公園
漫画を紙袋に積めて持ち上げてみると、思ったより重かった。
あー、桃花ちゃんは、重いのを予想して僕の家の近くを待ち合わせにしてくれたのかな。
そしたら桃花ちゃんが帰りに重くなるけれど、桃花ちゃんは自転車で来るのかもしれない。
それなら20分で着けるのも納得だ。
自転車か。
一人暮らしを始めてから、大学も近いしあまり遠くにも行かないので一度も思ったことないけれど、便利かもしれない。
僕も自転車を買おうとひっそりと決意する。
時計を見るともう出てもいい時間なので、立ち上がった。
「…たつ君、どういうこと?」
しまった、はめられた。
公園のベンチに座っていたのは、桃花ちゃんではなく三咲だった。
思わず漫画が入った紙袋を落としそうになる。
その可能性がないとは思わなかったけど、話の筋が通っていたし、桃花ちゃんは嘘が下手だったはずから大丈夫だろうと思ったのに。
「えーと、桃花ちゃんに呼ばれて…。」
そういえば、花山公園は三咲の家の裏にある。
だからここを指定してきたのか。
久しぶりに話す三咲は、いつもよりラフなかっこうで、お泊まりをした時はいつもこんな感じだったなと懐かしくなる。
お風呂に入った後なのか、メイクも落としているようだ。
三咲はすっぴんでもとても可愛い。
口紅を落としているはずなのに、ピンク色に染まっている形のいい唇が動く。
「私も、三咲に呼ばれたんだけど…。はめられたみたいだね。」
少し笑った三咲に、僕はなんとも言えない気持ちになった。
「そうみたいだな。漫画を貸してほしいって言われたんだけど…三咲は?」
「私もね漫画を貸してほしいって言われたの。少女漫画だけど。しかもねちょっとドロドロしてるやつ。だから大学以外で渡してほしいとか言われて…。」
「まさかの僕に言ったことと一緒じゃん。でも少女漫画だったら大学ででも全然いけそうだけど。」
僕の言葉に、三咲は笑った。
「そうだよね。全然違和感感じなくて騙されちゃったー。」
あまりにも普通に笑うものだから、胸が苦しくなった。
もっと話がしたい。もっと笑ってほしい。
さっきまであまり感じなかった感情が、三咲の笑った顔を見たとたんに溢れてきた。
パチンコもお酒もやめるから。三咲が嫌がることはなにもしないから。連絡もマメにするし、おそろいの物だっていっぱいプレゼントするから。
この前健助の電話がすごく短かった話をしたい。
佐藤の彼女がカフェでバイトを始めたから、また見に行ってみようと誘いたい。
高校のアルバムを見たら僕たちふたりでばっかり写ってたよとふたりで見たい。
…僕のことを紹介してほしいっていう女の子がいて、しかも高校生で君とおんなじ名字で、しかも好きになりかけたんだと言って、怒った顔ですねてほしい。
僕が黙っていると、三咲からも笑顔が消えた。
そして公園の入り口を見てから、僕を見る。
「じゃあ、帰るね。」
ばいばい、と言って歩き出した三咲を、気がついたら走り寄って抱き締めてしまっていた。




