ボレリア王には謝罪の使者を送れ。
そうだな、’毒のみ公爵’の息子の首も差し出せばよい。
必要物資の調達や技術提携は続けなけねばならん。
力を蓄え、いずれ全てをこの掌中に収めてやる。
「・・・以上だ。こうなっては、ラベリアとの関係も難しくなるだろうね。」
「いや、きっと向こうは下手に出てくるよ。」
そんなことがあるのか?直属の軍団ではなかったが、あの兵装や兵站物資、どうみてもラベリの後押しがあるだろう。向こうは釈明ができるのか?
「納得いかないようだね。しかし、今回の勝利の要因は何だったと君は思う?」
「歌だね。あの訓練が、このためだったとは。」
「君のことが知れ渡っていたのも、大きかったよ。」
「それだけか?もっと何か、あるんじゃないの?」
「流石だね。相手の兵が、我が国の豊かさと温厚さを知っていたからね。」
「う〜ん、なるほどね。投降兵が大勢いる。君が言っていた、戦わずして勝つ、ということか。ああ、そうか、ラベリア王としては、陛下の温厚さにつけこんで、へりくだって許しを請い、我が国から甘い汁を吸い続ける道を選ぶというんだね。」
「公爵に全ての罪をなすりつけるんだろうな。」
「不愉快だな。打つ手はないの?」
「民を大切にするのが、一番の対策だね。人は城、人は石垣、人は堀。僕が聞いた、古の偉大な領主の言葉だよ。投降兵たちは、伯爵領で引き受ける。移動方法や食糧なども、こちらで何とかするよ。」




