031●仇をうつ
今日こそ、申し上げねば。六年の月日がたったのだ。わたしも、もう、子どもではない。宗主様が何と言われようと。
「どうしました、綾姫。そんなに畏まって。」
「宗主様、お願いがあります。」
ここで多くのことを学んだ。外には様々な世界がある。数学、物理学、化学、地理、天文学・・・。ホワイティに連れて行ってもらい、ミカ様に教えを受けた。ピアノフォルテの演奏も楽しかった。しかし、・・・。
「ということは、つまり、父君の仇を討ちたいということですね。」
「如何にも左様でございます。」
「くだけた言い方でいいですよ。そのほうが、話しやすいでしょう?」
「・・・では、お言葉に甘えまして。」
どうも幼き日に身に着けた話し方より、この6年での話し方のほうがいい。
「わたしと、こちらに一緒に参りましたもの、あわせて18名、出撃を許可してください。」
「今のあなたたちなら、神兵レベルの装備を使えるでしょうから、圧勝でしょうね。しかし、憎悪は新たな憎悪を生みます。わたしとしては、お止めしたい。」
それはわかっています、けれども。・・・廊下に誰か来た・・・。
「失礼します。よろしいでしょうか。」涼やかな声。マナさんだ。
「どうぞ。入ってください。」
障子をあけて、彼女が入ってくる。いつも綺麗で凛々しいな。
「軍勢が近づいております。」
「またですか。遠隔知覚・認識操作の迎撃準備は、できていますね。」
「はい。今回も撤退すればよいのですが。何度も繰り返すところを見ると、根本的には諦めないようです。」
「ふーむ。・・・進軍経路では、今回も略奪がありますか?」
「はい、ボールから報告があがってきています。」
「・・・やむをえんか。・・・綾姫、あなたのご希望に沿うことになりそうです。対応方針を話し合いますので。17名のみなさんを連れてきてください。」
今度こそ、攻め落としてやる。神社仏閣と言えど、我が行く手を阻むものは容赦無用。しかも、残党を匿っておるのは、捨て置けぬ。
何度か怪しげな術を使いおったが、今回は何の効き目もないようじゃわい。我らの護符の力、思い知ったか。見えてきた。やつらの電光石火の攻撃も、南蛮鎧で防げるはず。揉みつぶしてくれるわ。
夜明けだ。兵は全員、眠っている。眠ったままだ。動かない。今のうちに武装解除、縛り上げる。宗主様にご用意いただいたメカロイド、数が多い。効率がいい。
どこにいる?あやつは?
「またも面妖な術を使いおったな。正々堂々、槍を交えて戦えんのか!」
「盟約を結びながら奇襲で城を囲んだ貴殿が、そのように申されるのか。しかも、幼き女子とわずか六名の我らに多勢で襲い掛かったのを、正々堂々とは傍ら痛い。」
「・・・勝者はなんとでも言うものよ。さっさと首をはねい!」
「では、遺憾ながら、社殿の庭を血で汚させていただきましょうぞ。姫、ご存分に。」
賢者の剣「音羽」を抜く。背後に立つ。ついに父上の無念を晴らす時が来たのだ。




