030●難しい作戦
高いところは苦手じゃない。チョモランマだって、軽く登ってやる。だが、飛行機は嫌いだ。こんな鉄の塊が空を飛ぶなんて、許せん。となりのココアは喜んでいるが。
「うわあ、雲の間から海がみえますよ、オオガミさん!すごくきれい!」
いくらココアのお勧めでも、俺は絶対に、ぜーったいに見ない!後ろのエイミーがからかう。
「満月期間近のアキラも形無しね。」
「誰にでも、苦手なものはありますからね。」
「じゃあ、ジンは何が苦手なの?」
「生のリンゴです。歯ざわりがダメですね。」
二人で楽しく喋ってろ。
局長、今日は何の話だろう。なんだか、毎回、都合よく使われているような気がする。でも、まあ、この国の情報がわかるし。ラボ・ジャパンの技術力って、ラボ・USAより高く感じる。こんなに長時間充電不要なのは、すごいね。きっとジンが関わっているはず。研修って扱いで来たけど、居心地は悪くない。・・・時間だ。局長のお出ましね。・・・ええっ!海外での作戦?!また、無理難題なんだろうなあ!
「国外任務なんて、ココア、パスポート、とれるのか?」
「それがセキュリティ・コア、国家権力ってもんです。あっ、気にいらないですか?」
「いや、まあ、別に、俺はいいけど・・・。」
「で、窓際に座りたいそうなので、アキラさんは通路側でお願いします。」
ヴァルミラに着いたぞ!歴史のある国だが、内戦が始まってしばらくたっている。それでも、古の栄光あるボレリアの王都だった名残は、あちこちにある。あの城壁なんて、見事なもんだ。当時の技術で、どうやって作ったんだろう?ここでは銃声は聞こえない。比較的、安全な地帯だからな。油断は禁物だが、地上に立てば、もう、こっちのもんだ。
お店も、まだ開いてるのね。観光客は激減だけど。魔除けですって。単純な形。ゴルフボールみたいなのを黒く塗って、真ん中に赤や青の円を描いてあるだけね。目玉みたい。王国を救った伯爵の加護を込めてるって、おとぎ話の世界ね。
「おいおい、ケチケチするなよ!冷蔵庫もついてんだから、肉!肉をいっぱい買おうぜ。現地調達、いいじゃねえか。俺には宗教的戒律もアレルギーもないんだから。海外出張手当もつくんだろ、予算、あるんだろ、金、出してくれよー、ジン!」
ヴァルミラから多目的車で丸2日。軍用車両を小型化したものだけど、段違いにいい。居住性もよくできている。女性2人と男性2人が、寝食を共にするんだから。小型高性能の設計も、ラボ・ジャパン、うまいなあ。これはこれで、じっくり見たいところ。でも、作戦開始だ。わたしもココアちゃんも、状態は万全。アキラも月齢14日。すごい食欲。ステーキ1kgなんてペロッと食べるもの。ピークにあわせて計画できているのは、局長、用意周到。ここまでは褒めておこう。まっ、ジンは相変わらずだけど。
任務の目的は果たした。ずっ〜と、順調だったんだけどな。局長を褒める気持ちになったのは、やっぱり間違いだったなあ。ど〜する?!この地雷原?!
「俺が先頭を行く。もし、地雷を踏んでも今の俺なら、すぐ再生できる。」
「でも、アキラさん、へたすると、走破するまでに、何十発も地雷、踏むことになりませんか。その度に再生って、いくらなんでも、タイムパーフォーマンス悪くないですか?」
「アキラが再生する間、わたしがおぶっていく。爆発があっても義体は何度かは耐えられるし、痛覚はないから。もし、動けなくなったら、みんなでわたしの生身のボディ部分を運んでよ。」
「後方より近づく部隊、あります。まだ、少し遠いけど。」
「一番、効率的な方法で行きましょう。ココア、頼めるか?」
「ハイ!」
「じゃあ、お先に。足跡どおりについて来てくださいね。」
「任せたぞ。内蔵磁気センサーは作動しているな?」
「だいじょうぶです。ありがとうございます。」
きちんとお辞儀をして、ココアが行く。続いてジン、エイミー、そして俺。まあ、最初の足跡が消えないうちに、生身の部分が多い順にってことだな。・・・しかし、よく考えたら、俺も一応、生身なんだけど・・・。まあ、いいか、ここを切り抜けたらビールで乾杯だ・・・。あっ、満月期は、アルコールで酔えないのかぁ。
飛行機がくる。なんだかんだあったけど、作戦終了。チームとして4人のバランスがいいんだろうな。車は遠隔爆破したし、わたしたちの手がかりになるようなものは何もない。あとは、アキラをどうやって飛行機に押し込むか。これが今回、いちばん難しい作戦よね。撤退経路とアキラの移動方法の設定は、もっとよく考えてよね、局長!




