012●ジンがうらやましい
数が多い。これだけ‘野獣’がいるとは。突入して足止めされている。もう随分、時間を浪費した。
アキラは月齢18日。わたしもメンテナンスを念入りにしてきたけど、バッテリーの消耗は予想以上。ココアちゃんからチャージしてもらったけど、50パーセントぐらいね。ココアちゃん、充電残量は大丈夫なのかしら。ジンはいつもどおりで表情をかえないけど。
「次のコーナーを右に曲がりますね。」
何でもよくわかる子ね。出会ってから驚くことばかり。かつて任務を共にしたスティーブ以上に頼りになるな。
コーナーを曲がる。3体いる。ジンが発砲。本当に炸裂弾って使っていいのか?四肢を使えなくすることが目的だし、体幹を狙わないから人道的って、そんなことないだろ。装弾数も多い。この拳銃、おっかねえな。
「そのまままっすぐ、10m向こうのドアです!」
ココアの声に励まされる。ゴールは近い。だが、後ろに不吉な気配を感じる。
「気づくのが遅れました、ごめんなさい。後方より接近があります。少なくとも・・・50体はいます。」
まずい、挟み撃ちになるぞ。
「わたし、残ります。みなさん、進んでください。」
えっ、そりゃないぞ、ココア。50体をひとりでとは、いくら高性能でも無理だろう。
「俺が残る!エイミー、ジン、行ってくれ!何とかくいとめる!ココアも行け!」
このセリフ、言ってみたかったんだよな。こんなところで、とは思ってなかったが。エイミーは一瞬ためらったが、すぐに頷いた。
「ココア、任せた、気をつけろ!」ジンが手持ちのマガジンを投げ渡しながら言う。
おいおい、ジン、俺のことはどうでもいいのかよ。
ー無理はするな。80%の出力だ。バッテリー残量も多くはないぞ。
ーありがとうございます。でも、オオガミさんもいてくれるってことですし。シンクロ率は100%ですよ!
ーつまり、あなたが思っているほど、機体は動かないということだ。できるだけ早く戻る。
大勢が近づいてくる。しかもネコじゃないぞ、俺を囲むのは。
「なんで行かないんだ、ココア。俺ひとりでいいって。」
「あら、オオガミさん、月齢18日ってことは、これからパワーダウンするばかりじゃないですか。」
そうだけどよ。不死身性は完璧じゃないが、スピードとパワーは、まだ、やつらに負けないぞ。
「わたしも残ります。わたしは今、ジンさんの背後を守る、剣であり盾なんです。」
泣けるね。ジンがうらやましい。




