024●今日、世界で一番ツイていない人
ココアがもどらない。チラッとエイミーを見る。時計を見ている。気にしてるな。
「おい、ちょっと遅すぎるぞ。なんかあったんじゃないのか?」
「うーん。でも、初めてのお使いじゃないですし。何よりココアですから。」
と言いながら、ジンも心配そうだ。こんな表情するんだ。
「コールしたのかよ。」
「問題ない、って言ってましたけど。やっぱり、ついて行ったほうがよかったな。GPSでは、すぐ近くにいるようなんですが。」
「私、ちょっと見てくる。」
「いや、俺が行く。人探しは俺の得意分野だ。」
アキラが飛び出していった。まあ、わたしじゃ、いざというとき、日本語での会話が不安だし。アキラのほうがジンより足が速いし。
「ココアちゃんのことだから、きっとだいじょうぶよね。」
「荷物が重いなんてことはないですし・・・。その気になれば、トラックだって引っ張って来れますしねえ。まあ、そこはお二人と同じですけど。」
「でも、まだ二十歳前だからね。」
「そう言えば、製造してから1年たってないんですよね。」
あれっ?そういう数え方なら、そうなるのか。
「ココアちゃんって、何歳の設定なの?」
「ええっと・・・17歳、いや、18歳だったかな?だからアルコールは飲めません。まあ、飲めないけど。」
「そうよね。せっかくの打上げなのに、食事できないのってかわいそうよね。」
「けれど、本人は喜んでいましたよね。おふたりが一緒に、って誘ったときは跳び上がってましたから。」
「この4人、というか3人というか、で飲むのは初めてよね。しかも、あなたの部屋で。」
しばらくすると玄関ドアが開いた。よかった!ジンもホッとしている。でも、アキラの機嫌が悪い。すこぶる悪い。
「もう、あんなやつらに構っちゃダメだ!気をつけること!」
「すみません、ありがとうございます。助かりました。」
えっ、やっぱりトラブルだったの?なんだか、聞き覚えのあるセリフね。
「いや、聞いてくれ!ココア、スカウトを断るのに手間どってたんだ!」
「スカウト?」
「どこの芸能プロだか、俺が見つけた時には、もうだいぶ時間がたっていたようだ。」
「それは、ありがとうございました!・・・えっと、でも・・・どうやって追い払ったんですか?」
「いや、それは、まあ、その・・・。」
「アキラ、あなた、まさか・・・やっちゃたんじゃないでしょうね?!」
「えっ、やっちゃうって、いや、それは、ええっと・・・。」
「アキラさん、カッコよくスカウトさんのおでこを、指でパチンって弾いてくれました!」
えっ〜!いくら月齢が若いからって、あなたがそんなことをしたら!
「その人はどうなった?」めずらしくジンが動揺している。
「なんか、一瞬、白目になって固まって、それから、おでこを押さえて走っていきました。助かりました!」
ジンが頭を抱える。
「・・・いい学習になりました。アキラさん、感謝します・・・。」
「いや、なんてこと、ない、さ・・・。」
アキラ、なんだか、いたずらを見つけられた子どもみたい。
「まっ、一応、ヤツの懐から名刺は拝借しておいた。まだ、見てないけど。後腐れのないように、俺のコネから圧力かけとく。」
そのほうが、あなたのためにもよさそうね。
「勉強になりました。ラボの技術を過信していましたね。悪かったね、ココア。」ジンが優しく言う。
でも・・・ココアちゃんのことで、アキラを怒らせるなんて・・・。今日、世界で一番ツイていない人!!・・・でも、命があっただけ、ラッキーなのかな?
ーシンクロ率はどうなっている?
ー55パーセントです。
ー随分と低下しているな。しかし、インタラクティブな状態は保持している、ということだね。
ーおっしゃるとおりです。ただ、基本的性格などは連携できていますが、アークエンジェル本来の思考水準では・・・。あちら側のココアが、もどかしく感じていることでしょう。
ー複数のでリンク先を確保できたことを、よし、としなければな。わたしも引き続き、アプローチする。シンクロ率のアップと世界線の特定を頼みましたよ、ソフィア。
ー畏まりました。




