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010●ALICE・FINE 1821

ラベンダー伯に領地を与えるだと!陛下は何を言い出される!再三にわたり国を守ったから?いや、少人数で敵軍の眼前まで行っただけではないか。

1度目の報告では、「大軍に猛攻を仕掛けられた」「しかし、魔法で事態は急転回した」「敵は向きを変え戻ってこなかった」とあったが、2度目、3度目はやつが戦場に赴くだけで、いや赴くと噂が流れた段階で撤退していきおった。

やつは何か連中と示し合わせているのではないか。ラビリア側と内通し、計画どおり自分が功労者となる。そのうえで我が国に入り込み、陰謀をしかけてくるのではないか。話ができすぎておる。

様々な思いが交錯する。だが、表情には出すわけにはいかない。

「しかし、3度の戦績で領土が拡大したわけではありますまい。また、実際に弓矢も槍も交えてもおりません。領地を下賜されるというのは、いささか恩賞としては大きすぎるのではありませんか。」

「伯の功績はそれだけではない。この数年の作物の収穫量を知っておるか。」

「豊作でございましたな。民の隅々まで食糧がいきわたり、飢える者はなくなりました。」

「そなたは豊作がなぜ続いているのか、聞いておるのか。」

言葉に詰まる。農業など私の知るところではない。

「臣の無知をお許しください。」

「説明してやるがよい。」

陛下の言葉に、小姓が口を開いた。

「ラベンダー伯が持ち込まれた種子が優れていたため、の豊作でございました。」

「種子だと?」

「はい。初めて伯が我が国を来訪された際、献上された様々な種子がございました。王命をいただき、いくつかの御農地で栽培すると、驚くべき量の収穫がありました。そこで新たな実りで得たそれらの種を農家に配布しましたところ、味もよい、量もとれるということがわかり、国中にひろがったのでございます。」

「伯の国家への貢献は、他にもある。」長老たちが口をはさむ。

「病人、けが人に適切な医療を提供している。随分前だが、陛下の御前で伯が雷の魔法で、そなたの嫡男を打ち負かしたことがあったであろう。大きな傷であった。今だから伝えるのだが、陛下から派遣されたという形をとり、ラベンダー伯よりの医師とは伏せて処置させたのだ。わずか数日で回復したのを知っておろう。現在、王都にある診療所は、伯からの知識、技術を学んだ者たちが、エンジェラム王国から提供される医療品を用いながら運営しておる。」

「新生児の死亡率も劇的に下がっている。母子ともに医師たちの出産前後の指導や助言に従ったおかげだ。」

知らぬことばかりだ。うーん、これはまずい。

「陛下、理解いたしました。それでどこに領地を下賜されるおつもりでございますか。」

「迷っておる。よい土地が望ましい。」

おおっ、これはうまくすれば。

「陛下、臣に案がござます。」


紆余曲折があったが、海岸線の山沿い、荒れ地といってよい一帯が下賜されることになった。

「何といっても伯の母国との行き来には、海沿いの領地がよいでしょう。」

「確かに山沿いの急峻なところもありますが、領地自体は広い。伯ならばこそ、工夫と技術で大きな恵みをもたらすのではありますまいか。」

「だれにでも任せられるところではございません。エンジェラムの実力を、まさに発揮できうる場所ではありませんか。」

我が長広舌に次第に諸侯や大臣、長老や陛下も心を動かされることになった。

彼の地から王都までは馬をとばしても3日はかかる。しばらくは領地運営にかかりきりにならざるを得まい。これで目障りな存在を王都から追い出せる。


「ロイ、無茶な話だ。返上、辞退はできないの?」

都から遠い、あんな場所、どれだけの苦労をしなければならないのだろう。気が遠くなる。

「あのあたりは何もないよ。いや、分け入りにくいところだからこそ、よからぬ輩の巣窟になっているという噂まである。見たこともない獣や怪物もいるとも聞くよ。」

ロイは私の言葉に何ら動揺するそぶりもみせない。

「いつも心配してくれて、ありがとう、ウィル。しかし、陛下から直々にいただいた領地だからね。これを辞退するというのは不敬にあたる。それに随分広い区域だ。見たこともない獣や怪物、楽しみだね。」

ああっ〜!君の頭の中は、どうなっているのだろう?


