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013●不可思議

聴音レベルを上げる。室内は静かだ。ドアを蹴破る。両側に分かれて壁を背にする。反撃はない。ジンに目配せをする。彼が室内に駆け込む。続いてわたし。

ほの暗い。・・・かなりの個体数!立っているだけ?いや、動き出した!ジンの発砲!脚部を狙って動きを止める。博士はまだ奥なの?

時間がかかれば、アキラたちもあぶないかもしれない。これだけの数、どうやって切り抜ける?!


ココアの射撃のおかげで、個体の動きはにぶる。狼男をなめんなよ!ありったけの力をこめて、パンチとキックを放ち続ける。けどよ、これ、まだいっぱいいるよな?

「50体じゃなかったのかよ!」

「少なくとも50体といいましたよ。えっと、弾切れです!」

そりゃあ、まずい!ココアを守りながら戦うことになる。

おい、ココア、前にでちゃ危ない!えっ?右蹴りで相手の膝を砕く。鈍い音。速い!続いて左蹴り、流れるように上段へ突きの連続、崩れ落ちる個体。

常人には、その動きを目で追うことすら叶わないだろう。こんなにスムーズに倒せるのか?


随分倒した。義体の左腕、両脚、フル回転。ジンがマガジンを素早く入れ替える。

「これが最後の弾倉ですね。」

Butch とSundance Kidみたいになってきた。まずいね。


ーセーフモードに入ります。

ーだめ。強制解除。マイロード、オオガミさんにそちらに行ってもらいます。最終段階チェックの実行許可を。

ー却下だ。もう少しだけ持ちこたえてくれ。こちらを片づけて、すぐ行く。


ジンの様子がおかしい?いつもと違う。

表情が険しい。

・・・なに?この雰囲気は?

吹くはずのない風が、彼を中心に渦を巻くような感覚。

圧迫感。

空気が変わる。

今度は、大気が膨張するような。

これは錯覚?

恐怖?

理性のないあいつらまで、歩みを止めている。

なんだろう、冷や汗が背中を走る。

右の手のひらにもじっとりと汗。

ジンが腰に手をやる。

なに?剣?日本刀だ。

そんなもの持ってきたの?

刀を抜く。白刃が薄暗がりに光る。大気が揺れる!

ドォ、ドォーンンーン!!!

大きな音がした。

いや、したような気がする。

途端に・・・気配が変わる。

・・・いつものジンだ。

こんな時にほっとしている自分が変だ。

ジン、どうなってるの?

あっ、飛び込むの?!


連中は、まだ、もぞもぞしているが、四肢はもう役に立たない。もう少しで終わる。終わってほしい。

「ココア、あんた強ええな。」

「あら、オオガミさんほどじゃありません。」と言ったココア、急に膝をつく。

「どうした?!」

「バッ・・テリィ・・・限界・・・・です。」

いかん。まだ、何体か残ってる!ココアは無防備だ。月齢が19日に入ったか?体のキレが悪い。彼女に近づく個体を片づけていく。

くそっ、後ろから組み付かれた!動きを封じられる。

まずい!

何かが来る!ココアの前に!

・・・ジンか!!


「間に合った?!」

「エイミー、ギリギリだ!映画みたいだな!」


ようやく制圧した。

エイミーがココアを抱き起している。

「ココアちゃん、しっかりして!死んじゃだめ!」

「だいじょうぶですよ、死にません。ラボに運んで充電しますから。」

「で、どうだった?博士は?」

エイミーが首をふって肩をすくめる。

「残念ですが、亡くなっていました。」

「じゃあ、目的は半分だけ達成ってことか。局長に大目玉だな。」

「大きな目玉って何よ?」

「直訳すれば、I must eat big eyes ってことかな?」

「アキラさん、そんなグロテスクな翻訳は・・・。単にすごく怒られる、って慣用句だと言ってください。」

ジン、あんたはいいやつだよ。


だけど、いったいどうなったのだろう?よくわからない。アキラに何と伝えればいいのか。

ジンといっしょに群れに飛び込んだまでは、はっきりとおぼえている。けれど、その後は腕と脚を振るい続けただけとしか、わからない。

気がつけば全個体は活動不能となっていた。ジンのあの時の姿はなんだったの?刀は?薄暗かったけど、確かに見た。

ジンに尋ねてもきっとまた、とぼけるだろうな。


ー「不可思議」を抜いたのですね。

マイロードは黙っておられる。

ーわたしのためですね。申し訳ありませんでした。こんなニセモノのために。

ーいや、あなたは‘本物’だ。シンクロ率100%なのだから。しかも、私のわがままのために。

機械なのに胸が熱い。でも、機械だから涙がでない。悔しいな。


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