035●なるべく人のいないところ
「どうもありがとうございました。開発の進展がございますように。」
ジンが丁寧に挨拶をする。まあ、ハードウェア的にはすごいぞ。攻撃力、防御力、走行性能、どれをとってもこれまでの戦車を凌駕している。既存の戦車の弱点をほぼ解決している。けどよ、やっぱり兵器自体の自律化というソフトウェア面は、疑問が残るな。俺が心配することじゃないだろうけど。
これで視察は終わりね。興味深かった。局長への報告をさっさと書いて、週末を楽しまなくっちゃ。これから兵器、様変わりしていくんだろうな。
アキラの車に乗る。わたしは運転席の後ろ。隣はココアちゃん。あれっ?おかしな音がする。聴音レベルをあげる。これって・・・さっきの戦車の起動音?!
「アキラ、急いで!」わたしの声に3人が反応する。
「ココア、状況を探知!」
「LJー09、以下、戦車と呼称、移動しています。こちらに向かって来ます。主砲、並びに30mm機関砲の旋回音を確認。」
あっ、こっちの音はそれか。
「それはまずいですね。」
そんなこと言って、どうしてあなたは、落ち着いていられるの?
急発進する。タイヤが軋む。なんでこんなことになるの?なぜ、戦車が来るの?本当に標的は私たち?誰がコマンド入力した?来た!やっぱりあいつだ。なんかご機嫌損ねること、したかしら?
「局長への連絡は?」
「取り敢えず、第一報を入れました。住人の避難が追いつきません。なるべく人のいないところへ誘き出すように走れ、ということです。戦車製造担当者にも、局から連絡をいれているそうです。しかし、その後、ジャミングにあっているようで、音信不通です。困りましたね。」
こいつ、本当に困っているか?
「この周辺で、無人のところなんて、あるもんか!」
「えっと、オオガミさん、人口流出で廃墟となっている区画がありますよ。そちらに移動してはどうでしょう?」
「そこまでの距離は?」
「5・3kmですね。」
そこまで俺達、もつのか?




