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僕の半年間  作者: まい
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スリッパ

桃花ちゃんに漫画を渡しに行ったのに三咲がいたことや、思わず抱き締めて引き留めてしまったこと、何故かるなちゃんのことを知っていた三咲が、笑って去って行ったこと。

どれも予想していなかったことで、現実味がない。

空っぽになってしまったような気分で家に着くと、一番に目に入ったのは、ブルーのもこもこのスリッパだ。


「どうしてたつ君、一年中もこもこのスリッパなの?夏なのに暑くないの?」


「私の知ってる独り暮らしの男の子はさあ、みんな家でスリッパなんて履かないよー。たつ君はご飯とかもこだわるし、なんか意識高い感じするよね。」


「たつ君足おっきいんだね!私がこのスリッパ履いたらこんなに大きいのに、たつ君が履くとなんか…。」


「たつ君このスリッパ臭いよそろそろ変えよう?」



おそろいの物やプレゼントを捨てたって、この部屋には思い出だらけだ。

部屋にある1つ1つの物に、三咲との思い出が詰まっている。


僕って……

「ほんと、未練たらたらじゃん…。」

ポツリと呟いた声が、真っ暗な部屋の中で静かに消えていった。



最近、三咲にはときめきもドキドキも感じなかった。

新しい恋に憧れを感じる気持ちが少しだけあった。

街で見かけた可愛い女の子や、新しく彼女ができた友人を見て、いいなと思ったこともある。

僕も、ときめきやドキドキをまた感じたいなと。


自分のことを話してばかりの三咲にうっとうしさを感じたこともある。


…正直いって最近の僕は、三咲の価値を軽く見ていた。

まさかフラれて、こんなに未練たらたらで、こんなに自分が情けなくなる日がくるなんて思ってもみなかった。

フラれて涙が勝手に出てくるなんて、本当になんて情けない。



でも、僕の行動のせいでこんなことになったのだ。  

こんな結果になってしまったのは、自分が悪い。

泣いたって、自分が悪いのだから。

それに、もっと早くに引き留めることができなかったし、さっきだってもっと追い掛けることができなかった。


…とことん情けない自分。

三咲は、一体こんな僕のどこを好きだったのだろう。


ポケットの中に入れていたスマホがブルブルと震えた。

見ると、るなちゃんから、次に会う日の提案のメッセージだった。

一緒に送られてきた可愛いスタンプに、柔らかい物言いの文面。

それだけでなく、次に僕と会うことがどんなに楽しみか、何をしたいかまで続いていた。

その明るさや元気さに、僕まで少し元気になったような気がする。


気がつくと、涙は止まっていた。



ティッシュの箱を掴んできて、豪快に鼻をかむ。

それから、丸めたティッシュをゴミ箱に投げ捨てた。

未練たらたらな男は、今日で終わりにしよう。

スリッパをキチンと揃えて、玄関の端に置く。

もこもこは暑いから、しばらく片付けておこう。

明日は夏用のスリッパを買いにいこうか。

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