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僕の半年間  作者: まい
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無言

あ、しまった、と思ったのは、抱き締めて数秒が経ってからだった。

なにか言葉を口にすることはできないのに、考えるスピードだけは無駄に速い。

振りほどかれないのは嫌じゃないからかな、それともビックリしているからかな、もしかしたら次に口にする言葉次第では、僕のことをまた認めてくれるだろうか。

だとしたら、何て喋ればいいのだろうか。

いい結果になるには何を言えばいいのか、何を言えば悪い結果になるのか。

いくつか候補は出てきたけれど、なんだかどれもよくない気がして、焦る気持ちだけが沸いてくる。


無言で抱き締めているまま、どれくらい経ったのだろうか。

回した腕に、三咲の冷たい手がそっと置かれて、思わずビクッとしてしまった。


「え、手置いただけでビックリしすぎでしょ。」

クスクスと笑う声が、すぐ近くに聞こえる。

急に恥ずかしくなった僕は、ゆっくりと三咲から腕を離した。

三咲相手に恥ずかしい気持ちになるなんて、いつぶりだろうか。



「ねえたつくん。」

ゆっくりと話始める三咲は、こっちを向いてくれない。

どんな表情をしているのか分からない。

でも、その明るい声から、僕のさっきしてしまった行動は、いい結果になったのだと思ってしまった。


「昨日、女の子とデートしてたんでしょ?」

予想していなかった言葉。

急に手足が冷えていくのを感じた。


「私、知ってるよ。相手高校生でしょ?ときめいちゃったんでしょ?また遊ぶ約束したんでしょ?」


一緒に居たことだけならまだしも、どうして次の約束をしたことまで知っているのか。

どうしてと聞きたいのに、言葉が出ない。

ゆっくりと頭をこちらに向けた三咲は、声を出すことのできない僕を見てくすっと笑うと、また公園の出口へと歩いて行ってしまった。

もう、僕には引き留めることはできない。

大袈裟じゃなく、世界が終わってしまったような感覚。

桃花ちゃんの話から、まだ希望を捨てることができていなかった自分に気づいてから、三咲との4年間は本当に終わったのだと思うと実感する。


冷えきった手足に、まだうるさい心臓の音。

頭の中では冷静でいられていると思うのに、意思と関係なく震える体。


三咲は、さっきどうして笑ったのだろうか。

ああ、僕は何をしているんだろう。

抱き締めた時三咲から伝わったきた、心臓のドクドクという感覚が、腕から消えない。

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