今日もいい天気だ。潮風が気持ちいい。

さて、ちょっいと街道まで出て網を張るとするか。このところ旅商人も用心してやがる。けどよ、どんなやつをガードにつけても土地勘は無いもんな。うまく追い込んで身ぐるみ剥いで、お帰りいただくって寸法だ。爺さんの遺言だから命まではとらないでやるが、いよいよとなれば、な。

「おい、そろそろいくぜ!」

「おう!」「へい!」「あいよ!」


しめしめ、身なりのいいのがやってきたぞ。この細いがけっぷちを馬で行くのか。バカなのか勇敢なのか、わかりゃしない。まっ、どっちだっていい。

家来だろうな、前後の2人もそれなりの格好をしているぜ。

もう少しで広地に出る。そこでいただきだ。


目を開ける。体が動かない。どうなっている?

そうか、崖を駆け下り、こん棒で殴り掛かったんだ。ビリっとしてそっからわかんねえ。縛られているのか。倒れたまま首を動かす。なんだ、これは。8人とも俺とおんなじじゃねえか。


「お貴族様かよ。何をしやがった。」馬にまたがっていた野郎が応える。

「あなたたちは盗賊ですね。」

「おうよ。くそっ、どうする気だい!」

どうするもこうするも、突き出すにしても近くに巡察隊の駐屯所はないし、こういう場合はその場で殺されるってことだ。ドジった。

「で、なんで盗賊なんてしているのですか。」

「食うために決まってるだろ。もうすぐ仲間が大勢やってくるぜ。」

もちろん、ハッタリだ。うちみたいな小所帯に残っているのは女、子どもばかりだ。

男はかすかにわらったように見える。だが、その表情に侮蔑や殺意がない。なんだ?

「それでは、衣食住が十分であれば盗賊をしないで済むということですね。」

俺はあっけにとられる。何を言ってるんだ、こいつは。

「大勢のお仲間がいるなら、その人たちも含めて力を貸してほしいですね。」

「よくわかんねえな。」

「ここに町をつくるんですよ。地元を良く知っている人たちにお願いしたい。」


ーソレイユ、状況は把握しているな。

ーはい、マイロード。いかがいたしましょう。

ーエンジェルとエンジェルナイトを、この世界線に派遣してくれ。

ーエンジェルは100名単位、エンジェルナイトは1万名単位で可能です。 

マイロードは微笑まれる。

ー恒星系改造ではないので、エンジェルを1名、エンジェルナイトを3名で十分だ。

ーエンジェルのご指名はいかがですか。

ー特に指名はない。こちらの作業計画に合わせた人選を頼む。

ー承知しました。準備中です。・・・スタンバイOKです。いつでも転送可能ですので、お申しつけください。


みんなをそろえた。知った仲間に声をかけた。いろんな一家が集まったもんだ。

一同、おっかなびっくりだが、あらかじめ、あれだけの金貨を渡されちゃあ、ちょっとはその気になるってもんだよな。

「だんな、で、何から始めるんだい?」

だんなの家来の中に、顔立ちがいやに整った見知らぬやつがいる。

「わたしが今回の指揮を執ります。アリス・ファインです。では、段取りを説明しますね。」

女が?やわらかな声だ。若い。けどよ、なんか逆らい難い雰囲気だな。


ーALICE FINE 1821、着任いたしました。

ー前歴はアシュラ型13番要塞か。アリスは元気にしているか。

ーはい、お元気にされています。

ー呼称に希望はあるか?

ーお心のままに。

ーでは、これから、あなたのことを便宜上、アリス・ファインと呼ぶことにする。プロジェクトを任せる。

ー光栄です。全力を尽くします。



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