084●気長な夢 & 085●やがて、夜は明ける
084●気長な夢
また、この夢かあ!
起きると忘れるんだけど、眠っている時は、全部、思い出すんだよね。
山を越え、谷を渡り、砂漠を横切り、世界の反対側へ。
これ、もしジン君が同じまわり方なら、追っかけっこになって会えないことになるのかな?
いや、こんな夢の世界にそんな理屈があるはずもないね。
ここが球体とは限らない。
悪魔はイジワルだから、なかなか会わせないようにするはずだし。
どうせ夢なんだから、気長に行こう!
085●やがて、夜は明ける
長い準備期間だった。だが、訓練は十分行えた。王は気前がよい。これだけの軍勢を与えてくれた。王直属の兵士たちではないが、それでも部族ごとに徴兵された強者たちだ。ラベリアを発って2日。これで儂の野望も叶うというものだ。ゴライブ、このまま進軍だ!行くぞ!
明日は夜明けと共に決戦だ。夜襲に備えて、見張りは十分に立てろ!儂は眠るとするか。・・・何だ、あれは?風の音か?いや、違う、歌っているのか。我が陣営か?黙らせろ!
「これは一体どういうことだ!」
兵の半数がいない!
「昨夜、遅くに逃亡したものと思われます。」
なぜだ?何があったというのだ!
「敵陣から聞こえてきた、歌の影響と思われます。」
歌?昨夜のあれか?!たかが歌ごときで?!
「ふるさとの歌が聞こえる。」
「敵に同郷の兵士がいるのか?」
「俺も歌おう。神へ感謝を。」
「おお、この歌は、王に根絶やしにされた部族のものではないか?」
「生き残っている、とは聞いたが。」
「国境を閉ざしたのは、我らを率いる公爵様だったというぞ。」
「我が一族は、ただ、王に従うことで命脈を保ってきた。」
「この出兵、故郷や我が民族を守るためのものか?」
「敵にあの方がいるという。」
「門を開け続けた、あの方か?」
「なんか、もう、俺・・・。」
「帰りたいな。魔法も怖い。」
「動けなくなるんだろ?」
「どこへ行く?」
「脱走するよ。こんなところで命を落としたくない。」
「独り身で縁者もないから、武器を捨てて向こう側へ行くか。」
「かあちゃんも子どももいるからなあ。」
「家族を連れて、ボレリアへ行きたい。」
「いくらでも、逃亡者を受け入れてくれるそうだ。」
「うーん、そんなに上手くいくものか。」
「わからん。だが、やがて、夜は明ける。」
「どうしよう?」




