011●賭けの結果
「で、どうなってんだよ。」
アキラが聞いてくる。う〜ん、まだ言えないな。
「ただの薬物ではないとわかっていたし、3人同時に出るってのも少し大げさとは思ったが。まあ、用心にこしたことはないと納得はした。けどよ、あのタフさときたら想定外だった。あんた、何か知ってるんだろう?」
「知っていても言えないことはあるの。あなただってルポに全部書くことはないんでしょう?局長から説明があるから、もうちょっと待ったらどう?」
「ちっ、アメリカの科学情報局は口が堅いな。ジンはどうした?今日はまだ、来ないのか?」
ーまた、うまくいかないか・・・。
ーやはり、この世界線の現在の物質だけで、というのは無理があります。設計の80パーセントしか性能を発揮できません。
ーこの惑星上で活動ができればよい。それより、シンクロ率はどうなっている?
ー78パーセントどまりです。これは使用物質の、というより、送受信双方の問題です。繰り返してやってみなければわかりません。しかし、1度のトライアルには相当なエネルギー消費を伴います。
ー成功率は上がってきているか?
ーなんとも言えません。毎回、賭けのようなものです。
ーでは、もう一度、賭けてみよう。機体の異常に備え、周囲に安全対策を。
ジンがやってきた。だれ?あの子。
「おはようございます。遅れましたね。すみません。」
「あんたが最後ってのは、めずらしいな。それで、その美少女はどなた様でしょうか?」
アキラが、からかいながら尋ねる。
「わたしの備品ですよ。」
「備品?失礼な言い方ね。」
「いいえ、わたしは備品です。和歌名 心愛といいます。よろしくお願いいたします。」
「ワカナとココア、どっちがファーストネームなの。日本人の名前ってわかりにくいのよ。」
「ココアです。どうかわたしのこと、そうお呼びください。」
「で、なんであんたがこいつの備品なんだよ。」
「ココアはうちのラボで制作したメカロイドなんですよ。」
「なんだよ、そのメカロイドってのは。」
「簡単にいうとロボット、アンドロイドですね。」ジンがサラッと答える。
「えっ、アンドロイド?」
どこから見ても人間だ。でも、あのジンが言うことだから、本当なの?
「ちょっと触ってみてもいいかしら?」
「どうぞ、でも握りつぶしたりしないでくださいよ。」ジンがおどけて言う。
「当たり前!」
少し怒ったふりをして首筋に手を伸ばす。う〜ん、温かい。肌の感触がある。脈拍まであるの!
「顔もいいかしら。」
「どうぞ。」本人が言う。本人って言い方でいいのかしら。自然だ。張りのあるすべやかさ。人間の肌としか感じられない。
「俺も触っていいか?」
「だめ、アキラ!男の人は触っちゃだめ!」
「いいですよ、オオガミさん。でも、優しくお願いしますね。」
言いながら、この子、少し頬が赤らんでいる。
「俺だって、それぐらい、わかってるって。」
腕に触れてみる。弾力がある。しっとりとしている。これがロボット?もし、本当なら、どえらい技術だ。エイミーの皮膚も本物そっくりだが。きれいな目をしている。これがロボット?
「局長から連絡です。」とココアが言う。
すぐにコール音がする。それぞれの端末に彼が映る。
「揃っているな。では、説明する。」
なんでコールがわかったんだ?
「なんで、そんな研究の後始末をしなけりゃならないんだ!」
「といっても、普通の人間ではどうにもならない。見たでしょう。量の問題ではなく、質の問題。野獣をネコ100匹で囲んでも意味ないのよ。」
「まあ、幸い居場所はわかりそうですからね。ココアがいることだし。」
「オオガミさん、わたし、がんばります!」
なんか、俺、押し切られそう・・・。




